―わたし好みの新刊書評―  12月
『わたしもファラデー』    板倉聖宣著       仮説社
ファラデーの科学読み物というと『ローソクの科学』が一般に知られているが,
「ファラデーの研究は『ロウソクの科学』を読むよりも,はるかにおもしろくて感動的
なのです。」と著者は断言する。そのおもしろくて,感動的な実験の数々をこの本で
は紹介している。さてさて、ファラデーはどんな実験をしたのだろうか。
 最初の一,二章はファラデーの研究者への道のりが記されている。デーヴィーと
いう優れた研究者にめぐりあえたことがファラデーを大科学者に変身させた。「い
い科学者にめぐりあうことが大切なんだ」と著者は言う。
 いよいよ第三章「安全ランプの発明」からが〈発明〉の登場である。炭坑での爆
発事故から,その気体を割り出し,爆発のメカニズムを解明し,安心して使えるランプ
の考案までする。さらに,気体液化の研究にまで手をひろげていくのがすごい。
 ファラデーの研究で面白いのは電磁気の研究である。その数々が第四章から紹
介されていく。ファラデーが〈モーターの発明〉にたどり着くまでの思考の過程が四
人の子どもたちの対話によって語られていく。読者もファラデーになった気分で楽
しく考えていける。著者の出した〈問題〉を考えながら,電磁誘導という難しそうな理
論にも難なく到達できる。その後の章で,〈半導体〉や〈光の磁化〉〈反磁性〉にもファ
ラデーが研究の手をのばしていたことが書かれている。ファラデーの多彩な研究に
驚くばかりである。
 みなさんも,ファラデーと一緒に研究を楽しみませんか。  2003,11刊 1,800円
 
『ひっつきむしの図鑑』 
       北川尚史監修 伊藤ふくお写真 丸山健一郎文 トンボ出版
 〈ひっつきむし〉というおもしろい名前の図鑑が出た。
 ひっつきむしは「服について困る〈厄介者〉として嫌われることもあるようだが,いろ
いろな種類があり,それぞれ個性的な植物たちだ。観察してみるとけっこう面白い。」
と〈はじめに〉に書かれている。その通りだ。
 最初に「ひっつきむしのタイプ分け」が書かれいている。「堅いフック型」「柔らかい
フック型」「逆さトゲ型」「イカリ状のトゲ型」「ヘアピン型」「粘液型」と六つに分けられ
ていて見分けやすい。「なるほど,それぞれ特徴のある型だな」と確認できる。次の
「ひっつきむしの生える環境」では,〈町のひっつきむし〉〈山のひっつきむし〉と分けら
れているがどちらもおなじみのものが多い。次の「ひっつきむしの形で名を調べよう」
で, ひっつきむしの一覧が写真で紹介されている。「なるほど,こんなにも〈ひっつきむ
し〉があるのか」と改めて眺めていられる。
 そのあとは,個々の〈ひっつきむし植物〉の紹介になっている。全体の生育状態の写
真や,花の写真,実の付いている枝の写真,実の拡大写真,実の中のタネの写真など,い
ずれもきれいな写真で仕上がっている。所々に囲み記事があり「面ファスナーの発
明」「ひっつきむし遊び」などが紹介されている。最後に〈世界のひっつきむし〉〈ひっつ
きむしの方言〉などの記事もある。見ていて楽しい本である。
                                     2003, 9 刊 2,800円 

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