わたし好みの科学読み物
『ベッドのしたには なにがある?』
               マイク・マニング、ブライタ・グランストロームさく  せな あいこやく
 
 ほぼ1年半前に邦訳出版されているが、ちょっと風変わりな本だ。科学読み物の
一つのスタイルを提供している本であるが、内容的には地球のイメージをふくらま
せている。
 表題のように
 「ベットの したには なにが あるの?」 「別途のしたに あるのは ゆか
  いた、それから  ほこり」
とあり、二人の子どもが床下をのぞく絵から話は始まる。
 「じゃあ ゆかいたの したには なにが あるの?」
 「ゆかいたの したに あるのは いろんな くだ。/でんきの せんや あったかい 
  すいどうかん。 すいどうかんの そばには ネズミが すを つくってる。」
というふうに、つぎつぎと「それだけ?」「ほかにない?」と問いが重なっていく。
 そのあと、地下鉄が出てきたり、恐竜の化石が出てきたり、石炭層が出てきたり、
そして、ついにマントルまで出て来るという筋立てである。
 この本は「問い」を左頁に、「答え」を右頁に配し、同じパターンを繰り返しな
がら、ふだんあまり考えもしない地球の下へ想像の輪を広げさせていく科学読み物
として一つの効果的なスタイルを示している。
 内容的にも、読んだ子どもたちが、「この土の下にも、いろんなものがあるんだ―」
と想像の世界をふくらませることができる自然界入門の本とも言える。
 ただ、訳本なので、日本の地下の現状とは合わない絵もある。あくまで、イメー
ジ作りの本とすればいいのではないか。   (評論社 1999,2  1,500円)
 
 
『162ひきのカマキリたち』
                  得田之久さく(かがくのとも5月号)
 自然界入門の本として、もう一冊紹介したい。春の 初めに一つの「らんのう」
から生まれ出たカマキリの子どもたちの一生を綴った本 とも言える。まずは、は
じめに目に入る
  「でてきた、でてきた、1ぴき、2ひき、…。つぎつぎに うまれた こどもたは、
   ぜんぶで 162ひき。…」
という、162匹のカマキリの絵に圧倒される。「すごいなー、一つの卵嚢から、
こんなにも子どもが生まれるのか」が正直な感想。
 ところが、いろんな生き物に食べられたりして、あくる日には約1/3に、生ま
れた時の絵のパターンそのままの絵で示しているので、〈歯抜〉けがリアルに目立つ。
もちろん、子かまきりたちも獲物を捕らえてたくましく生きる場面も描かれてはいる。
 しかし、自然のきびしい掟はつぎつぎと彼らの命を奪う。春が終わる頃にはもう
すでに18匹に、そして、10匹に、夏の終わりには4匹にと減っていく。この頃
になると、さらに力強く生きる彼らではあるが…、やがて、秋を迎える頃にはとう
とう1匹になってしまった。
 このままでは、なんとも哀れな虫の世界の話になるが、最後に残ったのはメスだ
ったのでまた新しい命を作る場面が登場する。ここで、読者もホッとさせられるの
ではないか。
 著者は、昆虫特にカマキリには長年観察を続けてこられたという。それだけに、
簡潔ではあるが数々のカマキリの絵からは、多様なカマキリの表情が見て取れる。
一匹一匹の絵を見ているだけでも楽しい絵本だ    福音館書店(2000,5 380円)  

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