わたし好みの新刊6月
◆『モグラのもんだいモグラのもんく』かこさとし作
―かこさとし大自然のふしぎえほん― 小峰書店
少し変わった構成の「えほん」である。科学読み物の新たなスタイルとして注目したい。
この本では、モグラの習性や生活を知らせることを目標とはしているが、モグラと人との関
係や自然界の環境問題にも目を向けさせている。また、ストーリーの展開方法として、モグ
ラ自身に語らせる手法を用いて子どもたちにも読みやすい構成となっている。
最初はモグラの外形の特徴を語り、トンネルの掘り方やなわばりへと語りは続く。
―トンネルのほり方にはいろいろあるが、わしのやり方はこうである―
と、土中でのトンネルの堀り方の話がおもしろい。いくつもの順を追った絵も入って、掘った
後の土をどのように処理しているのかもわかり良い。
次に、土中のモグラトンネルの全体図が示されている。この「すまい」にはトイレや食べ物
の貯蔵庫、巣ごもり場、休憩所、水のみ場もある。なかなか、機能的だ。
中程にある〈生きる楽しみ食べること〉という項もおもしろく読める。
「自分の体重の半分ぐらいのエサをかるく一日でいただく。」
と、モグラの大食ぶりが描かれている。
モグラは特に農耕を通じて人と深く接してきただけに、モグラに関する伝統行事や言い伝え
も各地に残る。それらも取り入れているのはさすが、かこ氏の本である。
最後に日本の農業生産の変化をグラフで見せながら、モグラの問題はすなわち人間の問
題であることを語る。内容が概念すぎるきらいはあるが、楽しく読める本である。
2001,2 1,300円
◆『あそびとおもちゃ情報事典』 多田千尋監修 日本図書センター
〈目で見る子どものあそび百科〉シリーズの一冊。子どもの「あそび」と「おもちゃ」に焦点
をあてた珍しい本である。監修者の言葉には次のように書かれている。
「世界各地には、世界中のおもちゃと友だちになれる博物館や、科学への不思議さ
を体験を通して満喫できる科学館、さらに、絵画や彫刻との距離を縮め、楽しみ方を
教えてくれる美術館など、さまざまな文化施設があります。それらの施設では、子ども
向けのイベントやワークショップが開かれ、子どもたちにいろいろなワクワクドキドキを
プレゼントしてくれます。…」
この本では、日本全国のそうした子どもが楽しめる施設の紹介、手作りおもちゃの紹介や
おもちゃ作家、おもちゃ病院なども紹介している。
手作りの木のおもちゃとふれあいをテーマに開館している北海道森の美術館木夢、手作り
絵本にふれられる北見市の手作り絵本美術館、体験や実験をテーマにした横浜子ども科学
館、大阪キッズプラザ、世界のドールを集めた伊東市のプッペンハウスヨシノ、「あそび」をテ
ーマに開館した愛知県児童総合センター、星の観測をめざした姫路市星の子館、子どもの歌
とおもちゃをテーマに開館している鳥取のわらべ館等々、
さらに、おもちゃのはたす役割について、おもちゃはたんに子どもの遊び道具ではなくて、お
年寄りや障害のある人たちにも大切な役割を果たしていることなどが語られている。おもちゃ
は人と人とのコミニュケーションの道具にもなる。おもちゃ作家、おもちゃ病院、シルバートイ、
共遊玩具、郷土玩具の紹介もある。おもちゃの持つ役割はこんなにもあるのかと驚かされる。
値段が4,400円と高すぎる。図書館で見るための本なのかもしれない。
2001,3
4,400円
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