書評  『ウンチをしたのはだ〜れ?』『網をはるくも』

『ウンチをしたのはだ〜れ?』
 石原誠著
 
  ちょっと気楽に野生動物に親しめる本が出た。最近は、この手のアニ
マルウオッチングに関する本もたくさん出ている。しかし、いずれも全体
的、総合的に書かれていて子どもたちが読むにはちょっと手ほどきが必要
だった。ほとんどは、動物の足跡とか、鳴き声、糞、食べた痕跡などをも
とに、特定の動物を調査する内容が主であった。
 しかし、この本は、最も目に付きやすい動物の糞に焦点を当てて、一つ
のウンチから、その「主」をさぐっていくという手法をとっている。
 まず、空き缶の上で見つけた一つの糞から話が始まる。
「ほかにもないかさがしてみよう」
と、探求が始まる。すると、意外と
「石ころ、根っこ、ゆうほ道のかいだん、ベンチ…。」
と、たくさん見つかる。やがて、
「どのウンチにも、木の実のタネが入っている。」
「ウンチの色は、食べものの色なんだ!」
と気がつく。
 そして、どんな木の実を食べたのか、またまた探求が始まる。そして、
「ウンチには、どんないみがあるのだろう。」
「ウンチは「手紙」かもしれない。」
などと考える。そして、
「いったい、どんなどうぶつのウンチなんだろう?」
と、探求は続く。
 最後にその「主」の話がたくさん語られる。簡単ではあるが、写真も多
く取り入れて、興味をさそう構成の本である。
「かがくだいすき」シリーズの一冊である。低学年児から読める。
                    大日本図書 1333円+税 1999,12刊
 
 
網をはるクモ』
小田英智構成・文/難波田城雄写真
 
 ここ数年意欲的な研究の成果と写真技術を駆使して出している「自然の
観察シリーズ」の一冊で、この本も〈自然の本〉としては見事な内容にな
っている。
 「網をはるクモ」とあるが、主にジョロウグモの生態を追っている。
 「網のつくりを観察しよう」では、枠糸、縦糸、横糸の役目がわかり易
く書かれている。横糸についたビー玉のような粘液の玉が美しく写し出さ
れている。また、糸を出す腹部の写真はよくわかる。
 「獲物を捕らえるクモの観察」では、網にかかった大きな獲物をどのよ
うに捕獲していくか、連続写真で示されている。クモの鋭い牙は獲物にか
みつくだけのもので、主に消化液で相手の身体の内部を溶かして口から獲
物を吸い込むのだという。これなら、省エネでいい。
 「脱皮して成長するクモ」もおもしろい。あのような、細長い足までよ
くも見事に抜けていくものだ。
 「ジョロウグモのオスとメスの出あい」
 「ジョロウグモの交接」
も、なかなか興味がそそられる。オスは命がけでメスによりそう。
「オスは触肢の先のとがった交接器を、メスの生殖孔にさしこみます。」
とある。ジョロウグモの交接はまるでオスが口移しのようなかっこうで精
子を送り込む。拡大写真にも迫力がある。
「ジョロウグモの産卵」の項でも、産卵中の連続写真は見事というかす
ばらしいにつきる。このような場面はなかなか目に触れることはない。
 最後の「空を飛ぶ子ぐもたち」では、新たな命が次々と空に広がってい
く姿が美しく描かれている。
             偕成社 2400円+税 1999,12刊   (西村寿雄) 
             

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