―新刊 7月― 
                               
『花になったカマキリ』(地球のなかまたち)
                       海野和男写真・文 新日本新聞社
 「こんなカラフルなカマキリもいるのか」と,表紙の写真を見て驚かされる。
 ダーウィンではないが,ほんと世界には多様な生き物がいることに感心する。
 昆虫が自分の身をカモフラージュするために,いろんな〈変身術〉を持って
 いることは他の本でもよく紹介される。しかし,たいていのカモフラージュ
 は周りの樹木にとけこんだ地味な色肌が多い。
 それらに比べて,この本に登場しているカマキリたちは,ピンクの花にまぎ
れてしまう華麗な姿に変身している。その〈花になったカマキリ〉たちがつぎ
つぎと姿を見せる。
 4,5ページにはハナカマキリのメスが登場する。ピンクを主体にしたなんとも
なやましい姿,これが昆虫なのだろうかと目を疑う。中には,白一色のカマキ
リもいる。これが,エンジュの花のように,白っぽい花にとまっているとまっ
たくみわけがつかない。花にやってくるチョウなどはあっけなく捕食されてし
まう。
 著者はペナン島にあるバタフライファームを訪れる。ここでは,このハナカ
マキリを飼育している。この本ではここでのカマキリ誕生から成虫への写真が
多く綴られている。二齢幼虫にもなると「真っ赤なドレスを着て黒い靴下をは
いた貴婦人」」と著者も書くほど大きくなる。メスはゆっくりと成長するとい
う。4ヶ月後,最後の脱皮を終えたメスの成虫の姿は,この世の造形物とは思え
ない美しさだ。いつまで見ていても見飽きない。まさに〈地球の命ばんざい〉
である。                       2008年3月  1,400円                                              
                          
『あり』(ファーブル昆虫記)  
                    小林清之介著  ひさかたチャイルド
 昨年から出版されている「科学絵本ライブラリー ファーブル昆虫記」シリ
ーズの一つである。ファーブル昆虫記をもとに著者の感性で子どもたちに親し
みやすくリライトしている。著者は日本児童文芸家協会顧問をするなど,文学
界に精通した人である。それだけに文章の語り口がいい。科学性と文学性をか
ねそなえた科学読み物の一つの典型とも言える本である。
 内表紙に,このような誘い文が添えられている。
「みなさんの まわりの / じめんを 見てください。/ ありが、あちら
 こちらへ / いそがしそうに / 歩いていませんか。/ ありは みん
 な / はたらきものなのでしょうか?/ いいえ、そうではありません。
 / けんかずきで なまけものの / ありも いるのですよ。/ わたし
 たちの まわりに / どこでも いる あり。/ さあ、これから、/ 
 ファーブルおじさんが しらべた、/ そんな ありの / ふしぎな せ
 かいを / 見てみましょう。」
子どもたちにとっては,ちょっとは知識も持っているアリについて,「いいえ、
そうではありません。」と,否定の文を入れることによって関心を高めている。
「けんかずきのアリってどんなアリだろう」と,子どもたちも興味を持ちなが
らお話を読むに違いない。お話会や図書館等で読むといい本である。
                          2008,4刊 1,400円
             
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