―わたし好の新刊―       2007年11月
 
『どこにいるの?シャクトリムシ』     新開孝文・写真 ポプラ社 
 シャクトリムシの楽しい写真本が出た。著者は『ヤママユガ観察事典』など,
いくつもの昆虫写真本を手がけているベテラン写真家。農学部出の昆虫専門
家でもある。
 この本は,一言,二言言葉が添えてある写真集であるが,語り口調の楽しい
話が最後まで連続している。幼児から大人まで楽しめるのではないか。
 最初は,里山にある雑木林の写真。こんなところにシャクトリムシが潜んでい
るのかと,シャクトリムシが身近に感じられてくる。
 最初のご登場は
   「はるに なって きの めが ひらいた。」「おや?」。
新芽になにやら枝のようなわき〈枝〉がある。よく見ると虫だ。〈足〉のような突
起が外側に出ているので,一瞬〈虫〉とは思えない。でも,頭は…,確かに昆
虫の幼虫だ。次は
 「からだを ちぢたり のばしたり、ちぢめたり のばしたり。」
と,愉快なシャクトリムシの足取りが連続写真で紹介される。なるほど, 〈ちぢ
めたり のばしたり,ちぢめたり のばしたり〉だ。続いて
 「いろんな いろや もようの なかまが いっぱい。」
と出る。一口にシャクトリムシと言っても,いろいろいるものだ。
 「シャクトリムシは、はやしの にんじゃ。」
へと続く。それにしても,シャクトリムシはものの見事に〈変身〉して,我が身の
ありかをまぎらわせる。
 「かれた はなに そっくり」や「とりの フンに そっくり」
にはまったく脱帽だ。進化とはいえ,すごい能力だ。
 最後に,シャクトリムシさがしのアドバイスもある。写真もお見事。雑木林の探
索が楽しくなりそうだ。                 2007,06刊 1,200円
 
『建築家になろう 家が町や都市をつくる』   樫野紀元著 国土社 
 著者の肩書きには「建築社会学者」とある。建築の専門家と同時に,広く日本
建築の良さをアピールしている建築アドバイザーでもある。この本では,子どもた
ちに家づくりのすばらしさと設計の楽しさを簡潔に伝えている。やさしい語りかけ
口調の文で,読みやすい。
 〈第一章 建築家の仕事〉では,まず「建築家になろう」と呼びかける。「家づくり
で考えること」では,地震に耐える家とともに〈陽光〉と〈そよ風〉を大切にする。
〈第二章 健康な身体のための建築学〉では,できるだけ自然素材の使用を訴
える。「木や石の自然素材は,建築材料の王様といえるでしょう」と語る。さらに
「自然をとりいれた家づくり」を提唱する。そこでは,旧来からある日本の〈パッシ
ブ空調=自然空調〉の良さを強調している。「自然とともに生活する,これが,私た
ちが健康をたもつ上でなによりも大切なのです。」と結んでいる。〈第三章 住み
心地のよい家づくり〉では,ストレスを与えない家づくりをめざし,「将来を見すえ
た設計を考えよう」と呼びかける。〈第四章 安全な家づくり〉では耐震構造の話
から入っている。「家を矩形にし,四すみや部屋のすみに壁をつけて…」「私たち
は,自然のめぐみによって,心の豊かさを得ることができるのです。」と語りかけ
る。〈第五章 心をこめてつくる〉が著者の最もいいたい所。町並み景観にもふれ
ている。「一軒一軒の家は,社会を変える魔法の力をもっています。」と結んでい
る。                      2007,9月刊 1,200円 (西村寿雄)


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