2003年1月 新刊

                             ―わたし好みの新刊― 1月 
『水のかたち』(たくさんのふしぎ) 
                    増村征夫文・写真 福音館書店
 水分子はその時々の気象条件によってさまざまな姿をわたしたちに見せて
くれる。
その時々の美しさに感動してその姿を本にした人も多い。著者は信州の山々
で長年自然の姿をとらえてきたベテランの写真家である。著者のとらえた水
分子の姿にしばしつきあって、寒風の山野にしばし身をおいてみてはどうだろ
う。
 まず雨降りや霧中のお花畑の写真が登場する。雲は「空気中にうかんだ小
さな水滴のあつまりでしたとある。次に植物にくっついた美しい水玉レンズの
写真が出る。山歩きの時しばしば感激する場面である。チングルマやクモの
巣の水玉模様がまた美しい。冬が近づいてくるとこの水玉はまた違った姿を
見せてくる。朝霜の写真も美しい。長さ7ミリもあるという霜の写真はまさに水
分子の結晶である。水分子が次々と結晶しながら成長していく様子が見事に
とらえられている。朝日に照らされた窓ガラスの霜の結晶にしばしうっとりとさ
せられる。
 霜柱や雪、霧氷、つらら、氷と冬の水の姿が紹介されたあと、後のページに
ある樹の枝いっぱいに花のようにくっついた氷粒の写真はなかなか珍しい。
「冷たい雨がふったあとに、まれに見られる雨氷でした」とある。最後の透明
な雨氷レンズの写真は見事な氷結ダイヤである。    
                                 
2003,1刊 700円
 
 
『オーロラのひみつ』 
                          上出洋介文  偕成社
 小学生の時、南極から刻々と伝えられてくる新情報に心をうばわれた著者が、
中学生になった頃「オーロラを宇宙の現象としてとらえる学問は、今、始まった
ばかりです。」という新聞記事を読んだ。以来、著者は自分の将来の夢をオー
ロラ研究においた。その夢を、さまざまな苦難をのりこえて、ついに世界のオー
ロラ研究の大一人者になっていく著者の半生が描かれている。美しいオーロラ
の神秘をひもといていった研究の過程が感動的に描かれている。これを読んだ
子どもたちに、将来への大きな夢を与えるのではないか。
 筋立ては、オーロラのひみつ/自分で調べる/オーロラはなぜ光るのか?/
地球は巨大な磁石/太陽とオーロラ/はじめての研究/強力な味方/人工衛
星/レーダーの目/コンピューターの威力、となっている。順をおってオーロラの
核心に迫っている。
 科学研究というのは、研究者の限りない追求心と創造力、そして、きめ細かな
観測データーを知らせてくる人工衛星やレーダー、膨大な資料を解析するスーパ
ーコンピューターなど三拍子そろって初めて進み出すことがわかる。最先端宇宙
科学の姿を著者の研究から見ることが出来る。 
 オーロラは太陽からやってくるもうれつな荷電粒子がつくる強力な電圧にその
原因があるという。その電圧により、大電流が上向き、下向きなどに流れ、極近
くで美しいオーロラが発生するという。ちょっとむつかしい話の部分もあるが、宇
宙の神秘さを強く感じる本である。                2002,9刊 1,200円 
 
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