新刊書評  12月

                                   『パパが宇宙をみせてくれた』
                                  
 『おへそのひみつ』


『パパが宇宙をみせてくれた』   
          ウルフ・スタルク作、エヴァ・エリクソン絵  ひしきあきらこ訳 (BL出版)

作者は、スエーデンの著名な児童文学者という。だから、この本は文学の本 ともいえる。
しかし、自然を感じる本として科学読み物につけ加えたい一冊で ある。話は  ある日の夕
方、パパはぼくにいった。

 「ウルフ、いまから宇宙をみせにつれて いってあげよう。おまえも、ずい ぶん大きく
  なったからね。」
から始まる。パパと息子ウルフの宇宙への冒険の旅の始まりである。
パパはど んな宇宙にウルフを連れていってくれるのだろうか。
  「…ところで、ねえ、宇宙っていったい なんなの?」
  「この世界ぜんぶさ。そこには、すべて のものがあるんだ」
などと親子の会話がはずむ。
 マーケットで〈非常食〉を買い、公園の前を通り、かなもの屋さん、さかな 屋さんの前を
通って、水路を飛び越え、草原の上を歩いていくと視界の広がる 低い丘の上に出た。こ
こが、パパのめざした「宇宙」なのだ。
  「見えるかい?」
とパパの声。ウルフが暗い原っぱに目をこらすと、カタツ ムリも見える、アザミも見える。
  「とってもきれいだ。これが宇宙なんだ!」
と、気がつくウルフ。すると、
  「上だよ、上」
というパパの声。そこには、空 いっぱいの星がまばたいていた。
次は空の宇宙へとウルフの夢は広がっていく。
 この物語は、子どもを広い草原に連れて行き、この地球の足元の「宇宙」と 夜空の
「宇宙」を体験させるという、楽しい科学の世界入門の物語である。あ わせて、「パパと
すごした時間」の大きさも伝わる。  
   
                                        2000,10刊 1,200円


『おへそのひみつ』
             やぎゅうげんいちろう・さく   「かがくのとも傑作集」福音館書店
  例によって、柳生弦一郎さんの奇抜なからだの本。このテーマへの引き込み 方、展
開の仕方からいって、お話で構成はしているものの、仮説―実験のスタ イルをとった
「科学の本」の一冊と言える。  「かみなりさん」の話から入る。
 「おにいちゃん、かみなりさんは ほんとにおへそを とるの?」
と、子どもたちのもっとも関心の高い話題から切り込む。そして、
 「〈おへそ〉って なんだろう?」 
と、問いかける。何人かの子どもたちの〈おへそ談義〉が始まる。これがまた おもしろい。
子どもたちの話を整理して、
 「おへそは、ほんとに おなかの おま けなのかなぁ?」  
 「おへそに さわると、ほんとに おなかが いたくなるのかなあ?」
  「おへそには、ほんとに ひもが ついていたのかなあ?」
 「おかあさんの おへそは、ほんとに ほどけるのかなあ?」
と聞き直している。
 「〈おへそ〉って、いったい なんだろうねぇ?」
と、再度問いかけて、
 「むかしむかし、ぼくたちが まだ おかあ さんの おなかのなかにいたころ、…」
と、ほんとの話が始まる。明快な挿し絵が加わって話の中身もとても分かり易い。
 最後に
 「おへそは、ぼくたちが おかあさんの お なかのなかに いた しょうこです。」
で締めくくっている。 「かみなりさん」と「おへそのごま」の話も気になるところ。末頁
にちゃん と答えてくれている。           
2000,11(1998,4)刊 838円

     
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