―わたし好の新刊― 
                                20081

『ミクロの世界にズームイン』
          
阿達直樹・岩永浩・元島栖二著 文研出版     

  この本は,電子顕微鏡で見た微細な構造写真350点をそろえ
た集大成本である。

「ミクロの美しく,不思議な世界を旅しながら,生物を進化さ
せてきた驚くべき体のつくりや,日用品にこめられた様々な工
夫などを読み取ってほしいと思います。」とカバーにある。ま
ずは,パラパラと写真を眺めているだけで,不思議なミクロの
世界に魅了される。

 とにかく,のぞいてみよう。まずは,昆虫たちの〈知られざ
る映像〉である。「足」といっても,「感覚毛」がびっしり,
口といっても,鋭い刃物,鋭い針の武器だ。チョウの鱗粉も一
枚板ではない。気門にはびっしりとフィルターの毛,鋭いノコ
ギリ状のセミの産卵管,編み目模様の美しいモンシロチョウの
卵,などなど,取り上げればきりがない。昆虫以外の動物,植
物の微細な写真も取り上げられている。「日用品のミクロの世
界」もある。発泡スチロールはまさに空気を取り込んだシャボ
ン玉。ビデオテープやフロッピーの磁化模様もくっきり。食塩
や,ダイヤモンドの結晶も見事。「自然の中のらせん構造」も
不思議。個々の写真についての解説も分かりやすい。
小学校高学年以上なら読める。

                       2007,9  1,400

『迷信と科学』(科学新入門・下)  板倉聖宣著  仮説社

 著者は,〈仮説実験授業〉という,子どもたちに楽しまれて
いる科学教育の理論と方法を構築した人である。今も,たくさ
んの教師が〈仮説実験授業〉を実施し,楽しい授業を全国に展
開している。本書は,子ども向けに書かれた本ではないが,中
学生以上なら読んでいける。いや,ぜひ中・高校生に手にとっ
てほしい一冊である。

 本書は,〈迷信と科学〉の問題を扱っている。第一話「迷信
はどのようにして広まるか」では,「ふつう、文明がすすみ、
科学の教育が普及すれば、迷信はだんだんとへるものと思われ
ています。ほんとうにそうでしょうか。」と,著者は問いかけ
る。どうだろうか。

ここでは丙午(ひのえうま)の話が紹介されている。作家,池
波正太郎の話もある。第二話は「迷信はどのようにしてつくら
れたか」である。昔から,いろいろな〈からくり〉ものや〈超
能力〉といった宣伝もあった。星占いなど人々に親しまれてい
るものもある。それらはどのような性格のものであるのか,ま
た,どのようにつきあっていけばいいのか,明快に書かれてい
る。第三話には「科学とはなにか」がある。〈科学と学問のち
がい〉〈学問の論理と迷信の論理〉〈古学の論理〉などがあり,
これらを読むと,ものごとの判断の基準がはっきりとしてくる。

今も,時々,〈こっくりさん〉などが流行する。お説強では
なく,〈迷信の論理〉を知っていれば,また,楽しくつきあう
こともできるのではないか。

           200711月刊 1,800 (西村寿雄)

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