2005年3月   新刊案内

 『クジラ』      水口博也著    金の星社
 見開きの写真にまず目をうばわれる。光の芸術を描きだす潮吹きの一瞬,
海面から空高く頭を突き上げる集団餌取り,激しい水音が轟きそうな尾びれ
の迫力,飛び散る黄金色の水玉,どれをとってみても見事な写真である。これ
だけ接近して何度もクジラを追いかけてきた著者ならではのクジラ物語が書
かれている。
 まず「潮吹き」の話がある。〈潮吹き〉とは字のごとく〈潮を吹き出している〉
と思いがちだがそうではない。クジラのどういう作用が〈潮吹き〉を起こしてい
るのだろうか。くわしく書かれている。著者はぐんとクジラに近づいて,噴気の
瞬間をとらえている。二つの鼻孔が見事に撮し出されている。よく見ると,クジ
ラの鼻は頭部の上に付いている。しかも,後方を向いている。「なるほど」,これ
なら泳ぎながもらくらくと呼吸ができる。それにしても,見事に水中生活に適応
した体型である。
 「豪快なえさとり」でも迫力ある場面が描き出されている。「海面のクジラは
,だれもが巨大な口をひらいて,ブラシのようなヒゲ板を見せています。」とある。
その口の間にニシンの群れが銀色にかがやいている。また,鰯の群れを仲間
と協力して一カ所に寄せ集め,水中から鰯の群れにつっこんですくい上げると
いう。これでいくと,一度に大量の鰯の群れを飲み込める。水面に立ち上がっ
たクジラの喉もとが蛇腹のように大きく広がっているからすごい。こうしたクジ
ラの知恵をたくさん読み取ることが出来る。                     
                           2004年12月刊 1,200円  
                               
藤井旭の天体観測教室』      藤井旭著    誠文堂新光社
 最新の情報を取り入れた天体観測に便利な本が出た。類書は多いが,デジ
カメやコンピューターともつなげて観測が楽しめる方法も簡単に書かれている。
中高校生以上の天文ファンには便利な本である。
 最初に「天体観測の用具」が書かれている。望遠鏡や双眼鏡の他に,〈天文
ガイド〉〈星座早見盤〉〈カメラ〉〈パソコン〉なども並ぶ。そのあと,「天体望遠鏡の
選び方」「天体望遠鏡の使い方」などの解説がある。最近の自動追尾式架台の
説明もある。少し面倒ではあるが大切な反射望遠鏡の調節の仕方もある。
 後は,各天体の観測と撮影方法の解説に入る。月の観測は比較的し易いが.
難しいのは太陽面観測である。太陽黒点の観測や記録の仕方はくわしく書か
れている。ソーラースコープという〈太陽望遠鏡〉の紹介もある。次に,よく話題に
なる日食の観測と記録の方法が紹介されている。日食を,望遠鏡で見る方法や
木漏れ日観測の方法,ビデオ撮りしてみんなで楽しむ方法など多様な紹介があ
る。
 次に,金星,火星,木星などの惑星観測の方法が続く。木星のガリレオ衛星の観
測などはおもしろそうだ。土星の観測も楽しそう。土星の輪もさまざまな姿を見せ
る。その他,流星,彗星,人工衛星,二重星,星雲・星団の観測と一年中星空が楽し
める。
 最後に,各季節毎の主な夜空の紹介がある。資料としてメシエ天体のリスト,詳
しい星図などもつけられている。クラブ活動などには活用できる。   
                               2004年12月 刊 2,200円 


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