わたし好みの新刊7月

                             
◆『ふくろうの森』  金子章作、土田義晴絵    PHP研究所   
 内容から言うと「フクロウの森をとりもどす」という題がふさわしい。 
 「回復」―この絵本でメッセージしたかったことは、このことです。
と〈あとがき〉にある。この物語は、福岡市のふくろうの棲む森近くに住む住民た
ちが〈ふくろうの森〉を回復させるために取り組んだ実話が元になっている。
 今も都市近郊のわずかに残る森や里山は、めまぐるしい開発の波にさらされて
いる。ほとんどが相続税対策で屋敷や森、田畑が手放されることによる。各々の
土地の所有権は個人にあるものの、こうした緑地の自然環境受益権は国民全体
にもあるといえる。
 この本の物語は、いつも遊んでいた大切な森を守ってという子どもの願いをもと
にみんなで取り組んだ都会の話で、小さな子ども向きに書かれている。子どもたち
にもぜひ心にとめてほしい内容である。
  むかし むかし / ここは、ふかい森だった。
  ふくろうがたくさんすんでいるので、
  ふくろいうの森と、よばれるようになった。
 小さなうららちゃんの遊び場だったこの〈ふくろうの森〉に、ある日、突然マンショ
ン建設の立て札が立った。うららちゃんはどうしたらよいのか、いく人かの大人に
相談した。やがて、デザイナーや野鳥の会メンバー、新聞記者などが集まって〈ふ
くろうの森を守る会〉が生まれた。その後、多くの地域住民の願いを集め、市役所
や建設会社の人たちの心を動かした。その結果、森は少し切られたものの復元に
向けて動き出すことになった。                  
  2001,4  1,300円
 
『ぼくのコレクション』         盛口満文・絵   福音館書店 
   副題に〈自然のなかの宝さがし〉とある。
 この本を見ると、子どもの頃、野山でさまざまなものを集めては友だちと見せ合
ったり交換したりした楽しい一時を思い出す。今でも、ちょっと近くの野山に行けば、
いろいろと自然の珍しいものを見つけることができる。その例をこの本は四季をお
ってたくさん紹介してくれている。
  
自然の中で、宝さがしをしてみよう。田んぼや畑や雑木林には、宝物がたくさんかくれて
  いるよ。春、まず田んぼや小川のあるところへでかけてみよう。どんな宝物が見つかるかな。
と〈春のたんぽ〉の紹介から始まる。その中では〈谷戸田の住民〉〈田んぼのミニ
水族館〉〈春の虫さがし〉〈白いチョウ 黄色いチョウ〉〈落とし文〉と続く。
 夏の項では〈夏の畑〉〈夏のドングリ〉〈夏の虫いろいろ〉〈樹液レストラン〉など、
子どもたちも見ればわくわくするような落とし物がいっぱいだ。〈飛んで灯に入る
夏の虫〉など子どもたちもすぐにまねできそうだ。
 秋はいろいろな色に紅葉した葉を集めるのも楽しい。〈木の実、草のみさがし〉
〈赤い実〉〈ドングリの背くらべ〉などとつづく。その他、〈タヌキの食卓〉〈食べたの
はだれ?落としたのはだれ?〉で野生動物の食べ後や糞の紹介もある。
 冬もいろいろ落ちているものだ。〈クモのふくろ〉〈虫の空き巣コレクション〉〈枯
れ木のすまい〉〈ほねほね〉とおもしろそうなテーマが続く。また、鳥の巣もよく目
につく。〈鳥の空き家〉〈羽集め〉もけっこう楽しそうだ。見ていると、自分たちもい
っぱい集めてみたくなる本である。             
2001,4  1,700円
              
                                               
(西村寿雄)
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