―わたし好の新刊―       2007年9月

『地震と津波』(知の森絵本)        都司嘉宣監  素朴社
 地震と津波に関する絵本がまた一つ増えた。2004年のスマトラ沖地震
による津波被害以来,何冊かの啓蒙書は出ている。今回の本は,地震や
津波の起きる原因についてもかなりくわしく解説されている。絵本にしては
かなりて多くの情報が書かれていて難解な用語もそのまま入っているの
で中学生以上向きである。しかし,大人が子どもと共に読むにはいい本で
ある。
 最初に地球の中身の解説から入り世界のプレートの図を示している。世
界の地震発生箇所も示して,日本列島の地震は「4枚のプレートが複雑に
重なっているためです。」と解説している。日本が地震大国である根拠が
地球規模でわかる。
 次に,地震の種類の話に入っている。地震の種類については少し細部
にわたりすぎの感じもする。津波と関わってくるプレート境界型地震が理解
できればいい。〈サイレント地震〉という最近の学問の成果を紹介している
が,実際の地震とどうかかわっているのかの解説がほしい。〈地震波の伝
わりかた〉のS波,P波はイメージとして受け止めればいいのではないか。
この項での「震源はどっち?」はおもしろい。墓石の倒れ方と地層のずれ
との関係を示している。〈震源地の求め方〉もわかりよい。
 次は,津波の話である。〈津波のしくみ〉,〈どんどん大きくなる津波〉はか
なりていねいに書かれている。小さな地震でも大きな津波を引き起こす理
由が読み取れる。
 後半は,さまざまな地震対策の現状や,地震・津波への心得が書かれ
ている。「稲むらの火」の話もある。一家に一冊は置いて,時々,一家で読
み返すのにいいのではないか。               
                              2007,08刊 700円
 
『からくりアイディア工作』        矢野真他  くもん出版
 夏休みが近づくと多くの工作や科学遊びの本が出回る。どの本も似たり
よったりの感がする。しかし,この本は,ちょっと趣向を変えて〈からくり工作〉
の本である。作った作品から,昔から伝統玩具に伝えられてきたからくりの
仕組みが理解できるし,動きのある工作が楽しい。全体に紙や細木を中心
とした比較的作りやすい材料で作れるのが強みである。表題には〈中高学
年向き〉とある。
 この本の最初に
 「本書で紹介するからくりは,古くから伝えられてきた日本の伝統玩具をも
とに,今身近で用意できる材料を利用して作る工作集です。本書で紹介した
材料以外でも,もっとピッタリのものがあるかもしれません。身近なものの中
から,最良の材料をさがすのもくふうすることの楽しさです。創造性をいっぱ
い広げて,からくりにチャレンジしてください。」
と書かれている。アイディアがわかれば学年に応じて,木材など多様に使っ
た工作にも挑戦できるのではないか。
 第1章 「かんたんなしかけで、ゆかいな動きをするおもちゃ」
 第2章 「思いもしない動きや変化で、アッとおどろくおもちゃ」
 第3章 「一人より、二人、三人で遊べばもっと楽しいおもちゃ」
と,分かれている。いずれも楽しそうだ。
                      2007,07刊 1,000円 (西村寿雄)

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