新刊案内  2002年3月                        

 

  『まつぼっくりノート』
                      いわさゆうこ作、文化出版局

 いわさゆうこさんの第4冊目が出 た。はじめに針葉樹全般についての基
 礎知識のおさらいから始まる。ここで、針葉樹の概略がつかめる。
  マツといえばその代表はアカマツ、まずアカマツを取り上げながらマツの
 樹の特長を語り、庭木、燃料、土木用材、はては戦時中の松ヤニ利用にまで
 使われたことも紹介している。
  次はクロマツ、このマツは「白い砂浜に松の縁」とあるように、アカマツ
 とはまたちがった生育環境にある。そこを人々はうまく利用していることが
 わかる。「つくってあそぼう」「ふしぎノート」の囲み記事も入る。
  続いてゴヨウマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウ、カラマツ、ツガ、モミ
 …と20種類もの紹介がある。それぞれに姿形も違い環境も違う。同じ針葉
 樹でありながらよくもこれだけ異なるのがあるものだと改めて感心させられ
 る。世界のまつぼっくりの紹介もある終わりに他の針葉樹にもふれている。
スギ、メタセコイヤ、コウヤマキ、ヒノキ、サワラ、イブキ、カヤ、ソテ 
 ツ、イチョウなど人々とのかかわりが深い樹も多い。
  針葉樹は一見地味であまり人々の気にとまらない樹であるが、むしろ、人
 々の生活とは密接につながっている樹であることがわかる。
  この本は、たんにマツやスギ、ヒノキの解説だけでなしに、それらの樹と
 人間とのかかわりを主に描いている。
 こういう本こそ読んでいて楽しい。著者独特のユーモラスな絵がその効果を
 いっそう高めている。
                            2001,11刊 1,300円


  『ヤイロチョウ く八色鳥)』
              上田恵介監修 中村滝男著 ポプラ社

 
ヤイロチョウは八色のカラフルな色彩を持つまぼろしの鳥である。その鳥
を追うこと 30年、やっと出会った感激を綴った読み物である。同時に数々
の謎にもせまっている。
 著者とヤイロチョウとの出会いは、なんと四万十川中流に住む友人の家の
庭先だそうだ。ヤイロチョウが来たという知らせに著者は急いで現地に駆け
つけた。あっけない著者とヤイロチョウとの出会いだった。
 次にヤイロチョウの話が続く。ヤイロチョウのラテン語の意味は「尾の短
い水の妖精」というのだそうだ。まさにヤイロチョウには妖精の感がある。
餌はミミズ、カタツムリ、昆虫などとのことだ。
 ヤイロチョウがここ四万十川流域に集まって来る理由は、四万十川流域の
照葉樹林が重要な要素であると著者は推測する。照葉樹林はヤイロチョウの
足場を確保するし、他の野鳥はあまり好まない。さらに、湿潤な気候がミミ
ズの棲息に好条件だという。
 著者はヤイロチョウの派手な色のなぞにもせまる。そもそもこのヤイロチ
ョウのような派手な色をしていると外敵にねらわれやすい。なのに、どうし
てこのような派手な色の鳥が棲息し続けられてきたのか。著者なりの解釈が
続く。ヤイロチョウの巣作りの場所も不可解である。ヤイロチョウの巣は斜
面などの地上に作られる。蛇などにねらわれる最も危険な場所であるのにど
うしてこのような所に巣作りをするのか。謎の多い鳥に、著者の研究はつき
そうもない。
                           2001,11刊 950円
   
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