わたし好みの新刊 4月

     『たげり舞う里に』
                    七尾純著  あかね書房
 長年科学絵本作りを手がけてきた著者が、タゲリの飛来地の水田減少に
歯止めをかけようと活動している、茅ヶ崎市の自然保護グループの活動を
描いた本である。
 〈タゲリ〉はケリの仲間で美しい冬鳥でる。頭に飾り毛があり、濃いグリーン
の精悍な鳥である。そのケリの数が近年急に減ったことに、地域の人たちは
気づいた。
 さっそくタゲリがなぜ減ったのか、その原因調査のために個体数調査から
始めた。ある田んぼにはタゲリはよくくるが全然こない田んぼもある。まず、
「田んぼの土質に原因があるのではないか」と予想した。しかし、調べてみる
と、あまり土壌とは関係のないことがわかつた。次に、「えさ以外に原因があ
るのでは」と予想する。グループの人たちは、農業に関する統計資料も調べ
る。そこから見えてきたのは、タゲリの減少と農業人口の減り方との関連であ
る。タゲリ減少の原因は、どうやら、急激に増した「宅地化の波」と「減反政策」
にあると地域の人たちは確信する。
 大切なことは、今ある田んぼを少しでも農家の人に生産してもらうことではな
いかとグループの人たちは考えた。そして、みんなであみだした方法は…、地
域の農家の米を少し高めに買い取る組織作りである。「タゲリ米」というブラン
ド名で全国に米の販売を開始した。
 近年の水田の減少が「生態系を根こそぎ消滅させている」ことへの警鐘とし
て、より多くの人に読んでほしい本である。   
                                2002,11刊 1,300円 
 
      

       『みえないって どんなこと?』
                     星川ひろ子写真文 岩崎書店
 ずっと続いている〈いのちのえほん〉シリーズの一冊である。「ワークショ
ップから生まれた写真絵本」とカバーにある。やさしい語り口調と、的確な
写真で
〈目がみえないってことはどんなことか〉を幼児にも分かるように書かれ
ている。
   
 「やぁ、みんな、げんきに してたかい。
  ぼくの ともだちの めぐみさんを しょうかいするね。
  めぐみさんは、めが ふじゆうです。
  みえないけれど、いろいろ くふうして くらしています。
  おしごとは じどうかんの せんせい。
  きょうは、ひとりで でんしゃに のつて、
  みんなに あいに きてくれしまた。 
  おっと、ちがつた。 ひとりと いっぴきでした。!」
という、書き出しで始まる。アイマスクをして、さまざまな〈見えない〉体験をしてい
く話、目が見えない人と一緒に歩くときの気遣いなども語られる。目がみえなくて
も、手、耳、鼻、舌などでモノを知っていく方法を紹介している。その他、電話機の
ボタンや、テレホンカード、日用品にも、ちょっとした工夫が、目に見えない人のた
めに工夫されていることを紹介している。
 これらを知った子どもたちは、一段と人にやさしくなるにちがいない。
                      2002,11刊  1,300円   (西村寿雄)
 
              「4月新刊案内」