バックナンバー 2018年 秋号
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1.大阪北部地震

 6月18日に発生した府北部を震源とする直下型地震はM6.1という大変な規模で、多くの死傷者を出し、家屋の損壊、道路・水道をはじめとする都市インフラにも深刻な被害を与えました。府や関係市、関連機関は被害者の救出やインフラの復旧などに全力をあげましたが、多くの課題も浮き彫りになりました。

 6月18日7時58分、M6.1、最大震度6弱の地震が発生し、大阪府北部を中心に大きな被害をもたらしました。また、その後にも度々震度3〜4の地震が起こりました。
 この地震で登校中の小学生が倒壊したブロック塀の下敷きになり死亡、また、倒れてきたタンスの下敷きで高齢女性が死亡、見守り中の男性が死亡などの痛ましいニュースが駆け巡りました。


公衆浴場の煙突が折れる

土砂崩れも発生

 さらに午前8時という時間帯であったことから、通学・通勤の多くの方々が交通機関の運転見合わせ等によって車両内に何時間も取り残され、その後、徒歩で帰宅を余儀なくされることになりました。また強い振動で停止したエレベーター内に閉じ込められる人も数多くおられたと伝えられています。
 府や関係市町村は直ちに対策本部を立ち上げ、被災者の救出、水道・ガス・道路・公共交通機関の復旧活動に取組みましたが、今回の大阪北部地震は私たちに様々な課題があることを教えました。
 この地震の被害状況を安倍首相や石井国交相らが6月21日、大阪を訪れて視察するとともに、今後の対策について松井知事や関係市長らと意見交換しました。
さらに、国民民主や立憲民主も党府連に対策室を立ち上げ、情報の収集とともに被災者の要望を聞く等の活動を展開しています。
 中村議員も震災直後から被災現場を回り、被災者とお会いして要望を聞くとともに、損傷した家屋の復旧作業の手伝いや、大規模被害の会った場所(公衆浴場の煙突倒壊現場等)の近隣住民の方々の不安の声に耳を傾けるとともに、避難所でご苦労いただいている方々の意見や要望等を伺いました。
 今回の地震は大都市直下型で、通勤・通学時間帯と重なり、人口密集地であることから、様々な問題が生じました。
具体的には、
  1. 違法状態のブロック塀が放置され、これの倒壊によって死者が出た、
  2. 各鉄道会社が一斉に運転を見合わせ、安全確認のために再開までに長時間を要し、さらに再開を知らせる情報がバラバラでマヒ状態になった、
  3. ガス・水道などのインフラが停止し、日常生活に大きな支障が出た、
  4. 多数の帰宅困難者が飲料水などを求めたが確保できない、
  5. 電話が故障・通話集中のために自宅や職場への連絡をとれない
  6. 学校の休校措置連絡なども校長ではなく市長らのメールで大混乱した、
  7. 災害弱者である高齢者や障害者の要支援者名簿が十分に活用されなかった、
  8. 病院が非常時の発電装置の点検を長年怠っていたことで機能しなかった、
  9. 避難所生活を余儀なくされた方のトイレ、食事をはじめとする配慮が不十分などです。
 家が倒壊するかもしれないなどの理由で、近くの避難所で生活することを余儀なくされた方々の声も深刻なものがあります。
 例えば、
  • 歩行困難な方がトイレへ行こうとしても、余りにもトイレが遠く、また昼は授業中で教室の前の廊下を通るため、はずかしいし申し訳ない思い。
  • 寝る時に体育館の運動用マットを床に敷いたが、ベッドの高さにならないので辛い。 ダンボールで簡単にできる簡易ベッドを用意してほしい。
  • プライバシー確保策をもう少し丁寧に…など、今後の課題として見直しが必要です。
名簿の有効活用を  また、2011年の東日本大震災がきっかけで、13年に災害対策基本法が改正され、障害や高齢で災害時の支援が必要とされる「避難行動要支援者名簿」の作成が義務付けられ、被災13市町(大阪・豊中、守口、茨木、寝屋川・四條畷・交野・島本・高槻・摂津・吹田・枚方・箕面)で27万人になりますが、実際にこの名簿を使って安否確認をしたのは8自治体に留まっています。災害時には名簿を活用した安否確認の実施を求めていますが、吹田・枚方・箕面は安全確認自体をしていなかったと日刊紙は伝えています。
 被害状況を見て、全員の確認は必要ではなかったという自治体もありますが、今後に課題を残しました。

情報の整理・一元化が必要 新聞にも大きく問題点として指摘された一つに、「鉄道の運転見合わせと再開問題」があります。鉄道各社が再開のめどを示さず、「運転見合わせ」を続けると、利用者は帰宅の手段を選択できないため、多数の帰宅困難者が生じます。今回は各社の運行見合わせで、約400万人余りに影響が出たとみられます。また再開を知らせるのも直前であったり、再三のずれ込み、さらに各社バラバラのため、トラブルが相次ぎました。
松井知事はこれらのことを受け、6月22日、国に対し、「地震発生時の鉄道の運行再開に関する情報発信のあり方について、国は今回の事例を踏まえて検討をお願いしたい」と要望書を提出しました。

悪質なデマは許されない  地震直後にSNSで、「電車が脱線」などの悪質なデマが投稿され、相当拡散しました。さらに、「外国人がコンビニ強盗をする」などの在日外国人を差別するものもあります。中村議員は、「地震直後、不安と動揺が見られる時、悪質なデマや差別を煽るようなことは許されない。これについても知事にしっかりと対策を申し入れていきたい」と語りました。


2.知事に対し今年の夏も提言・要望

 中村議員は毎年夏に、知事に対して「新年度予算編成と9月定例会へ向けた提言・要望(以下、「提・要」)」を行ってきました。8月上旬の提出に向けて現在、重要項目を8分野に分けて整理しています。皆さんの声を一つでも多く反映するため、そのあらましをお伝えします。
中村議員が整理している8分野は、
  1. 信頼の府政を築く
  2. 平和と人権・自治を尊重する
  3. 子ども・女性に笑顔をいっぱい
  4. 福祉・医療の充実
  5. 人を育てる教育
  6. 暮らしを支える
  7. 勤労者・中小企業・大阪を元気にする
  8. 安全・快適なまち
です。

財政規律
 今回の「提・要」は、6月の大規模地震の後であるだけに、特に都市の安全、危機管理などを重点項目とするため、現在多くの方々や団体のご意見などを伺っています。
さらに万博、IR、うめ北、なにわ筋線を初めとする巨大事業が目白押しとなっており、将来に大きな負担を残すようなことがあってはならず、財政規律の堅持を府政運営の基本にしなければなりません。
 中村議員は、「府の財政は危機的な状況から少し脱却したとはいうものの、まだまだ厳しい。費用対効果、次世代への負担、危機管理対策などを十分に検討し、後世に悔いを残さないようにしなければならない」と語るとともに、行財政改革を大胆に進めることや、公共事業でも新規から更新・維持の時代へ転換しており、老朽化したインフラの長寿命化対策などに力を入れるよう求めていきます。
急がれる老朽化対策
 今回の地震で21万人が水道管の破裂等で被害を受けたことでも明らかなように、大阪の水道管は全国で最も老朽化率が高くなっています。高度成長期に敷設された水道管は法定耐用年数(40年)をはるかに超えているものも多く、断水を防ぐためには老朽管の更新が不可欠です。さらに下水道管も同様で、菅の破損で年間に3千件以上の道路陥没が発生しています。
府はこれらの都市インフラ事故を防ぎ、長寿命化を進めるために、中長期的に保全工事を進めようと、近年は一定枠の予算を確保して長寿命化対策を講じていますが、現在の取組みスピードのままでは決して万全とはいえません。
松井知事自身も、「府内の水道管の更新・老朽化した浄水施設の整備等だけで約1兆円は必要になると思われる」と語っています。インフラの対象物をすべて具体的に把握した上で、それぞれの達成年度を前倒しして、さらに大規模な予算枠を設け、国や関係市町村と連携して徹底した早期対策が必要です。
働き方改革
 いま働き方改革は、大変注目を集めています。とりわけ、過労死などを起こす長時間労働問題はしっかりとした対策が必要です。どの職種でも是正が必要ですが、中でも医師の長時間労働はより深刻です。日刊紙に、@病院勤務の医師の半数が健康不安を持ち、過労死を懸念している、A大学病院の5.5%しか、医師の労務管理ができていない、B公立病院の約半数が労働基準法違反状態などという記事が掲載されていることを受け、中村議員は新年度予算審議の3月の委員会でもこれを取上げ、府が積極的に実態把握を進めるよう求めました。
夏の「提・要」では、大阪労働局や病院関係団体が運営に参画する府医療勤務環境改善支援センターの活動とも連動し、保健所の立入検査の中でしっかりとチェックし、効果的な取組みを進めていくように求める予定です。
福祉現場のあり方
 福祉現場の安全対策も重要課題です。生活困窮者や高齢者・障害者等が生活する施設が火災に巻き込まれる、職員の暴力行為などで死亡する等の痛ましい事件は全国に広がっています。
また大阪では、今年度当初に無届の有料老人ホームがまだ100ヶ所もあることが判明しています。
 さらに、放課後等デイサービス、障害者グループホーム、認知症高齢者対策、福祉医療費助成制度の見直し、感染症・がん対策等でも、知事に取組み強化を求めていきます。
子ども達の笑顔を
 子ども・女性に関するテーマとして、

  1. 子どもの貧困と虐待、
  2. 保育などの子育て支援、
  3. 就労支援、
  4. 妊娠と出産への切れ目のないサポート体制などの項目に整理しています。
 子どもの貧困対策法で、貧困対策は国と自治体の責務とされています。これに基づいて一昨年、子どもの生活に関する実態調査が行われ、具体的な取り組み項目が掲げられ、全庁挙げての取組みが進められていますが、「貧困は自己責任」という市場原理ではなく、「子どもの育ちは社会全体で支える」という理念のもとでの施策展開でなければなりません。
 また、社会の変化で、少子高齢化、核家族化、地域での繋がりの希薄化で、育児等で身近な協力を得られにくくなっていることから、妊娠・出産・子育てをシームレスにサポートする体制作りが急がれます。各市町村の事業計画と進捗状況を府がしっかりと検証し、どの地域でも実効性のある施策展開が実施されるよう、市町村への支援をさらに充実しなければなりません。
通学安全対策
 児童の通学時の安全対策については、これまでから府も市町村も精力的に取上げてきましたが、ほとんどが通学路への車の暴走や横断歩道での歩行者妨害等による事故から児童を守るというのが中心でした。また、学校への不法な侵入事件等もありましたが、今回の地震でのブロック塀倒壊事故は改めて、「危険はどこにでもある」ということを認識しなければならないことを教えました。
 中村議員は、「今回はブロック塀が大きな問題になったが、建造物に取り付けられている看板等もしっかりと点検する必要がある。そこで、
  1. 危険・違法なブロック塀や看板等の建造物の総点検を市町村とともにしっかりと行う、
  2. 公私に関わらず、危険な物は撤去・是正を早期に実施、
  3. 費用負担が多額になる個人所有物件には一定の助成措置を講じる」ことを知事に求めます。
駅の転落防止柵も
近年、鉄道各社が転落防止用の可動式ホーム柵の設置を始めていますが、1ホームだけでも約3億円の費用が必要となるため、なかなか進みません。国に補助金を増額するように働きかける必要があります。


3.大阪府が国に対して要望書を提出

 府は今年も6月、「国の施策並びに予算に関する提案・要望」を行いました。また、これまで毎年度、各省庁への要望活動と合わせて、大阪選出の国会議員にも説明して協力を求めるとともに、府議団にも説明を行ってきました。
 府の政策企画部から事前に「提案・要望」の説明を受けた中村議員は国民民主と立憲民主の国会議員団に対し、「大阪府からの提案・要望については、実現のために超党派の取組みを強めてほしいというものが多くある。しかし一方で、私達が目指しているものとは相当異なる課題もある。特区を活用して規制緩和という名のもとに展開しようとしている基準変更は、現場の混乱や施策の質低下の恐れが心配だし、国民の反対が根強いIR・カジノ問題などは党本部でも十分に対応を議論してほしい」と語りました。
 中村議員が国会議員団に十分な議論を求めた中で、例えば、待機児童の解消という課題での府の提案・要望では、「国が定める保育所の床面積の基準や、保育士等の人員配置基準の緩和など」を求めています。
 中村議員は、「府の案は、保育の質低下につながる恐れがあり、保育現場での死亡事故などが起きている中では慎重でなければならない。他の項目などとともに、知事に改めて提言していく」と語りました。

・・・・・・・・国会議員は?
 国民・立憲の国会議員団は、府からの説明を受けた際に、平野、矢田、尾辻、森山各議員らから、
  1. リニア新幹線と伊丹空港との関連はどうしていくのか、
  2. 密集市街地対策は30年前からの課題であるが遅々として進んでいない、
  3. 子どもの生活に関しての実態調査に基づく貧困対策はどのように取組みが進んでいるのか、
  4. 次世代のがん治療法のホウ素中性子捕捉療法(BNCT)への財政的支援、
  5. 国民健康保険制度は都道府県が中心的な役割を担うことになったが、府内の各市町村ではどのように対応しているのかなどの意見が出されました。


4.違法民泊対策をしっかりと

 ヤミ(違法)民泊の取締りを厳しくすべきだという苦情が強い中、住宅宿泊事業法(民泊新報)が施行されました。この法律に基づく届け出は新法施行日の6月15日現在で、上のグラフのように145件が受理されました(届け出は235件)。また、これを仲介する業者は23社、管理する業者は673社となっています。




府内における民泊対策について

●宿泊施設は満杯
 さらに、これとは別に旅館業法に基づく簡易宿泊所は府内全体で628ヶ所、特区民泊による認定件数は792施設となっています。
 新法が禁止している届け出や許認可を受けていない民泊が、まだサイトに載っているとの指摘があり、府や関係市町村等が連携しながら、これらに対応しています。インターネット仲介サイトにはこれまで1万件をはるかに超える施設が掲載されていましたが、新法制定後は約半数に激減しています。それでも、架空の登録番号を掲載している施設(大阪はM27の後に7ケタの数字)も見つかり、中村議員は、「インバウンドによる宿泊施設の供給は必要かもしれないが、地域住民の安心・安全・環境保全を優先しなければならない」と、引き続いて注視していくと語っています。


5.法定協議会はまだ続けるのか

 大阪市を廃止しこれを小さな4つの自治体にするという大阪都構想は、法定協議会等での審議日程等から今秋の住民投票は事実上できないという状態になっています。
さらに、大阪市を廃止しないままで個々の行政区の権限をより大きくしていく総合区についても、まだ十分な議論が行われていません。
 7月2日に開かれた第13回法定協議会は、前回の法定協議会が動議に対する取扱いが主だったため、実質的な質疑がなされませんでした。維新、自民の質疑だけで終わっていたため、この日は公明・共産の質疑が行われました。両党ともに、現在の事務局案(知事・市長案)に対し、このような説明だけでは十分な議論ができない、提出している資料はおかしい等の厳しい指摘が行われました。


第13回

第12回

 中村議員は、「大阪の成長を考えれば、ツインエンジンが好ましい。法定協は早期に終結し、他の重要案件に集中すべきだ」と語るとともに、「IRカジノについてもかねてから主張しているように、国民の半数以上が反対している。大阪は誘致を断念すべきだ」と延べ、「夏の知事への提言に含めていく」と述べました。


 大阪府議会議員 中村哲之助ホームページ