―わたし好みの新刊書評―  10月

となりの国の文字 ハングルを読もう』   
                     
 
井藤伸比古著   仮説社
 「この本が科学読み物?」と問われるかも知れない。この本を読んでいくと,
ハングルが楽しく読めるようになることは間違いない。それは,この本には科
学的な認識の手法がふんだんに取り入れられているからである。まずは,〈質
問〉や〈問題〉〈作業〉を取り入れながら,読者をハングルの世界に徐々に引き
入れる。そして,「ハングル」文字の構成,原則が徐々にわかるようになってい
る。ただ眺めているだけではまるでわからないハングルの文字も,この本を読
み終わる頃には,すっきりとその仕組みが見えてくるから不思議だ。まるで,見
えない分子・原子を見る思いである。
 本文では,まずはとなりの国,韓国へ出かけることから始まる。韓国の街角の
文字から,だんだんと「ハングルのなぞ解き」が始まる。やがて「ハングルはど
んなしくみの文字か」に入る。ここから「作業」が加わる。文字表の空欄に今ま
で見た文字を入れていく。なんとなしに,たて,よこのつながりが見えてくる。ハン
グルは,ローマ字の組み合わせのような仕組みで成り立っていることがわかる。
ここで,「バッチム」の仕組みを知る。なかなかうまい仕組みに感心する。最終
的に「あ・か・な・た・ら・ま・ぱ・さ・ちゃ・は」と「あ・お・お・う・う・い」の組み合
わせ,それに「や・ゆ・よ」と「え」がわかれば,ほぼハングルは読める。
 最後にあるこの文字を作った韓国の「世宗大王」(セジョンダイオウ)の話が感動
的だ。やさしい文字を作ろうとして腐心したセジョンの思いと,その後,この文字
を維持して民族の平和を強く願った国民の思いがよく伝わってくる。 
                                2003, 8刊 1,500円 
 
『コウモリたちのひっこし大計画』  谷本雄治著   ポプラ社
 この本は,「コウモリ先生」と愛称のある向山満さんの半生記を描いた本である。
 向山満さんは青森県三戸高校の教員だった。生徒達と,三戸町の生き物調査
をしている間にコウモリのにも興味を持つようになった。その当時は,ほとんどコウ
モリについての分布や生態などわかっていなかった。
 そのような時に, 天間林村にある〈天間舘神社〉の拝殿の屋根裏にコウモリの
大群がすみついて,村ではコウモリ撃退作戦を計画しているという話が耳に入っ
た。「神社が糞でよごれてしまう」「糞の匂いがくさくてたまらない」「ダニやノミが
出る」などの声が次々と村の人から出て,とてもやコウモリの保存など理解しても
らえる状況ではなかった。そこで,向山さんたちは,近くにコウモリの小屋を作るこ
とを思いついた。 自然保護の会のメンバーたちが協力して〈蝙蝠小屋〉は完成
したが,かんじんのコウモリにどうやって引っ越ししてもらうかが苦心の連続だった。
「コウモリのふんやおしっこのしみこんだ神社の古い板をはめる」「コウモリの糞を
といて屋根裏や屋根にぬりつける」などなど,生徒たちと共に苦労を重ねた。いよ
いよ,300匹ほど捕獲して〈初移住〉させたが,みんな神社に舞い戻ってしまった。し
かし,あくる年に…。
 この本は,向山さんの〈コウモリ人生〉を描いてはいるが,同時に〈蝙蝠小屋〉を作
る時のノウハウが書かれている。近年,各地でコウモリの苦情が絶えない。コウモ
リと人間との共存の可能性を知る上で参考になる本でもある。 
                                    2003, 8刊 950円 

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