―わたし好の新刊― 4月

                                     

『宇宙への秘密の鍵』 
     
ルーシー&スティーヴン・ホーキング著 さくまゆみこ訳 岩崎書店

 宇宙物理学専門の著者が「若い人たちに宇宙の神秘を伝えたい」「冒険
物語を書きたい」という思いで,娘のルーシーさんと共著でこの本を書き
あげた。

話は,主人公ジョージが怪しげな隣家に浸入することから始まる。なん
と隣家には不思議な住人と超パワフルなコンピューターが置かれていた。
隣家の主人エリックは徐々に科学のおもしろさをジョージに伝えていく。
「科学は地球を滅ぼす」と親から教え込まれていたジョージは,「科学」
の合理的な世界に興味をいだいていく。

やがて,パワフルコンピューターが「宇宙の窓」を開くのを見せてもら
う。目の前に,今まで見たことがない大宇宙の星たちが輝き出した。星の
大爆発が起きる。すばらしい星の誕生と死のシーンが目の当たりに見えた。
ジョージの宇宙への関心は高まるばかり。

このパワフルコンピューターは宇宙に飛び出す「窓」も備えていた。あ
る日,エリックの娘アニーにつれられてジョージも宇宙に飛び出した。目
の前に彗星が近づいてきた。アニーの忠告も聞かずジャンプしたジョージ
は,こともあろうに彗星にのっかってしまった。さあ,大変。彗星は宇宙
の彼方へ飛んでいく。おかげでジョージはいくつもの惑星に出会えた。ハ
ラハラドキドキする場面展開で広大な宇宙に読者を誘いこんでいく。

ジョージの学校友だちのいたずらっ子や謎めいた先生も出てくる現実の
世界とからませて,ドラマティックに話は展開されている。合間にはきれ
いな天体写真が挿入されている。
            2008,2  1,900  
                              

『タンポポのわたげ』 多田多恵子監修  偕成社

 プロの写真家の写真を多く使いながら,タンポポの一生をやさしく書
きつづった写真絵
本である。タンポポの咲く野原で,子どもを膝にのせ
てこの本をゆっくりと読んでいくと
いっそう雰囲気が伝わってくるにち
がいない。

 初めにタンポポの咲きほこる野原の写真が出る。
 「ほかの草にうもれてしまわないように、タンポポは、あたたかく
  なるにつれて、くきを長くのばします。」

と文がつづられている。なるほど、どのタンポポもぐっと頭を持ち上
げている。

 「タンポポの花は、どんなふうにひらくのでしょうか。かたくと
 じていたつぼみは、外
がわの花びらから、少しずつ、じゅんばん
 にひらきはじめます。」

と書かれている。そういえば,片側だけ花びらが開いたつぼみを見かけるが,
あれは開花の始まりなのだ。次に,一つの花を一面にまっ黄色にクローズア
ップした写真が登場する。 

 「もっとよく見ると、花びらの1まい1まいに、それぞれ、おしべとめし
  べがついてい
ます。ほんとうは、このたくさんの花びらが、みんな1
  こ
1この花なのです。」

と解説されている。ここで〈花〉の見方がうんと広がるにちがいない。あと、
綿毛の話や種子散布の話につながっていく。タンポポの一生を美しい写真で
追うことができる。

著者は「全国子ども相談室」で植物の不思議を解説する〈植物のせんせい〉
として活躍
中。文章は簡潔でさわやかである。
                       
2008,3   1,400 
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