代表質問項目(要旨)


     



■ 税制改革

  大阪府の財政事情と景気の動向は、依然として厳しい状態にある。 府民は、政府の「景気は上向き加減」との発表とは裏腹に、未だに景気回復を実感できず、中小零細企業は、引き続き深刻な経営難の中にある。
 また、行き過ぎた中央集権の社会、護送船団方式の管理社会を変えようという声は巷に溢れている。それが、先の衆議院総選挙の結果にも現れた。
民主党は、大阪の比例区で、84万票を獲得し、私たちはその責任の重大さ、府民の期待の大きさを改めて知った。
 私たちは、単に政府の与党・野党という立場にとらわれず、新しい行政システムを確立して、地方分権を目指す自治体の共通の思いをもとに、ともに協力して、府政改革に取り組みたい。

知事の基本姿勢

 さて、全国の地方自治体をめぐる動向であるが、府県と市町村の財政事情は早晩、厳しい状態を迎えることになる。 その意味で、大阪府は、他府県より一足早く経験し、さきがけて改革に取り組んできた。  今後、他の府県と協力・協調して、国に対して、地方税制の改革を求め、共同歩調、共同行動がますます必要になってくる。太田知事の基本的な考え方を伺いたい。  最近、各都道府県から、様々な自主財源確保に向けた地方独自の課税のアイデアが示されている。 これ自体を否定するつもりはないが、そもそも、限られた範囲内での課税自主権で、いかに府民や企業から税金を取るかということに熱中し過ぎた議論には、疑問を持っている。
 本来、財政難の問題は、国の地方税制の問題であり、いくら限られた課税自主権を行使しても、深刻な財政難を解決するものではない。
太田知事も、こんなところで太田色を出そうとする必要は、まったくないと申し上げておく。

○ 太田知事 ○
 地方分権を推進し、地方公共団体の自主性・自立性を高めるためには、一層の権限移譲と、地方税財政制度の充実を図ることが不可欠である。
 所得税や消費税などの財源移譲や法人事業税への外形標準課税の導入による地方税源の充実や安定的確保について、本府と同様に厳しい財政状況にある大都市圏を抱える他の知事とも連携を深め、国の制度改革を求めたい。




法人府民税値上げ異議あり

 議会直前に示された法人府民税の均等割の引き上げ案については、素案でありタタキ台であり、大いに議論したいとのことなので、私たちも率直に議論したい。
 第1に、景気の「気」は気分の「気」であり、景気回復が未だ府民生活レベルでは実感できないもとで、後ろ向きの効果となることに懸念があり、示さ示されている課税基準では、とうてい納得できるものではない。
 第2に、府民の皆さんは、「増税する前に、もっと府政の無駄使いをなくせ」との気持ちが強い。府自身の行政改革、行政システム改革の長期ビジョンを示すこともせずに、安易な増税に踏み切るべきではない。
ほとんどの方々は、値上げの額の多寡ではなく、府と知事の姿勢にこそ不満を持っているのではないか。
 第3に、私たちは、一般的に、政策税制に反対するものではない。厳しい財政事情の中でも、どうしても必要な新規施策を推進するために、時限的に、政策税制として、税制の一部を改正することについては、積極的に検討する用意はある。
 事実、私たちは、この観点から、産業育成策と法人事業税、青少年育成策と酒・たばこなどの自動販売機課税、低公害車普及と自動車税など様々な検討と提案も行ってきた。
 以上の観点から、今回の提案は、残念ながら、その理念が明らかでなく、理解しがたいと言わざるを得ない。知事に提案の再検討を求める。

○ 太田知事 ○
 法人府民税の均等割の超過課税は、大阪産業の活性化に対応するための緊急的・時限的な措置として、素案の中に盛り込んだ。
 政策税制については、限られた課税自主権の範囲の中で、環境にやさしい低公害車の税負担の軽減など自動車税のグリーン化や、新規創業や企業誘致のために法人事業税を軽減する制の創設を盛り込んだ。 今回の素案は、ご指摘のとおり、議論の素材としてお示しをしたもの。
 今後、議会を始め府民の皆様と議論を深め、実施に向けて具体化を進めたい。



■ 産業再生

 次に、税源涵養、税金を増やすという意味でも、最大のテーマである「大阪産業の再生プログラム」について申し上げる。
 産業再生プログラムの重点・目玉がわかりにくく、総花的という意見が多く出されている。  しかし、通産省出身の知事が、民間の第一線で働く経営者の意見を聞き、作り上げたこのプログラムが、今日の厳しい大阪経済の状況のもとで、積極的役割を果たしてほしいと期待する。
 知事はまず、「創業特区で、年間3万人の開業を目指す」と、創業の街・大阪の再生へ決意を示された。
 今回のプログラムには、大阪のものづくり企業への技術移転を促進する大阪版TLOに、全国42大学の参加を得たこと、またエンゼルファンドの創設、資産5億円未満の中小企業が発行する少額私募債の発行を支援するなど、全国で初めての資金調達施策が打ち出されている。
 さらに、企業誘致・創業促進のための優遇税制、創業資金の多様化など、限られた財源の中で、1000億円予算を投入して新規開業への条件整備を図ろうという決意も評価したい。
 府県レベルの商工行政は、制約も多いが、できることは何でもやっていこうとの姿勢が、今は大切であると思う。
 「創都大阪」といわれる進取の気風の町、ニュービジネスの大半は、大阪から起こった。60年代のにぎわいを取り戻すため、大阪市とも協力し、このプログラムの実行、着実な成果を上げてほしい。




■ 公共事業

企業局の廃止へ

 大阪府では、企業局が事業主となって、千里・泉北のニュータウン開発を始め、画期的な実績を残した。 しかし、この手法、つまり行政が土地を買い、造成し、住宅地や事業用地を供給する手法は、もうすでに歴史的役割を終えている。
 企業局の事業は、現在進行中の事業をもって終了することとし、今後、新たな事業を行わないことを、まず確認しておく。
 そして、将来の企業局の廃止をも視野に入れて、各事業ごとの、正確な資産評価にもとづく収支見通しについて、議会と府民に情報を開示し、今後の事業のあり方について、全面的な施策の見直しを行い、解決方策、処理方策を早急に示すべきではないかと考える。


○ 太田知事 ○
 企業局事業を取り巻く状況は厳しいものがあり、現在、各事業のさらなる点検・精査を行っている。
 見直しの結果も十分踏まえ、企業局会計全体のあり方については、平成13年夏ごろを目途に、明らかにしたい。




丹生川ダムは不要

 紀伊丹生川ダムについて伺いたい。
 私たちは、大阪府の安定した第2水源の確保に向けた、紀ノ川利水の意義については十分理解しているつもりである。
 しかし、紀ノ川利水の必要性と紀伊丹生川ダムの必要性は別問題である。
 私たちも、和歌山県などに出向き、調査をしてきた。
 和歌山県では、2年後に紀ノ川流域の吉野川に「大滝ダム」が完成する。このダムには、和歌山県が、毎秒3.5トンの水利権を設定しており、その内の0.56トンは、現在のところ、利用目的が定まっていないと聞いている。
 また、紀ノ川の水を使っている奈良県や和歌山県では、農業用水の需要も減っており、飲料水への転換が図られている。
 工業用水もダブつき気味だ。
 すでに和歌山市では、先の市議会で、「今後、新たな水源開発は必要としない」と表明し、紀伊丹生川ダム建設から和歌山市は離脱すると予想される。 今後、和歌山県では、最終的な水需要と配分の調整を行うと聞いている。
 紀伊丹生川ダムは、一旦、大阪府と和歌山県で確認されている事業でもあり、様々な経過のある事業だということは十分理解している。
 しかし、実に総工費1560億円、府営水道の負担分だけでも、500億円以上となる事業であり、ダムなしで、紀ノ川からの一定の利水が可能であるならば、大いに結構な話だ。  ダム建設計画の見直し、紀ノ川利水の新たな方策の検討に向けて、建設省・和歌山県・和歌山市と協議に入るべきである。
 また、水源確保のための河川法の規定など、現行法はダム至上主義となっている。この法の改正についても、十分研究を行い、国に対して積極的に働きかけるべきだ。 大阪市の水も余っている。府市合わせた、総合的な給水計画の検討も必要かと考える。 さらに、今後のリサイクル社会を考える時、節水、水を大切にすること、雨水の活用など、総合的な研究と実験も不可欠と考える。合わせて要望したい。


○ 太田知事 ○
 紀ノ川利水は、水源の複数化による安定給水体制を確立するために必要な事業と考えている。
今後、情勢を十分に把握し、過去の経緯を踏まえながら、国や和歌山県をはじめ関係機関と協議し、他の水源開発事業や既存の水利権の調整等が可能となれば、より効率的な水源確保に向けて努力したい。




水と緑の健康都市

 箕面市の「水と緑の健康都市」構想については、現在、オオタカ問題で、第3工区以外の工事が事実上中断されている。
 工事が中断しているこの時期に、各方面から心配されている収支見通しを含め、事業全体のあり方について、真摯な検討を行い、早急にその内容を明らかにすべきである。知事の決断を求めたい。

○ 太田知事 ○
 水と緑の健康都市開発事業については、オオタカの保全方策や地価動向等を踏まえ、収支見通しを含めた事業のあり方について点検・精査を加え、平成13年2月定例会までに、その内容を明らかにしていく。



国文都市・槙尾川ダム

 茨木市の国際文化公園都市構想の行く末、その採算性に危惧している。西部地区・中部地区の今後のあり方についても、事業の見通しについて、情報公開すべきである。
一般的に、現行の国の補助制度のもとでは、「道路がほしいからダム」、「ダムがあった方が道路費用が安上がり」、「目的は道路、手段がダム」という発想になりがちだ。
 和泉市の槇尾川ダムも、河川整備検討委員会で審議中であるが、「道路がほしい」という地元の願いは、私たちも理解できる。
しかし、公共事業とくにダム至上主義的発想の見直しが国においても検討されている時に、既定の方針だけにこだわるのではなく、大津川水系のより良い治水事業のあり方について、不断に検討する姿勢が必要である。
 例えば、結果的にダムよりも事業費が高くついても、100年に1度しか効力を発揮しないダム建設よりも、100年間のうち99年間、市民が親しめる遊水池公園を選択するのも1つの考え方である。
 さらなる、慎重な検討を要望しておきたい。




貴女なら決断できる

 過去に始まった事業を見直したくてもできない。国のニラミが気になる。他の事業で仕返しがないか心配だ。事業を始めた先輩職員の顔もチラつく。
   事業は、始める勇気よりも、見直し、方向転換する時の方が、何倍も勇気とエネルギーが必要なものだ。 数年で担当部署が変わってしまう公務員組織では、だからこそ、難問は後回しにされ、取り返しのつかない結果になる。
 幸い、私たちは今、ある意味では、過去に責任を負う必要のない新しい知事を迎えた。
 知事、事業の見直しは貴方にしか決断できない。府民は、それを期待している。
 知事の果敢な決断を期待して止まない。




■ 電子府庁

 私たちは、今年7月の知事要望においても、行政の情報化、電子府庁を目指して、「電子府政推進本部」の設置を提案し、この議会開会直前に、行政改革室の中に「IT推進チーム」が設置されたことを、高く評価する。
 かねてから、行政の情報化、OA行政、電子行政の実現を訴えてきた私たちにとっては、実に感慨深いものがある。
 通信技術の革命的な発展とは、人と人との距離を著しく短縮していること、高速で大容量の通信が可能となったこと、加えて、インターネットは無限に自己増殖する百科事典であり、特定の専門家の頭にしかない知識が公開され、情報が共有できることだ。
   つまり、IT革命は、徹底的な情報公開を進め、タテ型社会の企業や組織の仕事の仕方を、ヨコ型に、グループ作業の仕方に変えることを意味する。
 NTT東日本では、課長席や役職席が廃止され、個人の机もなくなった。ノートパソコンを持ち、旗のあるところが課長席で、必要なスタッフはテーマごとに集まって仕事をする。組織の秩序も変わり始めている。
大阪府も、このようなIT革命といわれる状況を正しく受け止め、「IT革命とは、行政システムの大改革である」との位置付けで取り組んでほしい。


事務事業の電子化

 第1のテーマは、どこまで事務事業の簡素化ができるか。
    例えば、給与事務については、知事部局・教育委員会の合計7万5000人分、1年間で総計100万件に上る毎月の時間外勤務や通勤手当などの報告書が、手書きで作成され、電算処理されている。
 これだけでも何十人もの職員が担当している。また職員の旅費は、未だに口座振込みもされず、手作業、現金渡しという始末始末だ。
 物品事務では、府の定時入札は週25回、件数は年6000件にも及ぶ。備品情報の共有化もなく、在庫の状況もつかめない状態だ。
 今日、関空会社や静岡県のように、事務用品・備品はPOS(ポス)システムで集中管理する時代だ。 このように、事務作業を電子化し、オンライン化することによって、定数削減を含む100億円近い節約も可能になると思われる。
      電子化によって死滅すべき事務作業はなくす方向で、早急に着手すべきである。来年度からでも実施すべきであると考える。


○ 太田知事 ○
 事務事業の簡素化については、来年度からお示しのPOSシステムによる物品事務をはじめ、給与や旅費事務などで「新共通事務システム」の導入を行う。今後、パソコンの1人1台整備によって、さらに内部管理事務の改善を進める。



電子申請サービス

 第2のテーマは、府の申請事務の簡素化、府民サービスの向上だ。
 週休2日制の時代、羽曳野市では、銀行や農協の自動支払機が動いている時間帯は、住民票や印鑑証明が自動交付機で取れるサービスを行っている。
 大阪府庁で1300種類、市町村で約200種類といわれる届出、申請の書類の膨大な数。国の個人認証、組織認証の法整備の動きに対応し、家庭や企業からも電子申請ができるよう、速やかに準備を進めてほしい。 そして申請の窓口となる大阪府ホームページには、すでに月間6万5000件のアクセスがある。これを府民との窓口として、さらに充実してゆくべきである。


○ 太田知事 ○
 各種申請書の手続きについては、引き続き、電子申請化する方策を積極的に導入してまいりたい。



国・市町村とネット

 第3のテーマは、国・府・市町村とのネットワークだ。
 国は、2003年に電子政府化、つまり申請、届出など手続きをインターネットで行うことを可能とするシステムを目指している。
霞ヶ関の各省庁と府県・市町村を結ぶ総合行政ネットワークづくりが始まった。今年度から実証実験が始まっている。
 今後、国・府県・市町村の相互の申請・届出、許認可や連絡などの手続きに際して、スピーディな文書交換、法令・条例・地域情報や統計など、データの交換と情報の共有が可能になってゆく。
 来年には、国と都道府県・政令市が結ばれ、2003年には、全市町村での運用が始まる予定。
府と11市1町が加入する施設利用予約システム「オーパス」では、昨年度の利用件数は、延べ547万件にのぼり、行政情報や生涯学習情報の提供など様々な分野に広がっている。
 また、府と市町村が個人情報保護やセキュリティを保つために、「自治体情報公社」のようなものを検討すべきではないか。 
 今後、府内各市町村の要望に応えて、様々なネットワークを進めるのに十分な体制を整えるべきだ。


○ 太田知事 ○
 各市町村においても電子自治体の実現が課題である。「府・市町村情報ネットワーク検討委員会」を設置し、お示しの情報セキュリティ対策を踏まえながら、ご提案の情報化の推進組織のあり方についても、年内に基本的な方向をとりまとめたい。



情報公開と府民参加

 第4のテーマは、情報公開と府民参加だ。
 情報の共有化は、庁内でも飛躍的に進む。知事メッセージや部長会議などの内容公開、府民との直接対話など、府民への情報公開も、政策決定の過程からオープンになり、府民提案も活発になる。
従来の硬直した審議会や公聴会の方式を十二分に補う、府民参加型の政策決定システムに変化させることも可能になる。
 直接民主主義の手法を大きく取り入れた、新しい自治体像が浮び上がってくる。
 今後、インターネット上での、知事と府民との対話をはじめ、具体化できることから、さらに内容を充実してほしいと思う。

○ 太田知事 ○
 開かれた府政を実現するために、今後、府政情報を一層迅速に提供し、府民が参加する「電子会議室」の開設を行う。



予算書のフロッピー化

 また、情報の共有化の手始め、電子府庁の第1歩は、まず予算書のフロッピー化だ。
 500ページを超える予算書は、議会が終わればゴミの山だ。項目別に検索が可能な電子化された予算書があれば、私たちも審議しやすくなる。
 隣りの部局や課の予算すら職員同士が知らない状態で、職員も府民も積極的な提案などできない。
 来年度から、現在の予算書と合わせてフロッピー化された予算書の提出も、ぜひ求めたい。


○ 太田知事 ○
 庁内の情報の共有化を図るため、来年度中には予算書のCD―ROM化を行ってまいりたい。
IT化は、情報の共有化や組織のスリム化、府民との連携の強化など、様々な効果が期待できる。仕事のやり方を根底から改革し、新たな行政システムの構築にむけ、積極的に取り組みたい。



プライバシー保護

 また、電子行政の実現にとって重要なことは、個人のプライバシー保護の問題だ。
各行政が、いずれにせよコンピュータをオンライン化すれば、個人情報の漏洩問題は避けられないとも言われている。「どこまで便利にするのか」という問題は、「どれだけ個人情報を危険にさらすか」という問題を必ず含んでいる。
 どういうサービスを、どの程度まで求めるのか。近い将来、府としても府民の意識調査も含めて、対策を講じられるよう要望する。




■ 自立共生

 新しい行政システムの重要な柱である「行政の福祉化」、「行政のNPO化」について伺う。


行政の福祉化

    私たちは、かねてから行政の福祉化、つまり、府関係施設を障害者・高齢者の福祉活用や、公務労働や委託事業を、福祉雇用や就労訓練の場に転換することを進めてきた。
大阪府が「行政の福祉化促進プロジェクト報告書」をまとめられたことは評価したい。
 大切なのは、公務労働として行っている仕事、第3セクターが受け持っている仕事の中で、高齢者・障害者の仕事に振り向けることができるものがどれだけあるか、ということである。
こ の総点検が大切である。
 また、行政の福祉化は、府有施設の活用の面でも進めていく必要がある。これは施設の有効活用にもつながるものだが、様々な課題がある。
 例えば、府営公園の管理は全て公務労働でなければならないのか。また、府が、毎年、一般会計から2億2000万円を投入している「花の文化園」をはじめ公の施設の事業目的のあり方についても徹底した見直し・点検が必要だ。
 こうした公の施設のあり方とあわせて、大阪府が第3セクターや民間企業に委託している業務などについても見直しを行い、知事が示した「新しい行財政計画」の中で具体化されることを求める。


○ 太田知事 ○
 行政の福祉化は、「自立支援型福祉社会」を実現するための重要な政策であると認識している。

○ 健康福祉部長 ○
  障害者の雇用・就労機会を創出する観点で、府関連施設の維持・管理や清掃など業務全般の点検に努める。
府が公共事業を発注する際の障害者雇用への配慮について研究・検討を進めたい。
 府関連施設の福祉的活用について、引き続き具体的な推進方策を検討し、府有施設の事業目的や管理のあり方についても検討していきたい。



行政のNPO化

 行政のNPO化について提案する。
 NPO・非営利団体は、公益的な活動を行うという点では、行政とのパートナーである。
組織面でも活動面においても、行政と異なった特質を持つNPOが、行政と相互に補完し、それぞれの特質を最大限に生かしながら府民に公共的サービスを展開していくことが、本来の望ましい姿だ。
 例えば、子どもの虐待問題で、相談・予防・心理的ケアなどに、すべて子ども家庭センターをはじめとする公的機関が対応できるかと言えば、疑問だ。
 親の虐待によって幼い命を失った子どもたちの事件のほとんどを、公的機関はあらかじめ察知していた場合が多い。
 しかし、単なる法的不備で対応が遅れた面もあるが、後手後手になり、臨機応変になれないのは、公務員組織の体質的なものだ。
 NPOのような民間団体と連携し、場合によれば、大胆に事業委託した方が、効果的な面もある。
 今後の子ども家庭センターのあり方も含めて検討を求めたい。
 また、この10月から、65歳以上の方々からの介護保険料の半額徴収が始まった。
この相談、苦情に対する体制整備は、万全を期されているのだろうか。ケースバイケースでNPOや地域福祉組織への事業委託なども検討すべきである。
今後の多様な住民のニーズや諸問題を考える時、児童虐待防止や福祉相談とチェック活動に限らず、不登校対策、子育て支援、自然環境保護など、様々な分野で、公務員組織が行うより、NPOなど民間団体が行った方が、より効果的で利用者に喜ばれる場合もたくさんある。
 単なる補完的なものではなく、いわば事業の主体として、事業委託する手法も含めて、積極的に進めるべきだ。


○ 健康福祉部長 ○
 児童虐待については、立ち入り調査、一時保護、親子分離など公権力の行使に結びつく部分は委託できないが、啓発、相談、早期発見等の予防活動や、被虐待児や保護者の心理ケア、家庭復帰後の支援といった、NPO民間団体の幅広いご協力が期待できる分野もある。また、NPOなど地域に根ざした福祉団体との連携も有意義である。併せて、具体的な方策を検討してまいりたい。

○ 生活文化祉部長 ○
 本府では、NPOを行政のパートナーと位置付け、協働関係の構築に努めることとしており、NPOのマネジメント能力の向上も図っている。 今後、幅広い分野での行政サービスについて、事業委託が実施できるよう検討を進めたい。



■ 府政創造


 太田知事、行政改革は単なる現状の縮小コピーではなく、新しい行政システムの創造だ。
 「IT革命」と「アウトソーシング」くらいは、このごろ流行で、誰でも口にする。大切なことは、こうしたことを通じて、私たちが、どんな社会を創ろうとしているのか、どんな社会を目指すのか。
それは、まさに「この国のかたち」にかかわる問題だ。
新しい自治のかたち

   重要なことは、電子府庁や行政の福祉化、NPO化を進めて、住民の参加と自己決定権を拡大すること、新しい発想の開かれた行政を創造することだ。
 NPOとの協働によって、住民の行政への直接参加が、飛躍的に拡大する。
 単に選び、求める対象としての行政から、住民自身も、提案し、政策決定に関与し、自ら参加して共に行政を創りあげる。それは新しい自治のかたちであり、新しい民主主義の形態であり、それこそが、大阪らしい、日本らしい、助けあう心、お互い様の心を育てることにつながると確信している。
 知事は、先日、「新しい行財政計画」を作ると表明された。現行の財政再建プログラムの3ヵ年の緊急対策期間を来年度で終える。
 今の財政再建プログラムの収支見通しは、いわば一般会計の帳尻合わせだが、今日では、企業会計の危機的な状態が深刻だ。
 企業会計の見通しも含めて、この際、大阪府の財政の基本方向について、明確な方向性を示すべき時だと考える。


○ 太田知事 ○
 府民にとってもIT化やNPO化は行政サービスの向上や府民の参加と自己決定の拡大による住民自治の強化が図られるなど、様々な効果が期待できる。
 また行政の福祉化は障害者や高齢者の自立支援につながる。これらを踏まえた行政システムのあり方についても、検討したい。



大胆な定数削減計画

 この時に、とくに重要なのが、府職員の定数計画だ。
 財政再建プログラムは、平成10年度当初の、一般行政部門1万6400人を、10年後の、平成20年までに、2200人減らして、1万4200人に定数を削減する計画だ。
 しかし、電子行政の推進、NPO法人の発足、行政の福祉化プログラムの策定や民営化の動向など、新しい諸条件を加味して、さらに思い切った定数見直しが必要となっている。
 平成13年当初見込みで1万5700人の一般行政部門職員数を、平成23年、つまり団塊の世代が退職した時に、何人の体制を目指すのか。
 明確な目標を設定すべきである。
 私たちは、当然ながら、公務員の首切り、解雇などには、絶対反対だが、平成23年までに、現在の職員の約4割以上が退職を迎える。
 今が絶好のチャンスである。
 大胆な定数削減を含む、新しい職員の配置計画を、今後予定されている「新しい行財政計画」の中で、ぜひ示すべきと考える。
 いずれにせよ、ここ10数年の間に、約4割以上の職員が退職し、数千名の職員を新規に採用しなければならないことになる。
 その場合、職員の年令構成を平準化する意味でも、今後、毎年、平均して数百名単位での計画的な職員採用を行うべきことを、合わせて要望する。


○ 太田知事 ○
 新しい行財政計画については、府庁におけるIT化の推進や、行政の福祉化、そしてNPOなど民間の能力を活用したアウトソーシングなどを大幅に取り入れ、より一層適正な定数管理計画を明らかにしてまいりたい。



未来への責任

 来年示される行財政計画は、10数年後の大阪府政に対する、私たちの「未来への責任」である。
 また、それは同時に、今後の少子高齢化の中で、頑張ってもらわねばならない次の世代の人たちの負担を少しでも軽減する「未来への贈り物」でもある。
 私たちは、それこそが太田カラー、太田色、あなたの選挙公約のポリシーではなかったかと思う。




■ 教育改革


 いじめ、不登校、学級崩壊など、教育の現場は深刻な状態にある。物質的な豊かさを得た反面、他人への思いやり、他人を信じる心、物を大切にし慈しむ心など、誰しもが持ち合わすべき、やさしい「心」が失われつつある。
 日本の将来を考える時、今、教育は大きな岐路に立っている。家庭・地域・学校の相互連携のもと、個性や創造性に満ちた心豊かな人づくりのための教育改革こそが、真に求められている。


特色ある府立高校 

 府立高校の特色づくり・再編整備も2年目に入った。
 昨年の対象校は、この1年間の取り組みを通じて、改編する学校や再編整備の対象校が、どのように変わりつつあるのか。また、柔軟な教育システム、開かれた学校づくりなど、新しい学校のモデルとなるための基礎がどのようにできつつあるのか。
 最初の再編対象校の成否は、今後の教育のあり方にも大きく影響する。素晴らしい学校となるよう、施設整備や運営体制づくりなどに、全力を傾注すべきである。
 さらに、府立高校が大きく変わろうとしている今、中学校側の認識や教育のあり方を見直すことが求められる。
 来年春から、福井高校、長吉高校、門真なみはや高校、枚岡樟風高校が、それぞれ普通科総合選択制、単位制高校、総合学科として新校1年生の募集を開始する。
 中学生が、自分にあった最適な高校を選択できるようにするためには、中学校の先生がそれぞれの高校の特色を十分理解し、正確な情報を生徒や保護者に提供することが必要だ。


○ 教育長 ○
 地元中学生へのアンケートや地域の商工団体との協議など、開かれた学校づくりに向けた新しい試みを実施する。
 2学期制や学年を越えた選択制の導入等、新しい学習システムの様々な工夫を行い、さらに、特色ある学校にふさわしい入学者選抜の改善等を行うこととしている。
 新たな教育活動の展開に必要な人材配置や施設設備、運営体制などの条件整備を重点課題として取り組んでおり、予算案をお願いしている。
 中学校での進路指導にあたっては、より一層の的確な指導のため、担当教員への説明を充実するほか、中学生に対する各学校の特色をわかりやすく説明した入学案内等の配付や体験入学を実施する。



実学重視の学校も

 高校の特色づくりを進めるにあたり、「中途退学」の問題は避けて通ることはできない。大阪では、全生徒の3%前後、全国で3番目と高い数値で推移している。
 特に中退の多い学校については、不本意入学や学力の不十分さなどにより、学校に対する生徒の期待や意欲が低く、現状の取り組みだけでは限界がある
 これらの学校においては、生徒の意欲や関心を高めるためのカリキュラムや、学校運営の改革を、従来の高校教育の枠組みにとらわれず、大胆に進める姿勢が必要だ。
 例えば、座学中心の授業から、実習や実技を大幅に取り入れた体験型の学習の導入や、学外での実習や福祉体験を単位認定し、社会との係わりの中で意欲的に学ぶ姿勢を培う。職業能力開発校や技能系の専門学校とタイアップして、手に職をつけるような学習も選択できるようにするなど、実学を重視した「生きる力」を育む視点を取り入れた、改革を行うべきだ。


○ 教育長 ○
 中退防止と再チャレンジについて、相談体制の充実を図るとともに、自然体験・就業体験等の体験的な学習や多様な選択科目を取り入れたり、在籍校以外の様々な学習の成果を高校の単位として認めるなど、生徒の興味・関心に対応した教育活動の工夫改善、教育課程の改革に努めている。
ご提言の趣旨を生かし、府立高校に入学した生徒が中途退学に至ることのないよう、各学校での取り組みを積極的に支援してまいりたい。



やり直しできる教育

 中退はすべて悪であるという考え方も改める必要がある。
一度、実社会に出た上で、もう一度チャレンジすることも立派な人生である。
さらに、自分の興味・関心に合わない学校を中退し、やり直すことも、一つの選択肢として認められるべきであると思う。
そのために、適切な相談体制の充実や、新たな気持ちで再度チャレンジしたり、学びたくなった時に自分のペースで学習できる、新しいタイプの高等学校の設置や転編入の弾力化など再チャレンジや、やり直しの可能なシステムも整備することが必要であると考える。


○ 教育長 ○
 再チャレンジができるシステムを幅広く整備することも必要である。
今後、転学や編入学の弾力化を一層進めるとともに、中途退学者が学びたいときに学べるような、午前の部や午後の部を備えた新しいタイプの定時制の設置なども視野に入れながら、多様な再チャレンジの制度を整備してまいりたい。



障害児教育の改革

 障害のある子どもたちの自立や社会参加を図るためには、地域社会において、障害のない人とともに学び、育つということが大切である。
 大阪府では、こうしたノーマライゼーションの理念を実現するための教育について、小・中学校でどのように進めてきたか。
 近年、小・中学校の養護学級に在籍する児童生徒が、漸増する傾向にあり、その中には重度の障害のある子どもたちも多く在籍している。
 府は単独で重度加配教員を配置しているが、ともに学ぶ教育の充実のためにも、障害種別の養護学級設置を進めるとともに、現行の国の学級編制基準を、養護学校並みに改善を図るべきだ。
 小・中学校では取り組みが進んでいるが、高等学校では、「ともに学ぶ、ともに育つ」という基本理念が具体化されていない。
 身体障害の生徒は、受験上の配慮もあり、高校に多数在籍しているが、知的障害がある生徒は、入学が困難な状態にある。
 3月の我が会派の代表質問でも質問をしたが、その後の知的障害のある生徒の受け入れの在り方についての検討状況について、答弁を求めたい。
 今年は、文部省によって、半ば強引に、養護学校が義務化されて20年目の年である。
 20年前には、障害児教育の蓄積も未熟であったと思うが、様々な経験と実績を経て、大阪からぜひ新しい取り組みを始めていただきたい。


○ 教育長 ○
 近年は本人や保護者のニーズに基づき、養護学級に在籍する児童生徒が増加し、重度や重複障害のある児童生徒が就学するケースも多くなっている。
 国に対し、現行の養護学級編成基準の改善を強く要望するとともに、障害の状況に応じた養護学級の設置を計画的に推進するなど、一層の充実を図りたい。
 「知的障害がある生徒の後期中等教育の充実方策」について、中間的な提言をいただく予定であり、この提言をふまえて適切に対処してまいりたい。



教員の意識改革

 教育改革を進め、教育の充実を図るためには、校長の学校経営におけるリーダーシップの向上と教員の意識改革が不可欠である。
 教育改革の牽引車たる校長には、教育に対する情熱や識見はもとより、学校という組織の経営者としての哲学や、構想力、実行力が求められる。
 また、教員の意識改革のためには、教員に対する系統的な研修のシステムが必要であるが、さらに教員が企業等で研修を受けたり、学校に広く地域の人材を招くなど、学校外との交流を活発に行うことも重要となる。
 さらに、学校に外部の新しい発想や教育力を取り入れることにより、学校の活性化を図ることができるよう、昨年度から始まった人材バンクの事業をさらに充実し、学校を刺激することが必要だ。
 教育委員会として、学校現場における社会人の活用が本当に根づくよう、一層の努力を求めたい。
○ 教育長 ○
 教育改革の推進にあたっては、校長のリーダーシップと、全教職員の一層の資質向上、意識改革が求められている。
 また、外部の人材を迎えることは、学校の活性化にも重要なことと考えており、今後とも教職員研修の充実を図るとともに、学校支援人材バンク等による学校教育の活性化がより一層進むよう努力してまいりたい。



特色ある私学教育

 大阪を担う人材をどのように育成していくか、これは公立・私立ともに重要な課題である。  そのためには、公立高校と私立高校がお互いに競い合い、協力しながら、より良い教育を提供できるよう努めねばならない。
 府立高校では、高校の再編整備と特色づくりを進めている。
 私立高校でも、特色ある学科・コースの設置など特色・魅力づくりに取り組むとともに、人件費をはじめとする経費の節減に努めるなど経営努力を進めてきた学校も多いと聞いている。
 しかし、私学全校平均で赤字となっていることや、生徒確保などの点で学校間に差が生じていることなどを考えると、生徒減少を見通した、経営努力を怠ってきた学校も多いのではないか。
 また、7対3の公私の受け入れ比率に関しては、私立高校への比率を高め、6対4にするといった議論もあるやに聞いている。
 しかし、大切なのは、私学自身の特色ある学校づくりを進めるなど独自の努力である。
「枠を増やす」という安易な方法では、私学自身の経営努力をなくしてしまう結果にもなりかねず、それは、私学の発展や利益にもつながらず、府民の期待に逆行するものだと指摘しておきたい。
 さらに、今後とも、引き続き生徒が減少することは明らかであるので、各私立高校が自ら抜本的な経営改革を行い、公立高校を上回るような特色・魅力づくりに努めなければ、経営そのものが困難となる学校が生じるだろう。
 今後、府として、どのように私立高校に対し改革を促しながら、魅力づくりを進めていこうとしているのか。


○ 太田知事 ○
 私立高校自らの抜本的な経営改革や、情報開示への積極的な取り組みなどを促す。それとともに私立高校の魅力づくり・特色づくりをより一層支援できるよう、財政状況も踏まえ、私学助成の再構築に計画的に取り組んでまいりたい。



■ 男女協働

男女平等へ条例制定

 「男女共同参画社会」の実現を目指した条例が、自治体で相次いで制定されている。
 大阪府では、知事が、男女協働社会づくり審議会に諮問し、女性の地位向上だけでなく社会システムを、21世紀型に転換するためにも必要であると表明している。 
 初の女性知事として熱意に期待したいとは思う。拙速に制定するよりも、男性を含めて、府民との意見交換を密にし、制定の過程をオープンにした作業を望みたい。
 私たちは、条例の名称は、「男女平等条例」とすることが、府民にとって、もっとも解りやすく望ましいと考える。
 内容的には、事業者の責務を明確にすることが重要。女性への暴力、セクシャルハラスメントなど、人権侵害の問題や性別を理由とした差別が、職場などに存在しており、事業者責任は不可欠である。
 さらに、女性に対する暴力を根絶するため、各関係機関の義務を盛り込み、オンブズパーソン制度や苦情処理と監視機関を盛り込むことも、ぜひ検討すべきと考える。


○ 太田知事 ○
 この条例が、固定的な役割分担の解消や女性に対する暴力の根絶などの重要な課題の解決に向けた指針となるよう、ご審議をお願いしている。
 今後その答申を踏まえ、幅広い府民のご意見をお伺いし、十分検討してまいりたい。



ドメスティック・バイオレンス

 夫や恋人など、親密な間柄で繰り返される暴力、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)対策について伺いたい。
 ますます潜在化し、命に関わるような深刻な事件も起きている。大阪府警の調査によると、昨年の検挙数は、41件だが、今年は、半年だけで、相談件数485件・検挙数42件と2倍に増えている。
 国の「男女共同参画審議会」は、DVをなくすため、新たな法制度を検討すべきであると答申した。 答申は、身体的な暴力のほか、性的、心理的な行為も、女性に対する暴力と位置付け、公的関与が十分でなかったと指摘している。
 新たな法制度を含めて幅広く対応策を検討すべきと、参議院では、超党派の「女性に対する暴力に関するプロジェクトチーム」が設置された。
 また、府内各地で、女性たちが、緊急避難場所としてのシェルターを立ち上げている。民間のシェルターとも連携し、DV防止策を、早急に具体化すべきである。
 警察、病院、保健所、こども家庭センター、女性相談センター、女性自立支援センター、市町村の福祉部局・社会福祉事務所、母子生活支援施設、さらに学校など教育機関など、関係機関の対応実態を把握し、新たな公的支援のあり方を国に先駆けて検討すべきだ。


○ 太田知事 ○
 夫やパートナーから女性に対する暴力は、決して許されるものではない。未だ個人の問題に矮小化されており、その予防から自立支援までの総合的な対策が必要だ。
 関係機関で協議したい。



政策決定への参加

 現在、大阪府では各種審議会への女性登用率は22.9%であるが、府の目標、25%を達成されていない。早期達成を図るとともに、目標率を30%程度に引き上げるべきだ。
 また、委員も固定化し、高齢化の傾向があり、新しい人材を登用する必要がある。担当部局が目標を決めて取り組むべきだ。
 また、ドーンセンターには、女性の人材バンクが設置されているが、活用されていない。
 30%を目指し積極的な検討を要望したい。




男性職員の育児休業

 現在、法的には、夫婦、男女で12ヶ月間の育児休職が可能になっているが、実際には、ほとんどの場合、女性が取っている。
 ちなみに、府の男性職員の育児休業取得は、1年間で1件あるかないかというのが現状だ。  今後、男女協働社会の実現や少子化対策に、全庁あげて取り組もうという時、実に残念な実態と言わねばならない。
   男性職員が育児休職を選択しない原因としては、30歳前後の、ある意味では最前線のポジションにいるので、「昇進、出世に差し障りがあるんじゃないか」という心配や、「取りたいが、職場の雰囲気で言い出せない」という声もあり、職場環境の整備も必要だ。
 例えば、夫婦がともに府職員の場合には、どちらも最低1ヶ月は育児休職を取るようにすることも一手だと思う。そうすれば、男性職員でも最低1ヶ月は育児休業を取るようになるだろうし、この経験は、必ずやその後の仕事にも生かされ、府政にとってプラスになるはずだ。
また、育児休職が昇進などで不利にならない、むしろプラスになる方策も検討すべきだ。
 こういう事こそ、まず府の公務員が率先して取り組み、見本を示すべきだと思う。


○ 太田知事 ○
 本府において、男性職員の育児休業取得は極めて少ない。私自身、残念なことだと考えている。
男性が育児に積極的に参加することは非常に大切である。育児における様々な体験は職員にとっても、府民サービスの向上を考える上で、貴重な財産、資質の向上にもつながる。
今後は、男性職員が、たとえ短期間であっても、育児休業を取得できるように、私からも呼びかける。



■ 都市再生



  都市再生包括交付金

 大阪府内の内陸部、インナーエリアの再生は、大阪府にとって重要課題である。
     戦後の高度成長期につくられた「府外から人を受け入れるための街」から、「ふるさととして住む街」に変える。
 私たちは都市部でこそ、公共事業が必要であると考えている。
「都市包括交付金」と新制度を提案している知事の提案を高く評価し、実現を目指して、他府県と連携して頑張っていただきたい。




府営住宅の福祉活用

 都市再生を考える時、公営住宅のあり方、成長期に建設された公営住宅の再生は、大きな課題となっている。
 大規模住宅では、様々な問題が生じている。府営住宅や公団賃貸住宅が密集する大規模団地では、教育問題も深刻だ。
 建て替えの前倒し、団地の一部を福祉や教育施設に転用したり、または合築するなどの対策も必要である。
 また、建て替えにあたって、多様な層が混住する街として再生させるために、一部を民間住宅にする措置も検討すべきだ。
さらに、入居者の高齢化が著しいもとで「ふれあいハウジング」方式を導入した住宅の建て替えなど、市町村と連携し、地域福祉に貢献する府営住宅構想を、ぜひ充実させるべきであると考える。


○ 建築都市部長 ○
 これまでも大規模団地などの建て替えにあわせて、社会福祉施設や社会教育施設の導入に努めている。お示しの既存住戸の福祉施設等への転用については、地元市町村等の要望を踏まえ、国とも協議しながら具体的に検討してまいりたい。
「ふれあいハウジング」の普及等については、その推進に努め、市町村の福祉政策と連携した高齢社会にふさわしい府営住宅団地の形成に努めたい。



期限付き入居

 現在、府営の公営住宅は、約13万戸。依然として、応募倍率が常に高い状況にあり、入居できた人と入居できなかった人の住宅費負担と居住水準の格差は大きい。
 公営住宅は、収入基準によって入居資格を判定しているが、府営住宅を安住の地として長期にわたって住み続けることは、それだけ府営住宅の恩恵を、長期にわたって受けていることなり、多くの入れない人から見ると不公平感を持つのでないか。
 公営住宅の入居に際して、期間を限定することは、現行法上困難な面もあるのは事実だが、例えば、収入増加が期待される新婚世帯の入居に際し、導入することも1つと考えられる。  色々な課題もあるが、公営住宅に入居できない人から見た不公平感を解消するためには、入居期間の限定も必要だと思う。
 公営住宅法の見直しを含め、検討すべきであると考える。


○ 建築都市部長 ○
 期限付き入居制度の検討については、今後の社会経済情勢や住宅事情の動向を見定め、慎重に対処してまいりたい。



自動車の流入規制

 自動車保有台数は、376万台にも達しており、交通渋滞や違法駐車による都市機能の低下や、大気汚染を始めとする自動車公害をもたらし、大きな社会的、経済的損失となっている。  この問題に対処し、都市機能を再生するためには、渋滞を解 消し、自動車のスムーズな走行が重要である。  駐車場の整備や、交差点の立体交差化を始め必要な道路建設は推進すべきだが、道路と車の追いかけっこのような発想だけでは、問題の解決にはならない。  例えば、マイカーについては、奇数日は奇数ナンバー車、偶数日は偶数ナンバー車というように、ナンバープレートにより、車両が対象区域で走行することを禁止、または制限する、「ナンバープレート規制」や、一定の混雑地域に流入する車に課金するというロードプライシングなどが、有効な方策である。  こうした流入規制の試みは、以前から指摘はあったが、関係機関の足並みが揃わず、掛け声だけに終わっている。
社会生活や経済活動に及ぼす影響や環境改善効果を把握するための社会実験すら行われていない。  府では、環境への負荷の小さい公共交通機関と自動車を調和させるパークアンドライドや、時差通勤の呼びかけなど、交通需要マネージメント(TDM施策)が推進されている。
 近畿地方建設局や警察本部など関係機関との連携を図りながら、自動車の流入規制やロードプライシングなど思い切った交通量抑制策の社会実験を行い、都市機能の再生を図っていくべきである。


○ 土木部長 ○
 ご提言いただいたナンバープレート規制等の方策は、交通量の抑制には効果的であるが、府民生活や経済活動に与える影響も大きく、府民や関係機関の合意形成、規制方法や料金の徴収方法など課題もある。
 国及び阪神高速道路公団をはじめ関係機関と、ロードプライシングなどの社会実験の導入について協議し、今後とも、交通量抑制策について幅広い観点から検討を進めたい。



都市近郊農業の振興

 都市再生において、いま1つ忘れてはならないのは、貴重な自然資源でもある農地の保全・活用など、大都市大阪における農業政策である。
 生産緑地など市街地にある農地は、農作物の生産以外に、景観作物としての花の栽培や体験農園としての活用など、都市住民と農業を結びつける役割を果している。災害時の避難地として都市の防災空間の機能もある。
 市街地に近い農地は、生鮮野菜などの生産の場であり、市民農園や観光農園等として、府民にうるおいと癒しの効果をもたらす、大切なみどり空間である。
 国では、昨年、「食料・農業・農村基本法」、いわゆる新農業基本法が制定され、基本理念の1つとして農業や農地の有する多面的機能の活用が盛り込まれ、都市農業の振興についても位置づけられた。
 こうした国の動きも踏まえ、大阪農業の振興を図るために、府民の多様なニーズに応え、農業者にとっても都市住民にとっても利益となるような、大都市の特色を活かした、大阪ならではの農業政策が必要である。
 さらに、府として、都市環境と調和した農業の発展を図ることは、大阪の都市としての格を一層向上させるものであり、真の都市再生につながる。


○ 環境農林水産部長 ○
 生産緑地等における積極的な農業振興策や、農業におけるIT化、自然エネルギーを活用した環境保全に対応するシステムづくりなど、農空間の保全・活用方策について、国に対し施策提案を行い、ともに研究を深めている。
これらを「新農林水産業ビジョン」に、大都市における新たな農政を先導する施策を盛り込み、積極的な展開を図りたい。



野宿者の就労対策

 1万5000人とも言われる野宿生活者の問題については、知事も現地で見られたように、愛隣地区では、高齢化・健康問題に加え、日雇いの仕事も激減し、ホームレスが社会問題になっている。
 大阪市は、市内3ヶ所に自立支援センターを設置し、職業訓練、仕事のあっ旋に取り組み始めており、府も、センター入所者の雇用促進事業を実施すると聞いている。
 引き続き、国に対し特別立法など、抜本策を求めるとともに、行政の福祉化の観点で、さらなる福祉雇用の方策を検討すべきである。




■ 国際交流

日韓の国民交流年

 6月の(南北朝鮮の)首脳会談を受けて、冷戦と南北分断の影を落としてきた歴史が、急速に和解と交流の時代へと切り替わり、日本の平和と安全にも大きな前進となっていることを実感する。
 オリンピックで、統一選手団の入場行進に、観衆が立ち上がり拍手を送った光景は、記憶に新しい。
また、8月の韓国高校優勝チームと大阪朝鮮高級学校とのサッカー親善試合の開催など、とりわけ在日韓国・朝鮮人が多数居住する大阪での取り組みは大きな流れとなっている。
 今後、南北両組織を中心に、交流事業が教育、文化、スポーツをはじめ、様々な形で取り組まれるが、府としても積極的な支援を要請したい。
 また、韓国は、日本文化に対する規制を緩和した。
 日本側も2003年の大学入試センター試験から、外国語科目に、韓国・朝鮮語を加えることを、金大中韓国大統領に表明した。
 両国の交流は急速に広がり、日韓両国は、ワールドカップサッカー大会を共催する2002年を、「日本と韓国の国民交流年」として取り組むことを確認している。すでに、韓国に近い福岡県は独自事業の検討を進めている。
 歴史的にも、在日の住民の数の多さでも、もっともつながりの深い大阪府が、全国にさきがけて、2002年・日韓国民交流年に向けた、大阪独自の事業計画を準備すべきだ。

○ 太田知事 ○
 私としても、大阪が、南北の交流と協力を深める場となるよう努めたい。
 大阪府でも、2002年の「日韓国民交流年」にふさわしい事業の計画・実施を図ることはもとより、在日韓国・朝鮮人の方々をはじめ、関係団体やNPO・NGO等と連携を図り、大きな広がりを持てるようにネットワークを強化してまいりたい。



在日外国人の参政権

 昨年の2月議会で、大阪府議会は、会期を1日延長した慎重審議の末、定住在日外国人への参政権付与に関する意見書決議を可決・採択した。まだ記憶に新しい。
 この問題は、21世紀の国際社会で責任ある役割を果そうとする国の基本的な常識である。北欧では定住3年で地方参政権は認められており、在北欧諸国の日本人も投票している。EU、ヨーロッパ諸国も法整備に入っている。
 韓国政府も、2002年から韓国に住む定住日本人の地方参政権を認めると、すでに表明している。
  大阪府内では、人口16万人の在日韓国・朝鮮人をはじめ、145カ国、20万8000人の在日外国人が、定住化している。シドニーオリンピックの参加国・地域の7割に当る。
 今後、経済、文化、スポーツなど、あらゆる分野で人的交流も広がる。
 同じ税金を払う住民として、日常生活に直結した地方自治体のあり方や方向性について、選択したり、異議を申し立てたりする権利は、当然認められるべきである。それが世界の常識でもある。
 こんな事すらガタガタと大騒ぎをする体質こそ、世界の疑念を呼び、大阪オリンピック招致への悪影響も心配だ。
 また、私たちの議員の定数も、住民人口によって割り当てられている。
例えば、多住地区である生野区では、20歳以上の外国人登録人口は2万5000人。生野区の人口の約20%を占めているにもかかわらず、投票する権利が保障されていない。
 実に、不可思議・不合理だ。
 21世紀に、日本が国際社会の一員として、国連の常任理事国を目指せという声すらある時、地方参政権問題を、憲法違反だとか、特別永住者と家族・子孫に限るという議論も、実に情けない限りだ。
 また、例えば、民生・児童委員や人権擁護委員の選任について、「選挙権を有するもの」との規定がある。 国の法律が改正されるまで、それに替わる制度、民生・児童委員や人権擁護委員に準ずる相談員制度を検討すべきと思う。
 介護保険でも、在日韓国・朝鮮人に限らず、中国やブラジルなど、言葉に対応できるケアマネージャーの育成、街かどデイハウスの開設なども合わせて要望したい。


○ 太田知事 ○
 定住外国人の方々が、身近な地方行政にその意思を反映させたいと望まれる気持ちは十分に理解できるところであり、国会での法案の審議動向を注意深く見守ってまいりたい。





■ 動物愛護

 9月20日から26日は『動物愛護週間』だったが、今回は、特別の意味があった。
 核家族化、少子・高齢化が進むなか、ペットは心の支えとして、家庭で飼われることが多くなり、その反面、動物が不適切な取り扱いを受けたり、虐待行為や不当に捨てられることも増えてきた。
   そこで、昨年12月、動物愛護法に改正された。これは単に、「管理」から「愛護」に、名称変更しただけでなく、法律の基本原則自体の大転換であった。
     新法は、動物を命あるものとして扱い、みだりに殺し傷つけたり、苦しめないように、その動物との共生に配慮せねばならないと定めた。
 動物の販売業者等に対して、届け出を義務づけ、管理に問題がある場合には、立ち入り検査、改善命令や違反には罰則を課すことができる。
 また、動物所持者責任、つまり飼い主に対しては、動物愛護の自覚を持って接し、繁殖制限の責任が義務づけられた。
 みだりな愛護動物の殺傷には、100万円以下の罰金、又は懲役1年以下の刑、水や食事を止めることにより衰弱させる等の虐待を行った者は、30万円以下の罰金。愛護動物を遺棄したものは30万円以下の罰金となった。
 なお、都道府県は、民間の獣医師や愛護団体の構成員等に「動物愛護推進員」を委嘱するものとされている。
 この改正された法律の施行日は、本年の12月1日。国は、法施行までに1年をかけて、各自治体が動物愛護行政へ発想の転換を行い、住民に啓発・宣伝し、行政の体制を整えるよう要請したが、残念ながら、大阪府は、ほとんど何もしないで迎えようとしている。
怠慢としかいいようがない。
 動物単位で業務が別れている点。法改正で、動物取り扱い者の規制や教育機関での働きかけ等、新たな業務が追加されたのに取り組んでいない点。動物を保護する施設がない点。条例制定への取り組みがされていない点。大阪府は、大きな反省の上に立って、これらの点について、早急に関係部局の検討を行い、動物愛護条例の制定と体制整備を行うべきである。
 「家族は、夫と愛犬の3人」と公言されている知事の基本姿勢を伺いたい。


○ 太田知事 ○
 動物の愛護および管理に関する法律の交付以来の本府の取り組みには、不手際もあった。適切に対応するため、今後所管業務の一元化など必要な体制整備を行う。
 動物の適正で安全な管理を図り、人と動物の共生に向けた動物愛護行政を推進するため、新しい条例を来年の2月定例会に提案できるよう努めたい。動物保護施設の整備等についても、十分検討したい。



スピーディな決断

 最後に、私たちは、自立と共生の社会づくりに向けて、様々な質問と提案を行ってきた。  今日、大切なことは、発想の転換とスピーディな決断と実行だ。  知事および理事者の率直なご答弁をお願いして、民主ネットワーク議員団を代表しての質問を終わる。



■ 質問者 冨田健治
民主ネット議員団副幹事長 大阪市旭区選出

*この質問へのご意見・ご質問をお寄せください。 電話06(6941)0219 / FAX06(6941)8411

民主ネット議員団控室