◆『アサガオの絵本』
わたなべよしたか・へん、うえだみゆき・え 農山漁村文化協会
ユニークな編集で高評をえている農文協の〈そだててあそぼう〉シリーズの一冊
である。この本は、江戸時代に大いに楽しまれていた変化アサガオについて、その
面白さと楽しみ方、栽培方法などを紹介している。いわゆるアサガオの栽培を通し
てうんと遊ぼうという内容である。
本のタイトルに「きみが知っているアサガオの〈ジョーシキ〉をひっくりかえすような
まかふしぎな世界を、いっしょにのぞいてみよう。」とある。
最初に江戸時代のアサガオ園の風景が描かれている。男も女も目を丸めてアサ
ガオの花に見入っている。粋な江戸の人々は、様々な色や形を自由に作り出す
〈変化アサガオ〉の栽培に熱中していたようだ。この絵の水墨画も生きていて、
今にも江戸の人々のざわめきが聞こえそうだ。
以下、この本は江戸の〈通人〉がに大いに花を咲かせた変化アサガオについて、
その歴史から、種類、栽培の仕方、交配のルール、親木の保存の仕方、花の遊び
方と解説されていく。
「アサガオ」と言えば大輪の丸咲きが定番であるが、こんなにもバラエティーにと
んだ〈変化アサガオ〉が、自分の栽培の条件によって生まれ出てくるというのが面白
そうだ。ちょっとマニアックな世界に入るのかもしれないが、なかなかおもしろそう。
最後にアサガオについてのくわしい解説も付けられている。
2001,5
1,800円
◆『ウトナイ湖 サンクチュアリ物語』
大畑孝二著 ひくまの出版
本の構成は、大きく三つのパートに分かれている。
Part 1 〈 いのちのはばたき〉では、子どもの頃から野鳥への思いが高められてい
く著者の体験の過程が語られていく。カワセミがまず著者の心を野鳥へ引きつる。
「空飛ぶ宝石のようなカワセミに会う度に胸がドキドキした」と著者は語っている。
さらに決定的に著者の動物研究への夢を高めさせたのは、中学生三年の夏休
みの宿題で読んだ、遠藤公男さんの『原生林のコウモリ』(学研)とのことである。著
者はこの本で未知の世界を追求していく動物研究のおもしろさを感じ取った。
やがて著者は、近くの探鳥会に参加して〈日本野鳥の会〉に入り、ますます野鳥
とのかかわりを強めていく。数々の探鳥会に参加する一方密猟に心を痛める。
Part 2 〈波光る、ウトナイ湖〉は、運良く〈日本野鳥の会〉職員に採用された著者
の活躍の様子が語られている。日本初のサンクチュアリー・ウトナイ湖のレンジャ
ーとして活躍する著者は、ここでさらに、指導員、研究員としての資質をみがいて
いく。
しかし、このウトナイ湖に危機がせまってくる。ウトナイ湖近くを流れる〈千歳川放
水路建設計画〉が持ち上がってきた。「これを完成させれば、このウトナイ湖の水
がなくなってしまう」と、みんなが危機感を強め始めた。なんとか、中止させなけれ
ば…。著者たちの新たな自然保護の活動が開始される。
Part 3 〈野鳥の聖域を守る〉ではその計画阻止に向けてのさまざまな活動の様子
が書かれている。最後には、世界的な運動にまで発展させ、代案を提示して、この
計画を中止に追い込んでいくねばり強い活動の紹介である。
野鳥観察とその保護に邁進する著者の生き方は、また多くの子どもたちに生き
る目標をを与えるのではないか。
2001,4
1,400円