新刊書評

             『かさぶたくん』
             『あさがおのつるは「右まき」「左まき』

『かさぶたくん』
やぎゅうけんいちろう・さく
 久々に〈科学の本〉にふれることができた。この本は、1997年に一度「かがく
のとも」の一つとして出版されている。それが、今回ハードカバーをつけて新版と
して再出版された。
 わたしのいう〈科学の本〉とは、たんに自然に関するものを解説しているだけの
本ではない。読者(子どもたち)が、
テーマを持って問いかけ、何人かで意見を交わし、いよいよどうなのかというとこ
ろで、正しい知識を得るように構成立てしたものを言う。この本は、まさにそうし
た展開になっている。
 見開きのページに
 「とりたいなあ/とりたいなあ/かさぶた/とりたいなあ」
 「とれるかな/とれるかな/かさぶた/うまく/とれるなか?」
これはだれしも経験のあること、ここでかさぶたへの思いが広がる。
 「かさぶたは/むりに/とったら/だめなのよ。」
と、お母さんの声。そこで、
 「「かさぶた」って/なにで/できているの?」
と問いかけられ、それぞれの子どもたちの考えがつぎつぎと出されてくる。
 ・「ち」のかたまりじゃないのお
 ・「ごみ」でできてんじゃないのお
 ・「にく」のかたまりじゃ
 ・「かみ」かなぁ
 ・「きずのうんこかもしれないぜえ
などの意見を出し合い、言いあいっこの後一つの答えを提示する。
 「かさぶた」とははたして何でしょう。幼児といっしょに読める(大人が読んでも)
楽しい〈科学〉の本だ。 
 同様の本に同じ著者の『おへそのひみつ』がある。
                     福音館書店 838円  2000,1,20
 
『アサガオのつるは「右まき?」「左まき?』
七尾 純著
 この本は、身近な問題を追求していく筋道をていねいに追って、調べることの楽
しみ方を伝えている。ことの発端は、著者が本屋で見つけた一冊の本マルチン・ガ
ードナー著『自然界における左と右』である。そこに「サンシキヒルガオ属は常に
右まきのらせん形になる。アサガオもこのなかまである。」と書かれていた。
 このとき著者は、十数年前に当時小学一年生だった自分の娘さんと「アサガオの
つるは右巻きか、左巻きか」で、ずい分調べたことを思い出した。
 当時の定説では「アサガオのつるは左まき」とされていたが、これは見方によっ
てまるきり正反対になる。
 当時、娘さんは、「どう見てもアサガオのつるは右まきに見える」と主張したので、
著者も一緒になって、いろいろな植物図鑑などで調べていく。はてはカタツムリ、
海の巻き貝、台風の目、時計などにも、次々と「右巻き」か「左巻き」か調べてい
った。そして、結局、見方の違いで「右巻き」「左巻き」の言い方が異なってくる
こと、「アサガオのつるは左まき」という説明には無理があることなどをつきとめた。
 それが最近になって、植物学の方でも「アサガオのつるは右まき」に統一される
ようになってきたことが、前記著書にも記されている。かつての娘さんの言い分が
正統視されるようになったのである。〈科学〉というのはまさに生きて動いている
ことがよくわかる。後半部は、かなりくわしく植物学でのうず巻きの認識の経過が
記されていて興味深い。
                    アリス館 1300円  1999,11刊
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