12月 新刊

  
『生ゴミはよみがえる』 
               菅野芳秀著 長谷川健郎写真  講談社
 生ゴミの分別収集は、今でもいくつかの企業などでの部分実施にとどまって
いるのが現状である。そこを農業を営む著者たちは、地道な説得活動を続け、
消費者にも〈土作りの生産者〉という意識を芽生えさせていく。それが、やがて
行政をも動かし、見事に100%生ゴミ回収のリサイクルシステムができあがっ
た。その大きな市民運動の成果を、著者たちが未来を託す小中学生に書いた。
山形県長井市の話である。
 「第1章 生ゴミってなあに」で、一昔までニワトリを介在して循環農業を続け
ていた農村の姿を語る。当時は、生ゴミは〈ゴミ〉ではなく命の継承者であった。
 「第2章 土はいのちのみなもと」では、微生物の働きにふれ、「土は生命の
世界であり、すべての生命のふるさとでもある」と書く。化学肥料の土を生命の
息づく土にすることは、健康に生きたいと願う市民みんなの問題ではないかと
問いかける。
 「第3章 生ゴミがよみがえる町」では、レインボープランと名付けられ、生ゴミ
回収の輪を広げていく町の人たちの姿を紹介していく。「作物を食べて生きてい
るすべての人たちが、作物作りに参加している」という意識が芽生えてきたとい
う。
 「第4章 人々の夢を集めて」では、行政の手によって本格的なコンポストセン
ター設置が実現していく。そして、「第5章 森と海の健康回復」へと続く。
 こういう本には珍しく文章が平易で読みやすい。著者は子どもたちに「君たち
も大きな夢に挑戦してみないか」と持ちかけている。  
                             
 2002,10刊 1,400円
 


『おちばひらひら』 ―新自然きらきら― 
                    久保秀一写真・七尾純 文  偕成社
 見るからにやさしいきれいな本である。大人ですら、そっと手にとって眺めてみ
たくなる。このシリーズの願いとして「お話の中に、自然と夢がいっぱいつまった、
観察写真絵本」とある。この『おちばひらひら』は、まさに〈自然と夢〉のつまった
本である。形としては幼児たちに読み聞かせられるスタイルである。
 この本を見てほっとさせられる所は、著者が直接秋を解説する形をとらないで、
さわがにの〈ちょきたん〉の目を通して、秋を探っていくところである。あくまで、小
さな生まれたてのさわがにの視点で、移りゆく秋が語られている。
 ある日、おかあさんとの会話が続く。「もうすぐ あきが くるから きをつけなさい
よ。」「あきって なに?」「あきは さむいさむい ふゆを つれてくるのよ。」「ふー
ん わかった。」と、ちょきたんが〈秋〉を知る。やがて、ちょきたんは考える。「あき
って なんだろう…。」おおきなかにに出会って、「…あきは とっても きれいだよ。」
と教えられる。ひらひらとんできたちょうに「あきは きいろいのよ。」と教えられる。
あかとんぼに秋は「まっかだよ。」と教えられる。
 やがて、舞い降りてくる落ち葉、ころがってくるドングリに出会う。「きれいだなあ。
これが にいさんがいってた あきなんだ。」と自分で納得する。小さな子ども向け
の本だが、こうして納得していく過程が描かれているのがさわやかにうつる。
 写真がとても鮮明である。       
    
                               2002,9刊 1,000円
                     
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