「野や庭の昆虫」
                  中山周平著 小学館
 ちょっと便利な虫の図鑑が出版された。虫の図鑑でありながら目次には
 ・野山の草花にくる虫
    タンポポにくる虫、タチツボスミレにくる虫、レンゲソウにくる虫、
    シロツメクサにくる虫 ……
 
と、植物の名前がずらりと続く。
 虫たちにはそれぞれに好みの花や葉っぱのあることはよく知られている。昆虫は
でたらめに花粉を集めたり、葉っぱを食べているわけではない。この本はその虫た
ちの〈食卓〉(好みの花や食草)に合わせて編集されている。
 この図鑑が初心者にも使いやすいのは、一つは植物中心に編集されているので
見つけた昆虫を特定しやすいことにある。さらにもう一つは、蝶や蛾の幼虫がふん
だんに描かれていることにある。蝶や蛾の幼虫はよく目に付くし、植物とも直結して
いる。なのにふつうの図鑑ではなかなか描かれていない。その点、この図鑑は幼虫
を知るのにも適している。
 後半に少しくわしい解説が用意されている。図鑑部分よりさらに細かく知りたい
人には参考になる。「解説」のはじめに
 「一見、まったく別ものの昆虫と植物が、互いに深いつながりをもって生活し
 ていることを理解するのが、本書のねらいです。」
とある。
 一つ気になるのが「花をあらす虫」とか「葉をあらす虫」とかの表現が多いこと
である。ここで虫たちを〈悪者〉扱いするのは適当かどうか疑問ではある。
                                 2001,3 2250円
                             
 
『ミミズが鳴くってほんとう?』
                    
谷本雄治著 アリス館       
 おなじみのアリス館の〈調べるっておもいしろい〉シリーズの一冊。今回は、著
者がたまたま小学2年生ぐらいの男の子から「ミミズって鳴くの?」と聞かれたこ
とがきっかけになっている。その男の子は、おじいちゃんから聞いたという。
 しかし、この〈ミミズが鳴く〉という話はかなり知られていて、ものの本には
「その正体はケラ」と書かれているという。また、ミミズの体のつくりから言っても、
ミミズが鳴くとはとても思えない、と、著者も考えた。しかし、ここで著者は思い
直した。ひよっとして、ミミズにも鳴くものがいるかも知れない。
 「自分の目で確かめないとわからないよね。ぼくも調べてみるから。」
と、男の子と約束をする。ここから、著者のミミズ調らべが始まる。
 まずは自分の〈情報箱〉からミミズ情報をさぐり出そうとこころみる。著者は新
聞記者だけに情報資料は豊富だ。それでも、確かな資料は得られない。次に電
子メールで多くの人に呼びかける。
  「ミミズが鳴くことを聞いたことがありますか。」
なんと235人の返信の中でも65人もの人から「ミミズが鳴くという話を聞いた」
との返事が返ってくる。
 著者は今度はミミズに関する昔の本もさぐってみる。さらに、ミミズ研究者にも
この話をもちかける。自分の家にもミミズを飼って耳をそばだてる。それでも、ミ
ミズが鳴くという確証はえられない…。 とある時… …。
 常識にとらわれないでどこまでも事実を確かめていこうとする著者の探求心と
情報収集力はすごい。                2000,11  1600円     

                
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