―わたし好の新刊― 
                                20082

『じゃがいものふるさと』(たくさんのふしぎ275号)
                      山本紀夫文・写真 福音館書店  
     

  初めのページに,各国で食料として利用されているじゃがいもの〈姿〉がたく
さん写し出されている。どこの国の人も,じゃがいもを手に満足げだ。じゃがい
もは,ヨーロッパをはじめヒマラヤ高地やアフリカのエチオピア高原などの高冷
地でもたくさん栽培されている。じゃがいもは寒さに強い植物だからだ。

では,じゃがいもはそんな寒冷地でも栽培することができるのは「ふるさとの
特徴にあります」とこの本では書いている。では,じゃがいものふるさとはどこ
だろうか。

じつは,じゃがいものふる里は,標高4000mもあるアンデス・ティティカカ湖の
周辺だという。アンデスには,今も野生のじゃがいもの花がたくさん咲いている。
アンデスの高冷地がじゃがいものふる里である。でも,野生のじゃがいもはその
ままでは食べられない。有毒成分を含むからだ。じゃがいもが今のように食べら
れるようになったのは,アンデスの人々が長い歴史の中で次第に食料となるよう
にじゃがいもを改良してきたからとある。

後半では,長い長いじゃがいもの歴史をはぐくんできたアンデスのじゃがいも
生産の様子がふんだんに写し出されている。アンデス高地のすばらしい景色と共
に,じゃがいも栽培を中心とした人々の姿がたくましく描き出されている。
                                            2008,2  700

                                

『こども鉱物図鑑』  八川シズエ著  中央アート出版

著者は,鉱物学の専門家であると同時に,子どもたちへも鉱物の普及に意欲を
燃やしている人である。最近,東京都渋谷区に「こども鉱物館」まで作っている。
この本は,著者のそうした普及活動と連携して子どもを対象に書かれた鉱物図鑑
である。鉱物の魅力をより一層引き出すために,美しい写真と読みやすい解説が
並んだ図鑑である。

 最初に,〈鉱物の色とかたち〉という項があり,いろんな形をした鉱物の拡大
写真が並ぶ。これを見ているだけで,読者はすばらしい鉱物の世界に引き込まれ
ていくにちがいない。この本は,図鑑とはいえ,合間に〈鉱物の成り立ち〉とい
う項を設け,地球内部のことや地球の歴史,鉱物の特徴など,鉱物に関する総合
的な話も書いている。鉱物の元を作っている地球の構造や地殻の知識も大切な要
素だからだ。

 著者は,〈はじめに」で次のように呼びかけている。

「どうですか?鉱物って、意外とみなさんの身近にあるでしょう!そして、そん
な鉱物のことをもっと知りたくないですか?」「やがて、この本の最後のページ
を閉じるころには、きっとみなさんは、誰にも負けない〈小さな鉱物博士〉にな
っていることでしょう。」と結んでいる。この本なら,大人も子どもも「鉱物」
にいっそう興味を持つに違いない。巻末付録に,紙で作る結晶模型の作り方が紹
介されている。 

                      2007,11月刊   1,600 (西村寿雄)


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