『モンシロチョウ観察事典』
 『地震をしらべる』 茅野一郎著             

   地震についての科学的な話や地震にたいする備えなど、地震に関する基礎的な
知識を読みやすくまとめている。大災害をもたらした兵庫県南部地震も、もとを
ただせば「西日本も地震の活動期に入っている」という学者の声が十分市民に届
いていなかったことが災害を大きくしたとも言われている。その意味から言っても
この本などを読んで子どもの頃から地震についての基礎知識を十分に持っていたい。
 この本もまずは、地震についての科学的な話から始まる。「地震の性質をしらべる」
では、震度、地震計と地震観測、地震のゆれと地震の波などの解説、「地震のおこ
るところ」では、世界の地震の分布、日本の地震の分布、大地震のあったところ、
などの話がある。ここでの「震度5以上の地震が何年に1回の割合で起こるのか」
という地域図が興味深い。京浜地方や近畿中央部は50年に1度の割合で大地震
が起こっているという。
 次に、「地震はどうしておこるか」「地震をおこす原因はなにか」「地震は予知で
きないか」と話は続く。地震予知の手がかりとして、最近の遺跡発掘時における
地層面の研究が紹介されている。また、「大地震のおこりそうなところで、地殻の
のびちぢみ、かたむき、ねじれなどくわしくはかっていたら、地震の予知はでき
ないか」と予知研究の一端も紹介されている。
 この本は「環境と人間シリーズ」の一冊になっているので、後半は、「地震の災
害をなくすために」「地震にまけない家」「地震と火事」など、災害への備えにつ
いての話に入っている。最後に「東京や横浜が、今後数十年のうちに強い地震に
おそわれる確立はかなり高いのです。」と警告を発している。「明日、大地震は起
こるかもしれないのです。」という言葉の重みを読みとりたい。
                     小峰書店、1300円+税、1999,12刊
                                         
        
 ◆『モンシロチョウ観察事典』  小田英智文、北添伸夫写真
 
 この本は、昨年の夏発行になっているが、やがて春を迎える今の時期に紹介す
ることにした。モンシロチョウに関する本は多く出ているが、この本は、最近の
研究成果の導入と、このシリーズ特有の際だった接写写真が魅力的である。
 この本でまず目を見張るのは、近年の研究成果による興味深いモンシロチョウ
の生態である。初めにある「メスをさがすモンシロチョウのオス」「交尾と交尾拒否」
の項がおもしろい。オスが交尾しようとしてもすでに交尾を済ませたメスは、「尾
を立てるようにして、オスの交尾を強く拒否します。」とある。写真でも紹介され
ているが、ぜひこの目でメスの交尾拒否の姿を確かめてみたい。
 オスとメスの区別もモンシロチョウにしてみればいとも簡単だという。紫外線
の反射で見るとモンシロチョウのオスは黒く見えているとのこと、紫外線カメラ
でも普及すれば面白いだろうなと思う。紫外線に感光するフィルムを使うとアブ
ラナの花も、チョウの目で見ることが出来て楽しそう。
 「花とモンシロチョウ」の項では、「チョウの花の記憶は3日間ほどのこってい
るそうです。」とある。どんな実験からこんなデータが出てきたのか興味をそそら
れる。こんな小さなチョウにもちゃんとした学習能力が備わっているという。
 最近、スジグロスジチョウが都会に進出してきているという。地球環境の変化
がチョウの世界にも影響しているのだろうか。これからも注意して観察したい。
 さらに、オオモンシロチョウの日本侵入もあるという。チョウの世界もなかな
か流動的だ。 
 その他、蛹から幼虫の写真は見事。チョウの幼虫が別物に見える。
                    偕成社 2400円+税1999,6刊
 
                      「2000年2月へ」