―新刊書評―      2006年5月
  『電磁波を見る』         板倉聖宣   仮説社

 「〈電磁波を見る〉なんて難しそう」と思われるかも知れない。今まで
の常識から言うと〈電磁波〉などというのは
,一部のマニア(アマチュア無
線家など
)でしか扱えなかった。しかし,近年はもう,生活のいろんな場で使
われている。ラジオやテレビはもちろん
,携帯電話や電子レンジ,さらにラジ
コンなど子どもたちの遊場にも登場している。この本は
,〈電磁波遊び〉を
しながら電磁波に親しもうという本である。

 まず,第1幕「磁場と電場を実感しよう」では,ストローで静電気の実験な
どをしながら〈磁場〉や〈電場〉を実感する。そして
,2幕「電磁波の発見」
へと続く。〈電気と磁石とは切っても切れない関係〉にあることがわかる。

 おもしろい実験が入る。ふつう,アルミニウムは磁石に反応しない。ところ
,磁石を急に動かすと一円玉も動き出す。では,アルミニウムの管を立てて,
管の中に磁石を入れて落とすとどうなるか。また
,アルミニウムの棒の上から
球形の磁石を転がすとどのように転がっていくか。予想を立てて実験をして
いく。そのあと〈電磁波発見物語〉へと続く。

 電磁波は,意外といろんなところで発生していることを知る。第3幕はピッ
ピポケベルを使っての電磁波実験である。〈電磁波はどのような性質がある
のか〉〈電磁波はどのようにしたら効率よく飛ぶのか〉実験をしながら読み
進めていける。最後に「テレビアンテナ物語」へと話が続く。〈電磁波〉と
も仲良くなれる一冊である。
   
                        
  2006,4刊 2,000

『コウモリを調べよう』  熊谷さとし文写真   偕成社
 シリーズ「日本の野生動物」の一つ,コウモリに親しむ本として出た本であ
る。従来から
,日本の野生動物に関する図鑑等は出版されていたが,近年特に哺
乳動物に親しむことを目的とした本の出版が多くなった。その背景には
,著者
たちの功績が大きい。著者は
,漫画家,イラストレーターとしてのセンスを生か
しながら親しみやすい本作りを続けられている。哺乳動物にも造詣が深い。

 さて,この本は,学校などでの購入を目指されたのかビジュアルな,ハードカバ
ー構成となっている。内容的にはちょっと
,物足りない。しかし,初めて野生動
物を知る子どもには
,注目してもらえるのではないか。

 ます,「これがコウモリだ!」で,よく見るコウモリの紹介をしている。本州
に多いアブラコウモリ
(イエコウモリ)の分布域が北海道にもかなり拡がってい
るのが気になる。確かな調査結果なのだろうか。「コウモリが空を飛ぶ」とい
うことで
,滑空とは区別しているのはいい。ただ,鳥類のような飛翔構造とも異
なる。この点については
,骨格での違いを書いているが,何がどう違うのかはっ
きりとした解説が欲しい。「コウモリの体のひみつ」も
,簡潔にすませている。
もう少しくわしい書き込みがあっていい。

 途中で,「空中に行った動物」「地中に行った動物」として動物進化のあら
ましを図解している。その関連から
,突如としてモグラが出てくるのは唐突な
感じを受ける。後半の「コウモリを観察しよう」はヒントも多い。

 ちょっと,内容面に荒削りの感はするが,「子どもがまず親しむ」という観点から見ると
参考になることも多い。 
                   2006,4  2,500  

                    新刊案内06,05