新刊案内  2002年2月                        

 

『はじめてのマンガ講座』    エンジェル松本著、グラフィック社 

実用的な本であるが、動きのある人物の描写、自然や人工物の描き方、ストーリー
展開の方法など、およそ表現に関わる基本事項がよくまとめられている。漫画家を
めざす人でなくても、ここにある技法などは知っていた方が自己表現の参考になる。
 「落書きができること、そしてしりとり連想ゲームのできることが漫画家の基礎だ」
と初めに著者の松本さんが呼びかけている。気楽に絵を描き、物事のつながりが
思い浮かびやすい人が漫画家の素質を持ち合わせているといえそうだ。
 1章、2章はマンガを書くときの材料や使い方などが書かれている。3章の描写の
仕方では、人間や動物の顔の描写の仕方が基本だという。人物の微妙な表現力が
要なのだろう。第4章はマンガのテクニックで、誇張の仕方から、吹き出しの使い方、
グランデーションの入れ方など特殊な効果をもたらすという。
 第5章は背景の描き方で、花や虫などの自然物や、様々な気象現象の表わし方
遠近法の種類、スピード感の描き方など多彩にあるようだ。 次が「読みやすいマン
ガ作り」で、物語の構成の仕方の話である。さまざまな技法や絵がいかに生かされ
るか、すべて話の展開にかかっている。これは、他人に話をするときとも共通するこ
とで、いかに相手に感動を与えるか、起承転結の使い方が基本になる。
 紙と鉛筆で気ままに絵描きに挑戦すると楽しいし、そのことで人とのコミニュケーシ
ョンの基本が身に付くかも知れない。 
                                         2001,10刊 1,400円

 

『これがカモ!』           大畑孝二文・山本浩伸絵 大日本図書

 鳥の本というといくつもの野鳥の姿を紹介した写真本が多い。しかし、この本はカモ
に焦点を当てて、カモの生活全般について手際よくまとめられている。
 カモ類は体が大きくてゆうゆうと水辺にいるので人にも親しまれやすい鳥である。
そのカモたちのさまざまな習性について、著者が勤める〈片野鴨池観察館〉(加賀市)
での観察を中心にまとめられている。
 「かもたちはどこにすんでいる?」を見ると、マガモなどはアジア大陸一帯にかなり生
息していることがわかる。「カモの羽はなぜうつくしいのか」を読むと、さまざまに色を
変化させるカモの羽色の秘密がわかる。羽の微細構造による光の反射が原因だと
ある。また、あの重そうなカモがなぜゆうゆうと水に浮かんでいられるか、これも興味
深い話である。「なぜ、カモは水に浮かぶのか」に解説がある。「かものくちばしと舌と
耳」も興味深い。カモの口の回りには串状の細かな毛がならんでいる。これで、藻な
どをすいすいとこしてしまうのだという。途中から〈片野鴨池〉の話が多くなる。カモの
昼と夜の生活はどうしているのか、夜はどこへ飛んで行くのか、何を食べているのか、
子育てはなどそれぞれわかりやすく書かれている。
 後半には、「鴨池たんぼクラブ」の紹介がある。このクラブの子どもたちの稲作りが、
カモのえさ(もみ)を増やし、カモの飛来を助けているのだという。
                                    2001,10刊 1,400円 

  
                  「2002年2月へ」