1999年10月
中村滝男著
著者は、高知で長らく、野生動物の生態調査や地球環境の保全、再生に関わってこられた
人である。その人の、高知でのメダカ探しからこの本は始まる。
村人からの情報でメダカ取りに行ってみると、たいていは、ハヤやオイカの小魚、それにカ
ダヤシだという。メダカがなかなか見つからない。ついに高知新聞に
「メダカのいる場所を教えて下さい。」
という記事まで出してもらう。
「えっ?高知でもメダカが少ない?」
とまずは驚く。それで、やっとわずかに残っていたメダカの居所をつかむが…、その居所も
「あと1年でコンクリートの水路に…」
「高速道路の予定地なので…」
「造成工事でやがて埋め立てられる…」
ばかり。
そこで、著者たちのメダカ救出大作戦が始まる。ここでの方法は、今すぐにでも全国の人た
ちに知ってほしい。絶滅危惧種メダカが絶滅種にならないためにも。
中程から、メダカの生態が興味深く語られていく。「どんな魚なんだろう?」「どこにすんでい
る?」に続いて、本の題名になっている「メダカは空をとぶ」の話。
「えっ?メダカが空を飛ぶの?」
と一瞬驚くが、やはりメダカは空を飛んでいる。このことが「空をとぶひみつ」でくわしく書かれ
ている。
最後に著者は「そんなしたたかなメダカまでもほろびそうになっている日本という国の自然
環境は、ひょっとしてたいへんなことになってはいないだろうか。」と書いている。
ポプラ社 950円+税
これはちょっと変わった、料理と実験の本である。調味に使うものの中でもあぶらやバター
は食べ物をおいしくしている救世主のような存在にある。この本は、そのあぶらの働きと性質
について、実際に料理を作ったり実験を加えたりしながら分かり易く説いてくれている。
最初は、「たのしいあられ作り」から入る。ここではまず「おいしいあられ作り」について、【材
料・道具】、【作り方】を書き、くわしい【解説】がある。この「解説」がなかなか簡潔で要を得た
書き方をしていてわかりよい。料理を体験しながら、ちょっと知識が増えることがうれしい。さ
らに、囲み記事で〔油と脂〕の話が入ってくる。〈油〉と〈脂〉、今まで、あまり深く考えたことがな
かったが、「なるほど、そういう意味が込められているのか」と納得させられる。
次は、「あぶらは生き物から」の話。ここでは、〈サラダ油の観察〉から始まる。サラダ油とい
っても、各種各様のものがあるが、それぞれについて、実験で確かめながら性質を調べていく。
ここでも【結果と解説】で、ぐんと知識が増える。次は、あぶらの絞り方をならってラード作りに
挑戦。これもなかなかおもしろそうだ。
あと、「マーガリンとバター」でうす焼き卵作り、「食卓でテンプラ」でおいしいテンプラ作り、
「いろいろなものを溶かすあぶら」でギョウザ焼き、「水とあぶら」でドレッシング作りにと続く。
この本は、あぶら調理に関する科学書と同時に実用書である。
さ・え・ら書房 1,300円+税
西村寿雄(科学読物研究会)
「1999年10月」へ