民主党・府民ネットワーク議員団の中村でございます。
私は会派を代表して、関西国際空港をめぐる問題について、私たちの見解を表明し、知事に質問いたします。
● 関西国際空港の1期事業の地盤沈下問題、着陸料や施設使用料など、国際競争力の問題、2期工事のあり方などについて、今さまざまな意見や疑問が出されております。
大蔵省は「経営支援が必要な会社が、なぜ拡張工事をする必要があるのか」と慎重姿勢を示していると言われています。
関空2期工事の予算措置を行う問題と、関空経営の支援を行う問題、この本来、性格の異なる二つの問題を、セットにして持ち出し、あわよくば、さらなる地元自治体負担を引き出そうという政府の手法は、関空の歴史をかえりみない、実に理不尽なやり方であります。
思い起こしていただきたいのです。
また、当時、大阪の事情を詳細に知るすべもなかった知事にも、ぜひ、改めてご理解いただきたいと思うのであります。
四半世紀前、全国に巻き起こった公害反対運動とあいまって、大阪空港の騒音問題は大きな社会問題となりました。
また、東京では、成田空港の建設反対運動の中で、死亡者を出すような騒然とした事態となっておりました。
大阪空港の代替空港として、陸上空港は不可能に近いし、いかなる空港も、陸上にある限り公害と無縁ではありません。
実は、関空は、こうした現状と反省の上に立って、泉州沖5キロの海上に、公害のない空港を建設する、陸上空港では及びもつかない新世紀の環境型空港という壮大な理想を掲げて計画されたのであります。
当初から、海上空港は、陸上空港の3倍の費用がかかると言われていました。
これを承知の上で建設された関空が、今日、不況と財政難の中で、「羽田や成田と比べて費用がかさむ」などと、「関空バッシング」が行われていることに、私たちは、正直なところ、憤(いきどお)りを感じます。
しかも、自民党政府は、この理想の空港建設の趣旨を、大きくねじまげました。
中曽根内閣は、総工費1兆円を超える巨額投資を、公団方式で進めることに難色を示し、民間活力導入を旗印に、株式会社方式を押しつけたのであります。
当時、大阪府や地元自治体、関西財界は、成田空港と同じ公団方式を求めました。しかし最終的には、「早期着工のためにはやむなし」と、株式会社方式を、不本意ながらも、受け入れたのであります。
私たちは、断腸の思いでありました。
その結果、関空は出発当初から、1兆円の借金を抱え、毎年400億円の利払いに追われます。株式会社だからこそ、莫大な固定資産税にあえぎ、当然ながら、空港施設や連絡橋の利用料金は、世界一高くなり、国際的な競争力をますます低下させる結果となりました。
ここが、すべての始まりでありました。
つまり、関空は、採算を度外視した理想の上に計画されたにもかかわらず、採算性を最も求められる株式会社方式で行われ、しかも、経営感覚に欠ける「官僚や天下り集団」によって運営されると言う二重、三重のミスマッチがありました。
ここに、関空の悲劇があったと私たちは思います。
しかし、当時、これを受け入れていなければ、今日の関空はなかったし、大阪空港周辺の航空機騒音の解決や関西経済再生は、さらに大きく立ち遅れたに違いありません。
その意味で、私たちは、大きな宿題をかかえたまま、苦渋の決断をしたのであります。この問題を解決するのも、私たちの未来への責任であるといわなければなりません。
● 関空は、長期不況の真っ只中の平成6年に開港しました。関空開港の前に、大阪空港が16万便であったのが、現在では、関空で13万便、大阪空港で10万便の合計23万便となり、わずか6年で50%以上の増便となっています。
そう考えると、関空が果たす役割の大きさ、経済効果は確実に増えている訳でありますから、本格的空港として、さまざまな「事故」を想定した場合にも、2本目の滑走路、とくに4,000メートル級の滑走路を含む2期工事は、関空と関西経済の復権にとって欠くことのできないものであると考えます。
私たち大阪府を初め、近隣自治体は、国の第1種空港でありながら、すでに、1766億円の空港建設費を負担し、今後の負担とあわせ、約3000億円以上を投入することになります。
これは、成田空港に、東京都や千葉県が1円も負担していないこと、逆に、羽田空港の第3次拡張工事では、東京都のゴミ埋立地を、運輸省が3000億円で買い上げたのと比べて、実に不公平であり、国の首都偏重ぶり、東京中心主義には怒りを覚えざるを得ません。
政府は、このような地元自治体のこれまでの努力を正当に評価して、2007年の2期工事完成をめざして、国の責任において行うべきであることを、まず表明いたします。
そこで、知事は、以上述べた海上空港・関空の歴史と意義を踏まえて、どのように2期工事完成に向けて取り組まれるのか、お伺いいたします。
● さて、空港の建設に関わる資金スキームは、すでに確認されています。
この点まで変更を求めようとは考えていません。
しかし、会社運営に関わる資金スキームについては、一切確認されていませんし、この点をアイマイにして、むやみに府の資金をつぎ込むことはできません。
例えば、今回、着陸料を引き下げる措置として、運輸省が概算要求した案は、国20億円、関空会社20億円、そして地元自治体が5億円を負担すると言うものであります。着陸料、空港使用料、連絡橋通行料の引下げなどは、確かに、関空の将来を決する重要な問題であります。
しかし、着陸料引下げは、明かに会社運営にかかわる案件であります。
国際競争力を高める。利用者のためにもなる。関空の大株主であり、地元12自治体の調整役である。だから地元が一定の負担をするのは当然だ。このような理由で、建設に関わる資金スキームと同じ負担割合を、地元自治体に求めることは、筋違い、約束違反と言わねばなりません。
もし、同じような理由で、次は駐車場料金の引下げ、次は連絡橋通行料金の引き下げと、次から次へ、自治体負担を求められることになれば、一体どうするのでしょうか。知事 そうでしょう?
今後、数十年、際限のない一般財源投入のキッカケになりはしないか。私たちは大いに危惧をしています。
しかも、関空自体の経営は、ある意味では健全であります。この6年間で、関空会社は、1800億円を超える減価償却を行い、累積損失を大きく上回っているのであります。
関空会社の厳しい経営の原因は、ひとえに、理想空港のための公共投資を、民間企業の設備投資にすりかえたことにあります。
国は、自治体に負担を求める前に、経営健全化のために打つべき手はいくらでもあるはずであります。
例えば、空港島や連絡橋の買取り、あるいは、借金返済期間の延長や利率の引き下げなどもそうであります。それは、国の責任において判断すべき事柄であります。
今後、定められた建設に関わる費用負担以外は、一切、国の責任において行うよう、しっかりと原則を踏まえ、国に対して、粘り強く交渉すべきであると思います。知事の決意をお伺いします。
● また、大阪空港、関西空港のダイヤを見た場合、必ずしも乗客の利便性を優先した編成にはなっておりません。
これが、国内のハブ空港としての機能さえも弱めていると思います。
例えば、アジア向けの近距離国際便を大阪空港に移す。その変わり、長距離国際便と国内空港との連結、利便性を高めるために、大阪空港の国内便の主要路線を関空に移すなどの方法も、その1つであります。
このように、乗客本位のダイヤ編成を行うためには、両空港の運営主体が異なっていることは、大きな障害であります。
将来においては、関西空港、大阪空港の経営については1本化し、国の責任において運営を行う方向をめざすべきであると思います。
もし、民主党が政権の座にあるとすれば、こうした決断をしたいと、私たちは考えております。
知事のご見解をお伺いします。
● さらに、関空会社の運営に関しても、一言申し上げておきたいと思います。
関空会社の役員には、運輸・大蔵の天下り官僚や出向者が席を連ねています。運輸省は経営企画部、大蔵省は経理部、そして、大阪府は調整部という役所のタテ割そのものであり、組織間の連携もありません。さらに、数年経てば、国の職員は、霞ヶ関(かすみがせき)に帰ってしまいます。
危機感が希薄になるのも当然です。
こんな体質で健全経営ができるのでしょうか。そのために事なかれ主義になると、過日の新聞にも掲載されていたところです。このような体質が続くようであれば、責任の所在が非常にあいまいとなり、関空会社の放漫経営を非難されることとなっても、いたしかたないと言わざるを得ません。
また、来年度からは、特殊法人を対象にした情報公開法が施行される見通しとなり、関空会社も公開の対象となります。
この夏に、空港島の地盤沈下問題が大きく報道されましたが、この対応についても余りにも対応が遅いといわざるを得ません。地元市町は、関空会社に、その報道の真偽の程を問いただしたにもかかわらず、満足な回答が得られなかったとも聞き及んでおります。
関空会社は、これまで以上に説明責任を果たし、府は、積極的に情報公開のあり方に関与し、国に対しても同様の働きかけを進めるべきであります。
知事はこれらのことをどう思われますか、お伺いいたします。
● 最後に国の航空行政についても、一言、触れておきたいと思います。
2002年には、成田空港の暫定滑走路が完成します。中部国際空港、神戸空港も、次々と開港を控えています。
近隣アジアに目を向けますと、韓国の仁川(いんちょん)国際空港の開港、シンガポ−ルのチャンギ国際空港の増設など、関空の経営は、より厳しいものになるのは、火を見るよりも明らかです。
国全体の航空需要予測が視界不良のままに、相次ぐ地方空港整備にゴーサインを出したかと思えば、今度は「やはり重点は羽田空港だ」と、方向転換をする。
政府の航空行政が、ダッチロールを繰り返しております。
収集がつかなくなると、「空港の大競争時代だ」など開き直ります。巨額の公費負担を自治体に強要しておいて、「競争・倒産も自己責任」では、無責任のそしりをまぬがれません。国の航空政策の根幹をなす関空のあり方そのものは、本来、国が責任を持って対処すべきものであると、我々は考えるわけであります。
以上、民主ネット議員団の見解を表明し、知事への質問を終わります。