新刊案内  2002年1月                        

『コウテイペンギン撮影記』  
        たくさんのふしぎ2001年12月
     内山晟文・写真 福音館書 

 「私は、ペンギンは氷山のある南極にしかすんでいないと思いこんでいたのです。」と最
初のページに著者の弁がある。ペンギンというと、だれしも氷の上の美しい姿をイメージ
する。しかし、著者が撮影してきたペンギンはみんな普通の岩地や砂地で生活するもの
ばかり、中には赤道直下のガラパゴス諸島に棲むペンギンの撮影もある。 ここにきて
著者はどうしても南極の氷の上に棲む野生のコウテイペンギンの撮影に意欲をたぎらせ
た。南極という過酷な場所に滞在して撮影するのは命の危険ととなりあわせである。著
者は、それを覚悟で撮影に出かける。
 運良く外国の数人とツアーを組んで飛行機を乗りついで南極のコウテイペンギンコロ
ニーにたどり着くことが出来た。それこそ浸食を忘れての撮影となった。氷上に威風堂
々と立ち並ぶコウテイペンギンの一軍の写真は見事、また、親の足の間からちょこんと
顔を出すヒナはほんとに愛くるしい。
 「コウテイペンギンのメスは、5月半ばに卵をうむと、卵をオスに託して何百キロもはな
れた海へえさをとりにむかいます。」「オスは、メスが卵をうむまでの2ケ月間、さらに、卵
を抱いててからヒナがかえりメスがもどってくるまでの2ケ月間、合計4ケ月ものあいだ、
何も食べることができないのです。」とある。 どうして、こんな過酷な生き方があの小さな
体でできるのだろうか。この地球上の生きものたちの強さを改めて思い知らされる。こう
いう本を見ると、若い人たちの夢が一段と広がるのではないだろうか。

 『琵琶湖の魚』         今森洋輔著 偕成社 

 琵琶湖に関する書物や魚図鑑は今までにもいくつか出版されている。昔から琵琶湖
の魚類は多くの人たちの関心の的となっている。その理由の一つは、14種もの琵琶湖
固有種がいるからであろう。では、どうして琵琶湖にだけそれだけたくさんの固有種が
生息しているのだろうか。
 琵琶湖は他の湖と比べて非常に歴史が古いからともいわれている。生成後400万
年以上もたっている。他の日本の湖は古くても10万年足らずだから、それらに比べる
と琵琶湖は数十倍の古さ持っている。さらに、面積の広さとともに多様な生息環境が
作られてきたこともあげられている。
 この多様な生態系を持つ琵琶湖も水質の悪化や外来魚の脅威に今さらされている。
長い長い歴史の生き証人たちが今絶滅の危機に瀕している。そのような事実を全国
の人たちに知ってほしい、そう思っている時に、この大型の図鑑が出版された。しかも、
写真でではなく、魚の一体、一体が丁寧に大きくスケッチされている。琵琶湖固有種・
亜種を含めて55種の魚が描かれている。所々に「琵琶湖の断面とすみわけ」「タイリク
バラタナゴの産卵」など、参考になる解説がある。最後は「世界じゅうで琵琶湖にしか
いない魚たち」としてまとめられている。琵琶湖固有種の発生の過程が記されていて
興味深い。
 子どもから大人までそれぞれに楽しめる図鑑ではないか。著者は画家・イラストレー
ターであるがずっと琵琶湖畔の里山で過ごした琵琶湖人で、写真家今森光彦氏の弟
さんである。                                         2001,11刊 2,200円                                          

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