―わたし好みの新刊書評―  2005年1月
 
『ツノゼミ』(たくさんのふしぎ)  
                   
 森島啓司文・写真 福音館書店
 ツノゼミ? 昆虫の専門家ではないけれど,長年虫たちとも意識的につき
あっていたのに初めて聞く名前である。動物図鑑を見ると,確かに〈反翅目
 ツノゼミ上科〉とある。ようは,吸水型の口を持った昆虫の仲間で,セミ,ヨコ
バイ,カメムシ,カイガラムシ,サシガメ,アメンボ等と同類というわけである。
 この本の著者がたまたま仕事で南米のペルーに行って,この本に紹介さ
れているたくさんのツノゼミを写真に収めた。体長 5〜10mmの小さな昆
虫で,それらが見事なクローズアップ写真で紹介されている。ツノゼミの特
徴は,胸部の前半が異常に肥大化し,ものによっては〈立派な角〉を持って
いることにある。こんな奇妙な虫たちがいることに正直驚いた。数々のツ
ノゼミの不可思議な姿もさることながら,ツノゼミの子育ての習性もおもし
ろい。アリとの共生関係にあるのもうなずける。著者は「どうしてツノゼミが
こんな特異な形の〈角〉を持つようになったのか」と疑問を投げかけている。
体が小さいので,天敵を威嚇する姿にだんだん〈進化〉していったのではな
いかと思うがどうだろうか。
 当初,ぺらぺらとこの本を見た時,ツノゼミなどというのは海外の特異な昆
虫だと思った。ところが,読み進めていくと日本にもいるという。リョウブの枝
やヨモギにもついているらしい。今後注目していたい。

                           2005年1月 刊 700円 

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