私好みの新刊 2025年7月
『そうだったのか! カタツムリとナメクジ』 嶋田泰子著 童心社
著者は「カラスのいいぶん」「さかなだってねむるんです」などの著書があ
る動植物好きのライター。自分が不思議に思ったことをとことん追求してやま
ないお人柄のよう。自分がいだいた疑問をつぎつぎと問いかけてくる。
今回の本は、ふとしたことからカタツムリを見つけカタツムリの歩く(はう)
速さを測るという〈実験〉を始めた。カタツムリの少ないことに気付きそれ
ならとナメクジを見つけだした。カタツムリとナメクジ両者を飼育するうち
に次々と疑問が湧いて出る話がおもしろい。まずは、カタツムリ、ナメクジ
はどちらがご先祖様? まず、カタツムリは海の貝がご先祖で陸上に進出し
そのあとナメクジに進化したとか。最初、陸上に進出したカタツムリに重い
貝殻は大変そう。著者はカタツムリの殻の重さをはかることに気がついた。
でも生きているカタツムリを殺すわけにはいかない。しかたなく専門家の先
生が持っている標本の殻を測ることにした。かなり重い。牛乳パック4本分
もの荷物を背負っていることがわかった。そこでついにカタツムリは貝がら
を捨てる道を歩み出したんだと気づいた。長い進化の中でついにからを捨て
てナメクジになるものも出てきた。ある時、カタツムリを間違って落とした。
しかし、殻は見事に再生されてきた。ここで、炭酸カルシュウムが必要なこ
とも学んだ。カタツムリは石灰岩地帯に多いわけだ。
まだまだ疑問は続く。殻をなくしたナメクジはどういう形で体の保護をして
いるのだろうかと疑問が起こる。それにはムチンという粘液が体中に取り巻
いているとか。おかげで体が乾燥から守れるらしい。カタツムリやナメクジ
は目はあまり見えない。でも赤外線センサーがあるので夜でも平気とか。カ
タツムリやナメクジは雌雄の区別は無いという。ではどういう方法で受精し
ているのか、、疑問はつきない。
2025年2月 1300円
『細胞の学校』中村真哉他/スタッフ 牛木辰男/監修 科学の学校シリーズ
ニュートンプレス
近年は年齢も重なる人が増え、健康志向の話題が多い。その中でダントツなの
が細胞に関する話題だ。しかもいろんな病気の元に細胞が関わっている。なので、
細胞に関する本で専門的な本はよく出ていたがわかり良い科学読み物の出版が期
待されていた。今回、ニュートンの「科学の学校シリーズ」で本書が出版された。
構成は見開き2ページでまとめられている。キャラクターも登場して親しみやす
い。まえがきに
「すべての生き物の体は「細胞」で出来ています。みなさんの体も、たくさんの
〈細〉のかたまりです。〈細胞〉は、体をつくる材料やエネルギーを作ったり・・
この本を読めば、体をつくり体の中ではたらく〈細胞〉たちのようすがよくわかり
ようになります。・・」と書かれている。が、正直細胞の話は初めて耳にする言葉
が多い。
まず初めに「ひとの体には、全部で200種類以上の細胞があります。」で驚く。
頭のあたりだけでも涙腺細胞、桿体細胞、嗅細胞、粘液細胞・・10以上はある。
人体に入ると線毛細胞、肺胞細胞、胸腺上皮細胞、心筋細胞などもある。細胞に
は遺伝情報も入ってくる。細胞の種類は、ヒトや動物にある「真核細胞」、細菌
などが持つ「原核細胞」とがあるという。ヒトの体の細胞数は37兆個とか。人
は大人になるにつれて細胞分裂して大きくなる。あとは、各部の細胞について一
つ一つ解説が続く。DNAの話もある。後半には「体を守る細胞」の話もある。この
細胞は害を及ぼす細菌やウィルから体を守っている。ヒトにはたくさんの細菌も棲
んでいるが、その細菌たちが侵入してきた病原菌と闘って病気を未然に防いでいる
という。腸内細菌の話や体を守るシステムの話も興味深い。免疫細胞の話である。
最後に再生の働きがある「幹細胞」の話もある。
細かな解説は読みにくい面もあるが細胞の全容が理解できる。
2024年12月 1,400円