新刊案内         2005年 1月    
            
   
 『富士山の大研究』     
                        江藤初江著 PHP研究所
児童文学者の著者が,富士山にまつわる様々な資料を駆使しながら
〈富士〉の歴史を語っている。〈富士山〉という大自然のいとなみに人の
歴史をからめた楽しい本である。富士山とかかわる日本人の心の断面
も読み取れる。
 「富士山という名前は,いつ,だれがつけたのか」,「不二」「布士」「不死」
「福慈」などいくつもの感じの意味がおもしろい。『竹取物語』は富士山が
舞台だったとか。 美しくそびえる富士の姿は一皮むけば三層の火山で
あることは今までも知られていた。それが,なんと最近の研究では4層の
〈小富士〉からなっていることがわかったという。まさに「富士山の中に富
士山がある」である。時には,二つの富士が両立していたとか。今の富士
山の姿から想像できないが,富士山も何度もの大噴火を繰り返し幾重もの
火山灰層で埋められている。こうした富士山の噴火の歩みを読むと,富士
山は活発な活火山であることが強く印象づけられる。富士山噴火の経過
が幾人もの文人によっても詠まれてきたことや,富士山が修験道場として
長く信仰の対象とされてきたこともくわしく書かれている。富士山は〈神〉
〈仏〉のシンボルでもあった。
 遠くから見る雄大な富士もそのすそ野は荒々しい。大沢崩れからの土石
流は絶えることがない。富士山測候所所員の話や強力の話は身につまさ
れる。「富士山はなぜ世界遺産にならなかったか」は,国民につきつけられ
た大きな課題である。富士山噴火の時期も確実に近づいてきている。これ
も,忘れてはならない。              2004年11月 刊 1,250円
 
 
 『土と石のじっけん室』 
                    地学団体研究会編  大月書店

子どもたちだけでは地質的な内容で心を動かせる機会はなかなかつか
めない。しかし,見るポイントがわかってくると子どもたちは意外と強く石や鉱
物に興味を持ってくる。この本は,子どもたちが土や石ころや鉱物について
興味深くかかわれるポイントをいくつも紹介している。中味は,いずれも地学
団体研究会に所属する現場の教員達によって書かれている。
 第1項は「土のじっけん室」。土だんごや粘土遊びなどの他に「土の中の空
気を調べよう」や「土を燃やしてみよう」など興味深い作業もある。「土の中の
生きもの」など土壌にも興味を持つように内容が続いている。
 第2項は「鉱物のじっけん室」。〈砂鉄を集めよう〉〈砂鉄で絵をかこう〉などの
遊びの紹介の他,鉱物を使った〈実験〉の紹介もある。「砂鉄から鉄をつくろう」
では比較的簡潔な鉄作りの方法が紹介されいる。また,「黄鉄鉱でラジオをつ
くろう」も興味深い。「火山灰から鉱物さがし」などでは簡単に鉱物の形を見る
ことが出来る。そして,鉱物の固さ比べや割れ方の不思議にふれている。
 第3項は「石のじっけん室」。石を焼いたり溶かしたり偏光板で雲母を観察す
るなど,楽しそうな話題が続く。最後,第4項「土や石がだいすきになろう」で,地
球の歴史やくらしとのかかわりを紹介して,この本を結んでいる。
 たくさんの具体的な手法で,子どもたちに石や土や鉱物に親しんでもらおうと
いう意気込みがよく伝わってくる。    
                            2004年9月刊 1,800円

                    
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