わたし好みの新刊 5月
                             
◆『神経難病の子どもたち』 難病の子どもを知る本7
      稲沢潤子文 内藤春子・難病のこども支援全国ネットワーク編 大月書店
 今までにも「障害を知る本」シリーズを刊行されてきた編著者が、今度は「難病の子ども
を知る本」を発行され続けている。今回のシリーズでは「白血病の子どもたち」「心臓病の
子どもたち」…と、難病と闘いながらも元気に生きている子どもたちの姿を紹介されてき
ている。 
 いろいろな神経難病を引き起こすもとは人間の脳と神経系にあることから、この本では
脳の説明から入っている。「脳のしくみ」について、そして「脳のはたらき」、「神経のメカ
ニズム」と絵と文章で分かりやすい説明が続く。脳は場所場所によってそれぞれ重要な
役割があり、それが多数の神経細胞によって人間の多様な機能に統率されていることを、
改めて知ることが出来る。その微細な細胞のどこかに何らかの原因で異常が起きると人
間の発達にも大きく影響する。
 この本は、個々の難病の解説が目的ではない。むしろページの大半は、それぞれの神
経難病とたたかいながら、明るくひたむきに生きていく子ども(成人)の姿を、それぞれに2
頁見開きで紹介している。どの子の写真も元気いっぱいの表情である。
 妊娠6ヶ月で「おなかの赤ちゃんが難病になる」と宣告されたお母さん、子どもが「3ヶ月
しか生きられない」と宣告されわが子の自立を支えていくおかあさん、「明日が山です」と
何度も言われて危機を乗り越えていくお母さんなど、家族の協力ぶりも紹介されている。
                                      2001,3   1,800円 
                           
          
 
◆わくわく観察ノート『動物園でウオッチング』
              
三上周治著 子どもの未来社
 近年、どの博物館(動物園、水族館等も含む)も、来館者にいかに楽しんでもらうか、さ
まざまな試みをしている。その一つの試みが、動物園などで広まっているクイズ形式の展
示である。この本は、そのような観察資料といえる。普通の科学読み物とは形式が異なる
が、大部分は各動物の観察ポイントを「問題」にした動物観察資料となっている。いずれも、
そのまま印刷して子どもたちにも使えるように工夫されている。
 まず、「STEP1」として、イヌ、ネコ、ウサギなど、子どもたちがよく目に触れる動物について
の問題がある。足跡や、目の形、歯列などをイヌとネコで比較したりしている。うさぎ、ハムス
ター、モルモットの問題もある。
 「STEP2」は主として動物園にいる動物について、低学年向きの質問が並んでいる。〈コウ
モリとツバサリュウの幕の付き方の違い〉〈オランウータンとニホンザルの手足の形の違い〉
〈シマウマとカバとラクダなどの足先の形の違い〉など、それぞれのわずかな特長にも気づか
せるようになっている。
 「STEP3」は、高学年の子どもたちを対象にした問題となっている。動物園には似た動物が
並列飼育されていることが多いので、個々の種間のはっきりとした区別がむつかしい。ただ
動物を眺めているだけでは、なかなかここというポイントがつかめない。ここでは、〈ゴリラと
オランウータンとチンパンジー〉〈タヌキとキツネ〉〈チーターとヒョウとジャガーとトラ〉〈アシカと
アザラシ〉など似たもの同士の相違点が見えてくる。
 その他、所々に「コラム」が設けられている。簡潔ではあるがここには興味深い話が多い。
最後にくわしい解説がついているので、かなり深く動物を知りたい人、動物ガイドをする人に
も参考になる。                            2001,2刊 2000円 


                      「新刊案内」2001年5月