新刊解説
         『衣・食生活とゴミ』 『ひがしと゜にし、みなみときた』

 『衣・食生活とゴミ』                            塚本治弘著  さ・え・ら書房 

「ゴミを調べる」シリーズ第1巻。この本では、たんに手元にある製品についての
ゴミ問題について語るだけでなしに、その製品が生産される段階で出るゴミ、流通
の過程で出るゴミなどにも言及している。直接消費者の目に触れないところで多量
に出されているゴミについて新たな目を開かせてくれる。
 第1章「くらしの衣生活とゴミ」では、衣服も意外とゴミとして多く捨てられているこ
とがわかる。その原因の一つは、流行に左右されすぐに捨てられることが多いとの
こと。また、裁断時でのゴミ、売れ残りもかなりのゴミになるという。再利用されてい
る面もあるが、かなりはゴミとして捨てられるのが多いという。衣類で化学繊維のも
のは焼却されたときの害が大きい。したがって、海外への輸出や災害援助で化学
繊維の衣類は取り扱わないようにすべきだと主張する。 また、原料段階で出され
るゴミ、染色段階で出されているゴミ、ここでは化学物質も多量に出るという。 
 第2章 「くらしの食生活とゴミ」では、生ゴミ、容器ゴミの減量を訴えている。また、
           加工食品の製造過程で出るゴミについても言及している。 
 第3章 「ゴミの歴史」もおもしろい。江戸の町以来各地でよく行われていたゴミリ
            サイクルの習慣が高度経済成長の時点でとぎれてしまったとのこと。
 最後にプラスチックゴミの処理について、
 「水分を含んだ生ゴミといっしょに燃やすと安定してゴミを燃やすことができる」
とある。ダイオキシンなどの心配はないのだろうか。
「くわしくは第2巻に」とあるが。                        2000,6刊
 


 『ひがしとにし みなみときた』 
           フランクリン・M・ブランリーぶん  ロバート・ガルスターえ 林淳一やく  
         福音館書店
1960年代の科学読み物勃興期の翻訳本。当時、日常生活を科学する基本を知
る本としてかなり評価された本である。ところが、こうした基本事項に目をやる本の
出版は近年あまりみられない。今の時代にでも通用するこの種の本の再評価を試
みた。
 自分を知る基本は、今自分はどこにいるのかということと、自分を中心にして方位
を知るということだと思う。その第1歩としてこの本はよくできている。最初に
     「どうしたら ほうがくが わかるか しっていますか?」
と問いかけが入る。子どもに聞くといろいろ言うのではないか。 
初めは上下、左右の話が出る。 
 「下というのは、ちきゅうの ちゅうし んに むかうほうなのです。」 
  「上というのは ちきゆうの ちゅうしんから はなれるほうです。」
と、きちんと書いている。 いよいよ方角の話に入る。
 「あさ、たいようは ひがしの そらに あります。」
と、東は朝太陽の出る方位であることを示唆する。そして、
 「あさ、たいようが ひがしの そらに あるとき、あなたの 
  かげは にしがわに できます。」
と、かげを通して西、北に気づかせていく。
 「あなたの まえの ほうがくが みなみです。」
と、南にもふれる。 こうして、四方の方位がのみこめたところで、方位磁石の話や
地図の話がある。 
読み聞かせながら、子どもと影踏み遊びも楽しそうだ。
今の子どもにもぜひ体験させたい。                 1968年刊

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