新刊案内 2006年7月
 
『クサレケカビのクー』(たくさんのふしぎ)
         越智典子文・伊沢正名写真  福音館書店

語り手の軽い語りと美しい写真で,汚いカビのイメージを取り除い
てくれる本である。
 「クサレカビのクー」と「わたし」との対話形式で話は進む。
 「わたし」は最初、こんな言葉で「クー」にしゃべりかけた。
 「〈カビはきたなくて気持ちわるいし、くさいし、体に毒だし〉
思い浮かべるだけ  で、ぞっとしちゃう」
 「そんなあ、あんなにきれいなのに…」
 すぐに、カビの「クー」は返答する。
 「クー」に案内されて,「わたし」はカビの世界を見て回る。一
つ一つ拡大されたカビの姿(写真)はほんとにきれいだ。
 「カビがあちこちで、おいしい食べものを囲んでビクニックして
  いるの」
 「カビは、ほんの少し、食べ物をわけてもらいたいだけなの」
と,「クー」は語りかける。
 カビのおかげで、生き物の死体も土にもどっていること、鰹節やみ
そ、しょうゆ,お酒など,人もかびを利用していることを知らされ,
「わたし」もカビがより身近になってくる。
 あっさりとした語りで,美しいカビの世界を道案内している本である。
神奈川県立生命の星・地球博物館の出川洋介さんが監修をしている。

                          
 2006,7刊 700円 

『草木染めの絵本』
         やまざきかずきへん・かわかみかずおえ 農文協 
  
 このシリーズの主旨は「家庭や学校で失敗せずにつくるワザと極意を
ていねいに手ほどき」「歴史と文化を実感」することがねらいとされて
いる。
 片や,著者の山崎和樹さんは父青樹氏の技能を学び大学で専門的科学
的研究をこなした〈学術博士〉でもある。それだけに,最低限必要な情報
とすぐに役に立つ実践的な草木染めの方法とがまとめられている。
 最初の数頁は,草木染めの意義と歴史に触れられている。人類が自然の
素材を利用して豊かな暮らしを育むもとに草木染めがあったことがわかる。
古代エジプト文明にはすでに藍染めがあったという。インドでは早くから
木綿の染色技術が進歩していた。日本では,万葉から摺り込み術が芽生え,
江戸時代には多様な文様入り衣服が流行したとか。粋な江戸の人々の生活
術がしのばれる。続いて書かれている「身近な染料と色見本」は見開き2頁
でうまくまとめられている。植物と媒染法と色の関係が一目でわかる。
 頁の後半は,実際的な草木染めの方法がいくつか写真入りで解説されてい
る。「絹のハンカチをクチナシで染めてみよう」「お茶がらを染料に,コー
スターを染めてみよう」など,ちょっとやってみたい素材ではないか。  
 草木染めをくらしの中に取り込むことによって「自然の恵みを味わい楽し
む〈感性〉と〈美意識〉を磨くことが出来る」と著者は語る。
                                         2006,4  1,890円
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