―わたし好みの新刊― 
                                2008年8月
『麦わらのえほん』(つくってあそぼう) かねこ てるひこ編 農文協
 内表紙にこのような案内文がある。
「麦わらといって、思い出すのは、やっぱり麦わら帽子だ。でも、麦わらを
使ってつくられた麦わら細工は、江戸時代に東海道を行き来する旅人たちの
おみやげ品として、とても人気があったんだ。ヨーロッパでは、麦わらを使
ってクリスマスの飾りをつくったりもしていたよ。いまでは、めずらしくな
ってしまったけれど、そんな麦わらをつかって、いろいろなものづくりや細
工ものに挑戦してみよう!」
 この本をぺらぺらとめくるとちょっと遊びに使えそうな麦わら細工や素朴
な美しさを秘めた実用品が並ぶ。「こんなの自分で作ると楽しいだろうな」
と,好奇心が芽生える。
 麦わら細工には,まず〈麦わら〉そのものが必要である。巻末に「麦わら
の入手先」が紹介されているので,とりあえず〈麦わら〉を入手しよう。そ
して,麦わらの「張り細工」や「編み細工」の手順になれてみることが先決
だ。この本では,麦わら細工に使うちょっとした道具類や下準備の仕方につ
いてもくわしく書かれている。
 この本では,こうした作りものを楽しむことと同時に,麦わら細工を使っ
てきた昔の人々の記録も記されている。「麦わら」が古来いろんな生活の実
用品として使われてきた情景もわかり,玩具や工芸品などを作って生活を豊
かにしてきた昔の人々の知恵もしのばれる。
                             2008年5月  1,800円                                              
                          
『ぼくの博物館』(たくさんのふしぎ)  さいとゆうじ著 福音館書店
 夏の暑さがむんむんする昼下がり,コーヒーを片手にちょっと本を眺めて
みる,そんな感覚で手に取る本なのかもしれない。ページをめくるとねこの
〈ご主人〉が「ぼくの博物館」を案内してくれる。博物館といっても名ばか
り,〈ご主人〉が各地で集めた珍品,剥製,拾得物,まるでがらくた博物館
だ。
 だれしも,子どもの時からなにがしかの〈珍品〉を集めるくせがある。た
とえそのものに値打ちがなくても,本人にとってはどれも捨てがたい〈珍品〉
がある。それは,拾ったり集めたものに,その人の思いがいっぱいつまって
いるからだろう。
 著者が長年海外生活で集めた〈珍品〉をモデルに,次々と〈博物館〉の中
味が登場する。
インドネシアの魔除けの像,ロバの頭蓋骨,各地の木の実や鳥の巣,海岸で
拾ったガラスの浮き球や貝殻,こわれたおもちゃにガラスの花瓶,アンモナ
イトの化石に恐竜の骨とありとあらゆるものがある。最後に
「物、物、物。いろんな物があっただろ。/そしてそこには、
 /ながいながい時間と、ひろいひろいせかいが...」
としゃべりかけて終わっている。
 わたしたち人類は,長い長い時の流れの中で,広い広い地球の空間をさまよ
っているようなものと,眠い眼をこすりながら目が覚める。不思議な本である。
                                   2008,7刊 700円 
           
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