―わたし好みの新刊書評―  8月

「まんが 地球大進化」 46億年・人類の旅 @
   『生命の星 大衝突からの始まり』
 
           小林たつよし・まんが NHKプロジェクト編 小学館
 「まんがは科学読み物か」と問われることがある。読み物でないにしても,
マンガで子どもの科学心をくすぐる効果は大きい。特に,地質,宇宙,原子,分
子など,空想をともなう科学分野ではマンガは有効な働きをする。きちんとし
た内容を持つマンガなら,大いに推奨できる。
 この本は,NHK「地球大進化」プロジェクトの編でNHKスペシャル番組から
生まれている。場の設定としてはNHK制作室見学というスタイルを取ってい
る。
 この本は, 地球誕生の激動のドラマがくまなく描かれている。第一章は
「激しかった地球誕生」で, 20個もの原始惑星の衝突でこの地球が生まれた
場面が出てくる。月の面がいつも地球の方を向けている理由もうまく説明さ
れている。第2章は「全海洋蒸発」。直径400Kmもある大隕石が地球に衝突
したとか,迫力あるシュミレーションで描かれる。第3章で「逞しかった地球」
になり, 43億年前の岩漿に閉じこめられていた水にも微生物がいたとか,逞
しい生命の存在がくまなく描かれている。
 読み終えると,46億年前に誕生した〈地球〉は荒れ狂う星だったにもかかわ
らず生き抜いてきた〈生命〉があったからこそ,こうして今の自分が存在してい
ることに,なんともいえない神秘な運命を感じる。
 別に,単行本としての『地球大進化』(NHK出版)もある。
                                   2004年5月 950円 
 
『昆虫図鑑』みぢかな虫たちのくらし  長谷川哲雄著 ハッピーオウル社
 今までにも, 『のはらのずかん』『木の図鑑』など, 植物の図鑑を出してこら
れた長谷川哲雄さんが今度は昆虫図鑑を出された。長谷川さんは,もともと農
学部出身の昆虫の専門家である。一つ一つの丁寧な淡い絵がすばらしい。
 長谷川さんは以前から生き物全体の〈相互関係〉を重視してこられた。今回
も「種類も豊富で,色彩や形態も生態も多様な昆虫は,見ているだけで飽きま
せんが,その多様さの意味は,自然の中での生き物どうしの関係という視点で
捉えてこそ理解できるものですし,そうやって生き物の世界を探るのは,とても
楽しいことです。」(あとがき)と書かれている。それだけに項目も,「春の花と昆
虫」「初夏の花と昆虫」「夏の花と昆虫」「秋の花と昆虫」「植物を食べる昆虫」
「昆虫の食草と食べあと」「樹液にあつまる昆虫」「池や沼の昆虫」「川にすむ
昆虫」など,植物や環境との関係でまとめられている。なかでも「昆虫の食草
と食べあと」は4コマ(8頁)も使って豊富に描かれている。卵から幼虫,成虫へ
と昆虫の生活史がよくわかる。ふだん,木の葉についている幼虫にはよくお目
にかかるが,なかなか成虫の姿が思い浮かばない。そういう人には参考にな
ることが多い。
 〈およそ600種あまりを紹介しました〉とあるように,種の数は少なめである。
ふだん見慣れているチョウが描かれていない面もあるが,まずは眺めるだけ
でも楽しい絵本である。               
                            2004年5月刊 1,580円 

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