6月新刊
                          
『土の絵本土とあそぼう』(そだててあそぼう) 
                     
 日本土壌肥料学会編 農文協
 土(土壌)はいうまでもなく、あらゆる生き物の根元にある物質である。そのわ
りに、その働きや内容については案外知られていない。この本は、こうした土に
ついて、土の成分やそこに棲む生き物、土と環境など5冊にまとめられている。
 この巻は、まず土と親しむことをねらった巻に仕立てられている。「土のつぶを
調べよう!」や「土の中の有機物」では、有機物である土壌の観察を取り上げて
いる。土はまさに小さな生き物の宝庫だ。
 次の、「土の中の宝石をさがそう」「土の中の宝石」が見ていてとても楽しい。土
の中にはこのようなきれいな鉱物がこんなにも入っているのかと思わず見入って
しまう。もちろん、こうした鉱物がよく見られるのは火山灰層である。これからは火
山灰層をたくさん集めてみたくなる。
 そのあと、「光る泥ダンゴをつくろう」で土遊びを、「焼き物をつくろう」「土のアクセ
サリーをつくろう」「土でハンカチを染めてみよう」などで土と親しむものづくりの紹介
がある。土も、意外と生活を豊かに演出してくれるものだ。さらに、「土でできた壁」
など土の建物利用の話もある。続いて「色水をきれいにしてみよう」「おいしい水は
どうしてできる?」など土の濾過効果、ミネラルウォーターの話に発展している。
 それぞれ、土についての基本的な視点が簡潔に読みとれる。最後に、それぞれの
項についてのくわしい解説が付けられている。        
2002,3刊 1,800円
 
『ほたる』(かがくのとも)  
           
神沢利子文・栗林慧写真   福音館書店
 この本は、子ども向けのやさしい話をたくさん書いている童話作家の神沢利子さん
と、30年以上もホタルの写真を撮り続けている昆虫写真家の栗林慧さんとの合作で
ある。神沢さんのやさしい文章と栗林さんの素敵な写真がホタルのかもしだす美しい
世界を演出している。さらに、小さな子どもたちに日本の里山の姿をより鮮明に印象
づけていることは、ホタルの生態を知ること以上にこの本の意味は大きい。
 最初に、ゆつたりと流れる山間の川の写真が出てくる。ホタルが生まれる緑深い
環境である。次に川辺の草むらや苔の写真がアップで出る。
 「なつのひ、かわに つきでた きの えだには / こけが はえていて、
  たくさんの たまごが うみつれられていました。/
  そうです。これが ほたるの たまごです。 」
川岸の草むらがこうした生きものたちの生まれ出る場所であることを知らせてくれる。
最後のページは苔のついた太い木の幹にへばりつくホタルの写真。
 「かわべの こけのはえている きに めすの ほたるは あつまってきます。/
  きょねん じぶんたちが うまれた ばしょです。/
  やわらかい こけに めすは たくさんの たまごを うみつけました。」
 ホタルの幼虫や成虫のたくましい写真と共に、苔のある環境の中で小さな命を引き
継いでいるホタルの写真も大切にした本である。 
 
                                     2002,3刊 2,500円  

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