8月 新刊案内

                      ―わたし好みの新刊書評―  8月
『世界がよくわかる国旗図鑑』     講談社編著      講談社
 世界の国々はみんな自国のシンボルである国旗を持っている。その国旗を
ただ眺めているだけでも十分に楽しめる。各々デザインに特徴がありとてもカ
ラフルであるからである。しかし、各国の国旗デザインや色にはその国の強い
願いが込められていることに、ふつうはなかなか気がつかない。そのことを解
説した国旗の本が出た。この本を読むと、国旗からその国の人々の願いや歴
史、政治体制、宗教、などがわかる。2000 年に出た板倉聖宣著『絵とき世界
の国旗』以来の好著である。 
 第1部「研究編」にある「丸と赤と太陽の関係」をのぞいてみると、日本の国旗
のシンボルである○にも他国ではいろんな意味あいがある。パングラディッシ
ュの紅い○は、独立のために血を流した血の色だという。パラオの黄色い丸は、
夜空に昇る満月とのこと。国旗には★のシンボルもけっこう多い。★は「魔よけ
の印」、「独立と自由への道しるべ」などとされている。また、いくつもの★の数が
描かれているのは「団結と統一のシンボル」とのこと。星の数で州の数を表して
いる国もある。最後に「国ってなんだろうね」と問いかけて終わっている。政府の
存在していない国や再建中の国、非独立国と称されている国もある。「国」とい
う概念がむつかしい。
 第2部は資料編で、国旗の横にその国の国名、面積、人口、言語、宗教など基
本データが記載されている。その他、パソコン用サイトも紹介されている。
                            2003,6刊 1,600円 
 
『 ウミウシ 』(たくさんのふしぎ8月号) 中野理枝文・豊田直之写真                                                                            福音館書店 
  海岸で、生き物調査などしていると、なにやらえたいの知れない
生き物に出くわすことがある。その一つが、本の題名になっているこの「ウミウシ」
である。この「ウミウシ」を集めに集めた奇特な人がいる。ダイビングに趣味を持
つフリーライターの女性で、この本の著者である。
 本をぺらぺらめくると、まるで抽象画の世界かと思われるぐらい、カラフルな生
き物の姿が飛び込んでくる。そのカラフルな生き物を一匹一匹眺めていると、少
しずつウミウシの全体像が見えてくる。ウミウシを見ていて気が付くのは、まず
二本の〈角〉。この角のように見えるのは触角で、においをかぐための器官とあ
る。そう思って見れば、固い角ではなくて柔らかそうなヒダになっている。これで
仲間や餌をさがすそうだ。次に特徴なのは、ふさふさした〈花のようなかざり〉を
背後に付けていることである。こちらが鰓で呼吸をするための器官とのこと。な
るほど。
 中には、貝殻を背中に背負ったウミウシもいる。なんと、ウミウシは巻き貝の仲
間なんだそうな。体に張り巡らされた派手な色は「自分に毒があることを周囲に
アピールする」ためらしい。しかし、なんと、ウミウシがウミウシを食べている。な
んという、生き物の〈業〉の世界なんだろう。いや、互いに命を与えあって生きて
いるのだろうか。でも、二匹寄りそって交接している姿はかわいい。この後に、
産卵、孵化をして子どもは一人前になっていくが、ほとんどは魚に食べられると
いう。
 著者には、これからも、益々、ウミウシ探しに挑戦してもらいたい。 
                                   2003, 8刊 700円 

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