―新刊―       2007年7月

『ハクチョウ』(北国からの動物記)      竹田津実文・写真 アリス館
 北海道の地で長年野生動物と向き合ってきた著者が,ハクチョウの生活を丹念
に記録した写真集である。
 ハクチョウは,夏場はシベリアで子育てし,冬が近づくと寒さを避けるために日本
列島の各地に南下してくる。なかでも北海道の各湖沼はハクチョウたちの楽園とな
る。 日本もいよいよ寒さが増してくる10月から話が始まる。10月になると大挙して
ハクチョウたちが日本の湖にやってくる。たくさんのハクチョウたちの〈顔写真〉が並
ぶ頁がある。ハクチョウの顔も一匹一匹特徴があるのだという。いったいどこが違う
のだろうか。「嘴にある黄色と黒の模様(面積や形)がみんなちがう」とある。なるほ
ど,みんな嘴の色形は微妙に違う。今まで「見れども見えず」だった。
 ハクチョウは群れで飛んでいる場面が印象的だ。しかし,ハクチョウたちの普段の
行動は,2羽か,子連れの数羽だという。ハクチョウは常に〈夫婦〉か〈家族〉で行動
しているそうだ。居眠りも餌取りもペア,なかなかほほえましい光景だ。
 ハクチョウはなんと言っても体重10Kg以上の大型鳥類,飛び立つときや着地の光
景は迫力そのもの。ジェット機並みの滑走をする。そんなハクチョウも急な寒波が命
取りとなる。一夜に水面が氷ってしまうと身動きできなくなるからだ。寒波で一度に
500羽も死んだこともあるという。春が近づくと〈恋の季節〉,ハクチョウも美しい姿に
変身する。やがてシベリアへ飛び立っていく。
 動物写真家である著者の温かい目で見つめた写真がさわやかで良い。
                           2007,02刊 1,400円
 
『天体観測の達人』            鶴浜義治著 PHP研究所
 著者は「つるちゃんのプラネタリュウム」など,Webで天文情報をたくさん公開して
いるアマチュアの天文愛好家である。星の本も多いが,いつも同じパターンで,わか
りにくさがつきまとうことが多い。その点この本は,初心者でも夜空に関心を持って
親しめるようにいくつかの工夫がこらされている。
 まずもって,活字が大きく文章も簡潔で,とにかく読みやすい。小学生でも十分に
読める。次の特徴は一つの話が4頁仕立てになっていることである。初めの見開き
2頁は読者がヒントをたよりに夜空の星座を探し出すページになっている。そして,
次の見開き2ページに同じ夜空の星図が描かれ,描かれている星座に関する話題
が書かれている。こういうパターンで各期四つの場面が展開する。このように,この
本では読者が自分でまず星座を探し出すという過程が組みこまれている。
 「春の星座をたどっていく第一歩は、まず北斗七星を見つけることです。
  まだ、夜空が冷たい春先ごろ、北東の空を見あげてみてください。空
  の中ほどにある、七つの星が見つけられますか?」
と,春の星空への誘い文が書かれている。読者は見開きページにある夜空の写真
を見ながら北斗七星を確認していく。次に,北極星へと進む。こうして,各季節それ
ぞれ4場面の星空を探検できるように書かれている。
 各季節の終わりにつけられている「星座のちしき」,「神話のちしき」や後半に付け
られている「情報」も参考になる。 
     2007,02刊 1,900円 (西村寿雄)

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