わたし好みの新刊
 
『どこへいったの?トマトのにおい』
                    山口進著 
                  アリス館 1,300円 2000,3刊
 アリス館の「調べるっておもしろい!」シリーズの一つ。テーマそのものにも興
味が引かれるが、テーマに沿って次々と調べていく過程もおもしろい。
まず、トマトに関する本さがしから始めるが、テーマの答えはすぐには見つから
ない。そこで、著者は「トマトの味や臭いが変わったのはなぜか、それは何を意味
するのか」に、著者なりの見当をつける。著者は「仮説を立てる」と言うが、「見
通しをたてる」といったところ。
 ここでまた、図書館や友人の情報を基にさらに本を探り出す。
 内容的に興味が引かれるのは、まず、野菜の歴史だ。
「では、日本には、ずっと昔から、この ような野菜があったのでしょうか。」
と問いかけ、野菜の起源や歴史が調べられていく。日本人は昔は主に野草を食とし
てきた。多くの野菜の日本への伝来は意外と新しい。
 やがて、日本人には調理された煮付けの料理が始まる。こうなると、今度は「食
の文化史」を調べなければならなくなる。
「味の付いた料理へと、野菜の調理法が 変わった背景には〈米〉が主食として 
 利用されたことがあります。」
とある。日本人の野菜趣向には、米文化が影響しているという。
 ここにきてやっと、「トマトを調べる」に入る。トマトはどこで生まれたか、ど
のようにして日本に伝わってきたか、においとおいしさとの関係、青くささの正体、
トマトの栄養価など、興味ある話題が続く。
最後に著者は「形だけのトマトが世界にはびこらないよう、くさいトマトのおい
しさを、わすれずにいたい。」と結ぶ。
 
 
  『コンニャクの絵本』 
                 うちだしゅうじへん・さくらいさとみえ
                 農文協  1890円 2000,3刊
 よく食卓にも上がる、あのコリコリしたコンニャクを子どもたちは何だと思って
いるだろうか。野菜と思うだろうか。「じつは、コンニャクの原料は、おイモなん
だね。」と、鼻から答えが飛び出してくる。でも、子どもたちは
 「えっ! おいもなの?」
と、疑問の声が出てくるに違いない。
 この本は、まずはコンニャクイモの話から始まる。あのこりこりしたコンニャク
独特の感触はどこからくるのだろうか。添加物の石灰か?と思っていたが、とんで
もない、コンニャクイモ特有の〇〇〇〇という物質が作用しているとのこと、同じ
イモでもサツマイモなど澱粉質のイモとはずいぶんと違うものだ。
 そのコンニャク〇〇〇〇は、栄養もないのに「健康食品」になるという。いった
いコンニャクにはどんな良さがあるのだろうか。続きを読むと、なるほど、なるほど。
その後は、コンニャクの品種紹介や成育過程の話にかわる。
 続いて、コンニャク栽培の方法について書かれている。さすが、農業書の専門の
出版社だけに、絵本とはいえ、イラスト入りでとてもくわしく紹介されている。ち
ょっとした菜園のあるところでは、コンニャクイモ作りに挑戦してみるとおもしろ
そうだ。タネイモの入手先も紹介されている。その後にコンニャク作りの話がある。
コンニャクイモさえ手に入れば、自前のコンニャク作りに挑戦できる。
 あとは、「コンニャクでつくる精進料理メニュー」「凍みこんにゃくに、こんに
ゃくゼリー」と話は続く。
 最後にかなりくわしい解説がつく。
                            

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