5月新刊


     『宇宙人に会いたい』(たくさんのふしぎ)
                         河崎行繁文・横山三七子絵 福音館書店
 「宇宙人に会いたい」、一度はだれもがいだくこの疑問に順を追って考えていく。大人も
興味がそそられる話である。 ある日、少年は一冊の本を拾った。その本には「あなたは、
宇宙人がいると思いますか?」とある。それから、少年の自問自答が始まる。
「夜空には、こんなにたくさんの星が光っているんだ。この星の中のひとつぐらいには、
 ぼくらと交信したり、宇宙旅行ができる宇宙人がいてもおかしくはないんじゃないかな。」
 そう思ってから、一つ一つ考えをめぐらせていく。この地球上に人類が生まれてきたのは
…、人類が出現するまではどんな生きものがいたか…、生きものが生きるためにはなにが
必要か…、月や太陽には生きものはいられるか…、ほかの惑星には…、木星の衛星には
ひょっとして生きものがいるかもしれない…。いるとしたら、こんなもの?、どこかで生まれた
生き物がすい星や流れ星にのって、宇宙を飛びまわっているかも…、宇宙全体をみれば…
水もあり、大気もあり、食べ物もあるような惑星も、きっとあるにちがいない…。
 「そうか! 生きものがいるのか」
と結論づける。だとすれば、生まれて50億年以上にもなる古い星もある…、文明が進んだ
宇宙人がいるかもしれない。少年の空想は広がるばかり。最後に
 「いまも、どこかの星で宇宙人が空を見上げて、同じことを考えているかもしれない。
  〈どこかに、宇宙人がいたらいいな…〉ってさ。」
とある。
ほっとやさしくなる結びの言葉である。
 著者の願いは、すべての生きものとうまくつきあえる人類になることにある。  
                                            
2002,4刊 700円

    『生命は猛毒の海から生まれた』 宇宙・地球・いのちのはじまり 3
                                濱田隆士・榎田政隆 理論社
 地球誕生や生命の起源については今も新しい考えがつぎつぎと生まれている。それらの
考えも取り入れてこの〈宇宙・地球・いのちのはじまり〉シリーズ全5冊が刊行された。ハード
カバーの図鑑タイプではあるが、読み物として楽しく読める。少々高価なのが難点。
 この本はそのシリーズの一冊。マータという少女がルタン青年の案内で仮想のミラクルミュ
ージアムに出入りし、そこのコスモス教授にいろいろ教わるという手法を用いている。
 さて第3巻、「生命は猛毒の海から生まれた」という題名にまず驚く。なんでも、「有毒な硫
化水素の海から生命が出現したのではないかと考えられている」とある。今も、硫化水素を
エネルギーにして生きているバクテリアがいる。
〈原始の海の部屋〉へタイムスリップすると…。なんでも、「硫化水素の海に〈猛毒の酸素〉が
出現してきた」という。酸素もこのときは猛毒なのだ。しかし、長い年月の間に、その〈猛毒の
酸素〉に応じるバクテリヤ(シアノバクテリア)が出現して、高エネルギーを獲得する多細胞生
物の出現に道を開いたという、ダイナミックな話が展開されている。これらの考えがより確か
な理論に今後どのように検証されていくのか興味深い。生命の不思議な存在が一段と意識
づけられる。
 終わりに、池の中の単細胞生物プランクトンの観察がもり込まれている。「これこそ、わたし
たち人類の祖先の仲間か」と思うと、小さなプランクトンにもより親しみが増してくる。
 巻末に、各博物館、大学へのインターネットアドレスの紹介もある。  
                                         
2002,3刊 2,500円  

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