―新刊書評―      2006年2月
 
                 
『カステラ、カステラ!』 (たくさんのふしぎ 2月号)
                明坂英二文・齋藤芽生絵 福音館書店
今では,高級菓子として人々に親しまれているカステラ物語である。

カステラは西洋伝来の菓子であることは容易に想像がつく。では,いっ
たいいつごろどのような経路で日本に伝わったのか。明治時代だろう
か。大正時代だろうか。
 明治の西洋文明と共に伝来したという予想は見事に覆させられる。
カステラの日本への伝来はなんと江戸時代半ばである。今から450年
も昔,東洋への布教と貿易ルートを求めて日本にたどり着いたポルトガ
ル人が伝えたものだった。当時,ポルトガル人たちは平戸や長崎にた
どり着き異国での布教活動を始めた。その時にポルトガル人たちが持
っていた菓子が「パン・デ・カスティーリャ」。そこから,「カステラ」という
名前が広がった。黄色いとろけるような甘い菓子だった。
 この甘い菓子がやがて九州西部でも作られるようになった。それに
はまた長崎の菓子職人たちのすばらしい工夫があった。ヨーロッパに
はエジプトから伝わったという〈オーヴン〉があった。しかし,日本にはそ
のオーブンがない。長崎の菓子職人たちは工夫に工夫を重ね,鍋の上
にも炭火を置いて,中に入れた生地を上下から焼き上げる方法を考えた。
まさに,日本的なアイディアであった。
 その後,アメリカからやってきたペリー提督も,そのおいしいカステラを
初めて口にしたという。本文に,「長い年月と,広い大洋を,ひとつに結ん
だ2つのカステラ」とある。なかなか規模雄大な菓子物語である。
 
                                  
2006年2月刊 700円
 
『谷本記者のむしむし通信』 谷本雄治著 下田智美絵 あすなろ書房
 著者は,虫好きの新聞記者。その著者が,「むし」を飼育したときの話が
中心になっている。いろんな虫たちの飼育につれて,著者の子どもも登
場してきて対話調に話が展開する。子どもが登場することで,ずいぶんと
親しみやすく感じる。
 内容としては〈うどんげの花〉クサカゲロウ,〈畑のどじょう〉サンショウウ
オ,〈松風を呼ぶ虫〉スズムシ,〈異国の暴れんぼう〉ジャンボタニシ,〈庭の
舞姫〉アゲハチョウが登場する。いずれも,著者が飼育した観察記録であ
る。
 「なんか、ナイフみたい」
 息子はそう表現しました。 
 「まあ,二、三日、ようすを見てごらん」
 今度もいじわるをして、息子に自分で答えを見つけさせることにしました。
 数日後。息子のうれしそうな顔がぼくの前にありました。 
 「あのナイフが前あしになった!」
 でも、どうして前あしからから生えるのでしょう。理由があるはずです。
 「前あしをどう使うのか、よく観察しろよ」
 ぼくは、次の研究テーマをあたえました。
という調子の文で,気軽に読める。虫好きの小学校高学年以上ならどん
どん読めるのではないか。
 
                                     2005,10刊 1,300円  

                  新刊案内06-02