政務調査費29万円を修正処理

=政務調査費についての私の考え方と対応について=

大阪府議会議員 中村哲之助

 私は、今回の政務調査費問題で個別外部監査人から「目的外支出」と指摘された約29万円を7月10日、自ら費目毎に修正し、知事からの勧告を待たず、返還の処理手続きを行いました。

※ 私が外部監査で指摘された費目と金額は、下記のとおりです。
平成16年度
  1. 調査研究費の内  65,895円
          (ガソリン代の按分費を1/4とするようにされたため)

  2. 事務所費の内   64,800円
          (月極駐車場の賃借料を1/2以内にされたため)
合計  130,695円

平成17年度
  1. 調査研究費の内  74,665円 (前年度と同じ)
  2. 事務所費の内    82,800円 (前年度と同じ)
  3. 事務費の内      2,737円 (事務所の置き薬代が目的外とされたため)
合計   160,202円

2年度分の合計      290,897円



1.これまでの経過
 統一地方選挙終了後から、府議会議員に交付されている政務調査費の使途が大きな問題として取上げられ、個別外部監査の方法によって全容を調査することになりました。
 4月23日の臨時府議会で選ばれた外部監査人の播磨政明氏(裁判官として長年司法に携わり、現在、弁護士)をはじめとする弁護士4人は、私たち議員全員と各会派に対し、H16、17年度の会計帳簿と領収書の提出を求め、その後、個別のヒアリングが20日間程度行われました。
 また一方、議会は各会派の代表による「大阪府政務調査費あり方協議会(=以下、あり方協)」をつくり、精力的に調査・検討を重ねてきました。
 さらに「あり方協」は、弁護士や公認会計士らの外部有識者も加えて、使途基準の詳細検討や透明性の確保をどうするのかなどの議論を続けています。
 また、民主議員団でも、「政務調査費問題プロジェクトチーム」を作り、議会の「あり方協」に反映させる努力を重ねてきました。私もメンバーの一人として、いろいろな提言・検討などを行ってきました。
 このような中、府議会の「あり方協」は7月10日、一定の使途基準を作成して中間発表を行いました。今回の中間発表は個別外部監査人が設定した「基準・考え方」とほぼ同一のものです。これは、私自身が考え提案してきたものと相当似通っていることもあり、前記のように外部監査の指摘どおり、自主的に修正処理したものです。


2.政務調査費問題とは何か
 これまでからも、政務調査費は議員の第二報酬ではないかと取上げられたことはありましたが、これほど大きな問題になったことはありませんでした。今日のような、異常とも思えるほどのずさんさが浮き彫りになったその原因は、議員がこれまで「透明性・妥当性のある使途基準」を明確に示してこなかったことにあります。
 見張り番は、議員が報告する現在の「収支報告様式」だけでは、支出した金額とその中身が何ひとつ分からないし、自宅に事務所を置きながら、なぜ高額な家賃の支払いが生じるのかなどという問題を指摘し、目的外支出の返還を求めてきました。
 また、調査の結果、確かにこれはどうなっているのかと思われるようなケースも相当見受けられます。例えば、TVなどでも放送されたように、
  • ハワイへの安全保障問題視察といいながら実態は観光とされたもの
  • 同様に県議会への視察といいながら温泉旅行だった
  • 毎月の事務所の清掃費用の支払いを証明するものがない
  • 冠婚葬祭時の祝電・レタックス費用などを通信費として計上している
などのことは、目的外だと指摘されても仕方ありません。
 今回の個別外部監査の判断基準が、議員にとっては相当厳しいものになっていることは事実ですが、これを見解の相違とか、議員活動の実態を正しく理解していないからこのような判断基準になるなどと決め付け、肝心な議論をはぐらかせてはなりません。


3.議員の勘違いを認める必要がある
 政調費は、見張り番が言うように、政策立案などのために必要となる調査研究などにのみ充当できるものであって、通常の議員活動には支出できないとする狭義の考え方と、議員の活動は区分が困難で、もっと幅広い活動も含まれるとする考え方があります。今回の外部監査では、見張り番のような狭義の考え方には立たず、かなり広範な支出範囲と按分率を容認していますが、議員活動すべてを含んでいるわけではありません。それ故、議員には多くの不満や見解の相違があるのも事実です。そこで、私たちは改めて、
  1. 政調費は議員活動全般を援助するための「活動補助金」ではないということを認識する(活動補助金にするためには国会での制度改正が必要)

  2. 政調費は残余が生じればこれを返還することが義務づけられているものであり、実費主義・実績主義であるという考え方を常に持たなければならないこと

  3. 支出の対象と金額も大事ですが、支出するプロセス、経理処理の方式も厳しく問われており、帳票などに不備があると目的外とされてしまうことを肝に銘じなければならないこと
を認識する必要があります。


4.どんな問題点があったのか
(1) 個別外部監査人の判断に対しての評価を誤っていないか。
 今回の判断基準に対する評価をどうするのか、妥当と思われる大半の基準を否定してはいないか、どのような角度からチェックしても、今回の監査の判断基準を認めざるを得ないのではないかと思われます。

(2) 今回の監査報告書には「社会通念上」という表現が度々登場しますが、これに示されている「考え方」をゆがめ、例えば「個人の自動車購入費」や「車検費用」のようなものまで、政務調査費に充当できるのではないかなどという見解が未だにあるのは不見識で、しっかりと認識する必要があります。

(3) 監査人による各議員からの事情聴取は、余りにも限られた時間内であったため、議員からの説明が十分にできず、「監査人からの一方的な指摘の場ではないか」、「質問も受けつけてくれない」などという議員の指摘も多く出されました。事実、限られた僅かの時間に調査を行わなければならなかったということが、多くの問題を残したと思われます。

(4) また、限られた時間しかなかったことから、複数の弁護士が手分けして任に当たりました。そのため、担当者によって判断が違っている部分が散見され、不利益を被っている議員が何人か出ていることも事実です。各担当弁護士によって聞き方や判断が異ならないよう、十分な対策が図られたはずであるにもかかわらず、問題を残しました。例えば、

  • A議員にはOKとした項目が、B議員には否定
  • 按分率でも、議員によっては100%近く認められている場合と、1/8しか認めないとしているものがある(携帯電話・燃料代など)

5.この間の対応などについて
(1) 個々の議員の支出事例が余りにも違いすぎることや、 議員の中にも、納得ができないから裁判に訴えてでも闘うという考え方、早く決着をつけたいという考え方、他の動きを見ながら対応したいという考え方などが混在し、これらを会派でまとめることは非常に難しいことでした。

(2) 政務調査費問題で、「目的外支出だと仮に指摘されても、お金を返せば済むことだ」などといい加減に考えている議員はただの一人としていないはずです。誰もが選挙と同様、府民の目は厳しく、対応を誤ると政治生命にかかわってくる場合もあると、真剣な対応をしてきたと思われます。今後とも、率先してこれにあたり、自らの支出が妥当性・透明性の高いものとなるように努めなければなりません。

(3) 先の3.1 でも触れたように、政務調査費は実費主義・実績主義であるため、これまでOKと判断されていたものでも、目的外支出とされてしまうケースが出てきています。例えば、会派の広報費の切手購入代については、これを完全に使い切ったことを証明するものがないからダメだと否定されました。今回は便宜的に1/2を認定するとされ、H16年度は970万円の1/2の485万円、H17年度では475万円をそれぞれ目的外とされ、これだけで議員一人当たりの返還額は38万円を超えてしまいます。
 これはもともと、議会事務局とも相談し、郵便局発行の領収書を保存していれば問題はないと判断されていたもので、今になってそんなことを言われてもという気がしますが、いたし方ありません。社会通念や時代の背景、府民の意識の変化などをよほどしっかりと掴んでおかなければならないと指摘されたことになります。


6.これからはどうするのか
 これらのことから、
  1. 会派・個人とも、目的外支出と認定された費目の修正と今後の対策を講じる

  2. 外部監査人の定めたルールと考え方の大半を議員の側が了承する

  3. あり方協で出されたルールは 、条例が可決された場合、その施行前であっても、そのルールにできるだけ従う

  4. 帳票や支出証書の整備は不可欠で、これまで以上に整備する

  5. 後援会などの政治団体や政党の事務所がある場合、政務調査費の支出と紛らわしくないよう、適切な対応と按分を行う
などを急がなければなりません。


7.最後に
 私たち議員は府民の信託を受けて日々の活動を行っているもので、府民の「信頼」が不可欠です。そのため、政務調査費や費用弁償などの様々な課題に向き合い、府民の納得のいくあり方を定め、議員としての活動を誠実に展開していく必要があります。
 今回の監査では、支出の実態がきちんとありながら、会計処理の仕方が一部不適切だと弁護人に思われ、そのため、多額の目的外支出を指摘された議員もいます(それだけに、念には念を入れた帳票管理が必要と、つくづく考えさせられます)。
 また一方で、こんな監査請求が続けば、議員活動の中身を悉く曝け出してしまうことになり、活発・柔軟な活動ができないという考え方を述べる議員も一部存在しますが、公費の支出が透明・妥当でなければならないということとは異次元のことで、混同してはなりません。
 私はこれまで、議員としての活動を誠実に果たしてきた自負があります。そして、私の活動を補助している事務員なども誠実にその職務を果たし、政務調査費に関する会計帳簿なども先進的と思われるシステムで対応してきました。しかし、今回の監査で、私自身の支出の一部が冒頭に記載のとおり、目的外と認定されました。私の判断違いによって生じたものですが、この点を反省し、今後はいささかの間違いもないように努めたいと思います。そのため、領収書の保管・分類などで、より明確になるようにと、新年度からは整理方式を一新しました。
 私の活動に日頃、ご理解・ご協力をいただいている皆さんには大変ご心配をおかけしましたが、政務調査費の制度について、さらに私自身の目的外支出について、これまで十分なご報告ができていませんでしたので、このレポートを作成しました。ご一読いただきまして、様々なご意見をお寄せいただければ幸いです。


(2007.07.11)