中村議員は府議会の定例会が3月24日に終了したことを受け、宮崎県美郷町と大分県日出町を訪問しました。
美郷町は全国的にも珍しい常備消防のない自治体で、地域の住民が消防団を組織し、火災消化などにあたっています。しかし、急な発病や交通事故などの救急救命事件については「消防」がないため、町職員が住民からの要請を受けて、ボランティアで医療機関へ搬送業務などを行っていました。
このような中、救急救命事件を放置できないと、当時、美郷町の調査に来ていた白川さんが、「救急救命業務」を町から引き受け、24時間常駐で対応しています。
全国の1,719自治体で、常備消防がないのは30自治体で、一体どうして緊急時の患者搬送などを行っているのかを調査しました。
さらに、日出町で展開している生活困窮者への対策と就労支援策などの調査のため、日出町に設置されている「けいせんプラザ」の視察も行いました。
これについて、先日、議会の視察調査報告としてまとめていますので、これをご紹介します。
〇管外調査の日時・項目について
1.日時 2016年3月29日・30日
2.調査対象と地区
- @ 宮崎県美郷町の消防業務(救急救命)の調査(29日)
- A 大分県の生活困窮者対策事業等の調査(30日)
3.調査の概要等
常備消防を持たない宮崎県の美郷町が民間の力によって、救急活動を展開していることが伝えられたことから、どのような取組みであるのか、また、それが住民に理解されているのかを調査するために訪問した。
この日は、添付のとおり、議会の新玉副議長がわざわざ同席くださり、総合調整危機管理担当の菊池主査、救急業務を委託されている日本救急システム鰍フ白川社長らから、昨年に始まったこの取組みの説明を受けた。
美郷町は南郷・北郷・西郷の3地区が合併して現在の美郷町になったが、人口は1万人に満たず、財政基盤も脆弱なことから、常備消防を持たない、全国でも数少ない自治体である。これまで、救急出動要請があると、町職員が交代で運転して西郷病院へ搬送していたが、あくまでもボランティアであり、職員にとっては相当な負担感があったとのことである。
このため、近隣の日向市に事務の一部を依頼したようであるが、1億円を超える負担を求められたために断念し、最近までこの状況が続いていたようである。
このような時、国士舘大学で救急システム研究科助手として救急救命士の養成をする傍ら、国家試験対策の会社を経営していた白川透氏が常備消防を持たない同町の救急業務を視察した。同氏はこの実態を見、救命士の必要性を感じる中、大学で救急救命士の資格を取ってもなかなか就職できない実態であることから、それぞれの改善に役立つのではないかと考え、2015年4月に町と契約し、業務委託に応じた。
現在、救急救命士は9人で、2人1組で24時間待機し、西郷病院の指示に従って救急救命業務を行っている。しかし、あくまでも搬送のための運転は町職員が運転し、救急救命士がこれに同乗しているものである。
現在は、北郷地区に常駐していて、南郷・西郷には待機していないため、今後、順次地区を追加する予定で、今年度には南郷地区に7人を配置し、平成30年度には西郷地区も加えることとし、美郷町全域をカバーしていくとのことである。
美郷町は非常備消防としての消防団が強力な活動を展開しているが、病院関係者は「一日も早く常備消防が待たれる」と話しているようである。
これを視察し、これまでの経過を聞き、この地域の若者たちはほぼ全員が、「町民は消防団に入って町のために尽くすのが当たり前だ」という使命を感じているように思えること、さらに消防団員は43歳までで、それから50歳までは後方支援に当たっているということが分かった。年間3千万円程度で救急救命業務を受け、頑張っている救急救命士の方々に感謝と尊敬の思いである。今年度からは約7千万円になるようであるが、伝統的な住民の絆、使命感に感銘を受けた。
大阪府は生活困窮者対策を重要な施策として取り組み始めたが、昨年の暮れから大分県でこれへの取組みが顕著だとの情報に触れ、今回、大分県社会福祉事業団が日出町に開設した「宿泊型福祉施設・けいせんプラザ」を視察した。
今回の視察では、県社会福祉事業団・渓泉寮の糸永寮長、事業団・けいせんプラザ総括の津島主査にお世話になった。生活保護に至る前段階の困窮者、生活保護の受給者、障害者の支援などを目的に昨年12月に開設したばかりの施設で、お二人とも、「施設利用者への支援を通じて、セーフティネットの一翼を担っていく」と力強く説明された。
この施設の特徴は昨年4月に施行された生活困窮者自立支援法に基づく施設としての機能を果たすため、これまでからあった渓泉寮の敷地内に別棟(けいせんプラザ)を建てたものである。ここでは、生活困窮者に低額な料金で宿泊所を提供し、同法による支援計画を立て、必要なサービスを提供し、自立を促すとともに、路上生活者や、病院を退院したものの住居の無い人、ひきこもりなどで一般の人と生活リズムを合わせられない人らが生活し、就労準備をしていた。けいせんプラザのこれまでの対応事例の一部を別紙に示していただき、さらに施設内を見学したが、入所者は廊下でも普通に挨拶され、比較的健康な感じだった。すでに退所された方もあり、元気に就労されているとのことである。
さらに、渓泉寮の障害者の作業所、ハウス内の三つ葉の水耕栽培などを拝見し、みんな元気に頑張っている姿を見、「頑張れ」と、声をかけたくなる。けいせんプラザは3階建てで8居室あり、2階は女性、3階は男性で、2階と3階は行き来ができないようになっていた。ご夫婦という組み合わせもあったが、ここでは夫婦もそれぞれ別に生活している。また、DVなどで子どもとともにということも想定し、写真のように非常に広い部屋もあった。
生活困窮者だけではなく、障害者の家族の相談と短期入所によるレスパイトなど、制度の狭間の人にもしっかりと対応し、生活がしずらい人にも利用してもらいたいと語っておられた。全国でも厳しい環境にある大阪で、このような施策を充実させたいと思う次第である。
けいせんプラザの部屋1
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けいせんプラザの部屋2
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ハウスで三つ葉を水耕栽培で育て出荷している現場を視察した中村議員
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