―わたし好みの新刊― 8月 
『鉱物・岩石』〈ポケット版 学研の図鑑7〉
                     
 千葉とき子他著 学習研究社 
 この本のような図鑑類は他にもたくさん出版されている。形態も大小さまざ
まあるので目的にあった図鑑を選べばよいが、今回取り上げた図鑑はポケット
版ではあるが、仕上がりもよく解説も読みやすい。このような「鉱物・岩石の
図鑑」は、まず頁をくって眺めるだけでも地底の鉱物の数々に夢が広がる。
 この本は図鑑でありながら、「地球と地形」(第1章)の解説にもかなりの
頁をさいている。地球の誕生やプレート運動による地球の地形、地震と断層、
活断層の話、マグマの話や日本列島誕生の話など、わずかの字数の中に最新の
情報でわすかりやすくまとめられている。 
 次の「鉱物」(第2章)では、「鉱物と岩石のちがい」から入っている。
「岩石は鉱物の粒の集まりで、鉱物は原子の集まりということになる」と前置
きして、結晶、硬度、比重、条痕色、光の屈折、へき開、磁性、蛍光の話へと
続き、鉱物個々の図鑑になっている。ここでの特徴は、各鉱物の最初に分子記
号が書かれていることにある。これで、いっそう「鉱物は原子の集まり」とい
うことを印象づけられる。それぞれの鉱物はどのような原子が集まってできて
いるのか興味深く眺められる。「岩石」(第3章)では、各岩石の特徴的な写
真と偏光顕微鏡写真、そして時には産出状況の写真などもおりまぜてより親し
みやすくしている。                     2002,4刊 960円

                                    
『この宇宙に地球と似た星はあるのだろうか』 
                     
有本信雄著   サンマーク出版
フィクション仕立ての楽しい宇宙読み物となっている。宇宙に興味を持つす
ばる君(中学生)と、天文学者のおじさんとの会話を中心に、生命誕生の物語
から、太陽系、銀河系の話に始まり、地球型惑星探索にせまる壮大な宇宙ドラ
マである。背景には、深刻な地球温暖化への著者の天文学者としての警告があ
る。
 最初は、わたしたちの生命はどこから来たかがテーマになっている。最近の
研究では「地球の生命の本当の生まれ故郷は地球上ではなく、どこか遠くの宇
宙だったかもしれない。」という。そして、おじさんのショッキングな話が続
く。「これから、1000年の間に、地球は温暖化によって人類の住めないような
星になる。人類が生き延びるには、ほかの惑星に移住する以外にないだろう。」
と。このままの地球温暖化が進と1000年もするとこの地球も金星なみの高温惑
星に変身していくという。1000年というと、もう足下に火がついている状況で
ある。いや、もう手遅れだと「おじさん」は語る。では、どうするか。いよい
よ、人類の地球脱出に向けて、移住可能な天体を模索しなくてはいけない。そ
のような星がこの宇宙空間にあるのだろうか。「おじさん」とすばる君の対話
が続いていく。240頁にも及ぶ超大作ドラマである。
 「あとがき」で著者は、〈地球温暖化〉というあまい言葉にごまかされては
いけないと警告している。フィクションではあるものの、身のつまされる宇宙
物語である。
                                  2002,3刊 2,200円 
                                    西村寿雄
             
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