新刊書評  2006年10月
 『幻のカエル』 キュメント 地球のなかまたち       
                       
 大木淳一著  新日本出版社
 「(声はすれども姿が見えない)幻のカエル」, 博物館に勤める著者が8年か
けたこの幻の蛙研究物語である。著者の専門は地質学。地質学者ならでは
の著者の〈目〉が「幻のカエル」の居場所をつきとめさせたというおもしろいと
りあわせの本である。
 3月の上旬,千葉県にある養老川の上流を地質調査をかねて著者は歩く。
すると,なにやらあやしい声。
 「   グゥォ! グォッ! グォッ!  グゥォ! グゥ!
   わたしがいつものようにハンマーで崖をコンコンとたたいてみると…
     グゥォ! グォッ! グォッ! 
   まるでトイレのドアをたたいたように『入ってますよ〜』と返事がありました。」
 そこで,著者は岩石のすき間にペンライトを当てて見ると…,『いた!』。凛々し
い顔つきの赤茶色の蛙が居座っていた。幻のタゴガエルである。続いて卵塊
も発見。
 ここで,著者は, タゴガエルの棲み家は「せまい空間で,水がわずかだけどず
っとしみだしているグジュグジュした環境」であることをつきとめる。
 そこからが地質学者。こういう空間は砂岩と泥岩の境界部分であることに気
がつく。下部の粘土層の上にだけ水がしたる。そこの割れ目をうまいぐあいに
タゴカエルが棲み家として利用いる。
 幅広い自然観で自然と向き合っている学芸員さんならではの本である。                                 2006,8刊  1,400円
 
こどものダンボール工作』 レディブティックシリーズ 
 尾田芳子著  ブティック社
 いつでも手軽に出来るアイディアの詰まったダンボール工作の本である。ダ
ンボールを使った工作の本はたくさん出ているが,この本はパッと見てカラフル
で仕上げもきれいだ。作品例も多い。子どもが集まる場所などでは一冊あれば
便利な本である。。
 最初に「ダンボール工作のコツ」という頁がある。きれいに仕上げるためにも
,このページにはしっかりと目を通しておきたい。道具としては,主にはカッターナ
イフとはさみを使うのだが,ちょっとしたコツがものをいう。カッティングマットや安
全定規などがあれば作業を助ける。貼り合わせには,ボンドの他にテープのり,
両面テープ,装飾用テープなどがいる。材料としてのダンボールも,普通のダン
ボールの他に片面ダンボールもある。その他,厚紙,画用紙,折り紙,タコ糸,セロ
ハン紙,ビーズ,竹ひごなどもその場に応じて補足的に利用する。
 作品例としては101点紹介されている。「おもしろ貯金箱」「くるくる回せ! 万華
鏡」「走れ! はたらく車」「ティタイムを楽しもう」「焼きたてをめしあがれ!」「転がし
て遊ぼう!「かんたんおもしろインテリア」「使い方はいろいろ! 小物入れ」など,遊
びに使ったり,置物にしたり,小物入れにしたりと多彩なバリエーションがある。そ
れぞれに, カラーの作品例の他にくわしい作り方が書かれている。
 子どもたちとのコミニュケーションに大人も一緒に作ってみては。
                            2006,7刊  950円(西村寿雄)

                  新刊案内10月