◆『太鼓』 つくって知ろう、かわ、皮・革
三宅都子文・中川洋典絵 解放出版社
〈太鼓〉について総合的に楽しく見れる本が出た。著者の三宅都子さんは長
年太鼓の研究に携わってこられた太鼓研究者の第一人者である。この本で
は、太鼓の使われ方から音の秘密、太鼓の作られていく工程や種類、演奏
の仕方や身近な太鼓の作り方までさまざまな紹介がある。最後に太鼓の歴
史や世界の太鼓まで描いている。
「太鼓の中から歴史が見える、つくってわかることがある。」
と前書きにある。特に和太鼓は日本人の心に不思議な響きをもたらせてく
れる。
「太鼓の秘密」では、「太鼓がどうしてあんなに大きな音が出るのか」、その
秘密が図入りでわかりやすく書かれている。胴の内側のでこぼこも大きな役
目を果たしているのだという。「胴はこうして作られる」の項にある「歌口のひ
みつ」が太鼓の幕の振動に微妙に影響を与えるのだという。また、「太鼓幕
はこうしてつくられる」、「太鼓ができるまで」でも、ベテラン職人の卓越した技
がものをいうことが書かれている。一つの太鼓には、太鼓つくり長年のさまざ
まな技術が凝縮されていることがわかる。
「こんな演奏もある」では、「最近では、太鼓の音を楽しむ太鼓主役の太鼓集
団が活躍するようになった」とある。力強い太鼓の響きと集団の演技の楽しさ
がマッチした近年の一つの流れではないだろうか。
そのあとの「つくってみよう」では、塩ビ管を胴にしてのオリジナルな太鼓つ
くりの紹介がある。これなら、だれにでも自分好みの太鼓が作れそうだ。
最後の「太鼓の歴史」「世界の太鼓」などを通して、太鼓について幅広い知
識も広がる。太鼓の余韻がいつまでも残る。 2001,9 2200円
◆『最新藤井旭の四季の星座教室』
藤井旭著 誠文堂新光社
星空観察の手引きになる本は多様に出回っているが、やはり少し基礎知識
のある人が読んでわかる、どちらかいうと天文マニア向きの本が多い。また、
天体写真をふんだんに取り入れたビジュアルな写真本も多いが高価なのが
難点である。
今回出版されたこの本は、それらの難点を解消されて、見て楽しめる、読
んで楽しめる、星空のことがわかる、星空観測の指南にもなる本である。
最初の「星座の見つけ方」の項にある〈星座のもの差し〉は知っていると便
利だ。腕を伸ばしたときの小指の巾が約1゜、握りこぶしの巾が約10゜という。
前半は星座の起こりや天球について、また星の明るさや星の動きなどにつ
いて、基本的な事がらが挿し絵と写真を交えて解説されている。「天球って
何?」に書かれている〈星座の見え方と実際の星の距離〉の図は星空全体の
イメージをつかむためにも大切なポイントである。続いての「日周運動って
何?」も簡潔な説明だがよくわかる。
「太陽のいる星座」も、他の本ではあまり書かれていない。
約2/3頁を使って、春夏秋冬の各季節毎の星空の図と各星座の解説を
している。
星空の図では、親しみやすく星座の絵を取り入れた図、全天の星夜図、北
天、南天の星夜図と3種類の図が載せられている。それぞれに見る人が目
的に合わせて利用できる。星夜図にはその季節の主な星空の解説もあり、
あとに続く星座の話も話題が豊富である。星雲や星団の紹介もある。
所々にある色刷りの囲み記事には星に関するさまざまな基礎知識が盛り
込まれていて、この一冊でかなりの天文知識が増える。都会地ではこの本
のような美しい星空は望めないが、見ているだけでも夢がふくらむ。
2001,9 2,000円
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