―わたし好みの新刊書評―  4月
 
『鳥の巣』(たくさんのふしぎ)        鈴木まもる   文・絵
 この著者には,別に『鳥の巣の本』(岩崎書店)という著書があり,そこでもくわしく「鳥
の巣」の紹介はされている。しかし,前著は鳥の巣の形態や巣材の紹介が主で,どち
らか言えば〈鳥の巣の図鑑〉というタイプだった。
 この本は「外国の鳥の巣」を主に紹介しながら,鳥たちの巣作りの工夫のあとがわ
かりやすく紹介されている。「外国の鳥の巣なんてお目にかかることはないし,興味が
ない」と思われる人にはぜひおすすめの本である。
 最初に,奇妙な底抜けとっくり型のもじゃもじゃ袋?の写真が出る。「これはなんだと
思いますか?」と問いかけられるが, 初めて見たら思わず〈?〉と首をかしげる。なんと
鳥の巣だ。中の構造を見てびっくり。ここまで鳥は考えて巣を作るのかとしばし感心
させられる。これらがたくさん木にぶら下がっている光景は一段とユーモラスだ。巣作
りの手順を見ると一段と〈知恵者〉であることがわかる。
 次に驚いたのは,木の葉をクモの糸で編んでいる巣である。一枚の木の葉を丸めて
クモの糸で丹念に編み上げている。いくら器用といっても,くちばし一つで,木の葉に小
さい穴を空け,そこに糸を通すというような離れ業がどうしてできるのだろうか。ちょっと
あぶなっかしい木の葉に,心地よさそうに雛が入っている姿も滑稽である。
 その他,何十羽も集まって集団の鳥の巣アパートを作る鳥とか,偽の入り口を作って
敵の侵入をごまかしている巣とか,ユニークな巣の紹介がもりたくさんある。
 鳥たちの巣作りの多様さ,器用さが鮮明に描かれている楽しい本である。
                        福音館書店  2004年3月刊 700円

『草花とともだち』    松岡達英構成 下田智恵絵と文
  松岡達英さんと下田智美さんの本が久しぶりに出た。下田さん独特のファン
タジックな雰囲気に包まれての春の草花探検図鑑である。

 まずは,初春の野原へ。タンポポ, ジシバリ, コオニタビラコ, ハハコグサ, カタバミと
〈黄色い花〉がまず目に入る。なぜかオオバキスミレ,ミツバツチグリなど特異な草花
も登場する。続いて〈白色の花〉の登場である。シロツメクサ, ナズナ, ハルジオン, シ
ロバナタンポポ等々。ヒメウズなどというあまり聞かない植物もある。続いて〈青色の
花〉。オオイヌノフグリ, キュウリグサ, フデリンドウなどと少ない。〈紫の花〉は意外と
多い。スミレ類を筆頭に, スズメノエンドウ, カキドオシ等。ひょこんとアケビの花が登
場するのがおもしろい。〈紅い花〉は意外と多い。カタクリ, ヒメオドリコソウ, カラスノ
エンドウにノアザミ, ホトケノザ。やはり春の花は色とりどり多彩だ。
 少し樹木の花が登場して,ちょっと草花クイズ,ここがこの本のおもしろいところ。 あ
とは,「水辺の植物と生きものたち」「春の野山のきけん」と続いて,簡単な山菜の食べ
方の紹介。後半にある「春の草花あそびノート」でちょっと遊べる。「おし花カード」「ド
ライフラワー」など楽しそうなアイデアもある。
 子どもと一緒に春の野原を楽しみたい人にはうってつけの本である。
                      偕成社 2004年1月刊 1,500円 

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