―わたし好みの新刊― 

 200810

いのちのカプセル まゆ』
            (ふしぎいっぱい写真絵本12  新開 孝 ポプラ社
里山に子どもたちと出かけると,たいてい一つや二つの色あせたウスタビガ
のまゆを子どもたちが持ってくる。「このなかには,どんな虫がいたのだろ
うか」と話がはずむ。この本は,そんな身近なまゆの姿を美しい写真と簡単
な文で紹介している。
著者は,昆虫の美しさと不思議さをシャープに表現し
ている昆虫写真家である。

はじめは,ヤママユガのまゆ作り。〈あたまを せわしく ふって いとを
つぎつぎと はいていく〉過程がシャープな写真で紹介される。ヤママユガは
日でまゆをつくるという。次は,ウスタビガ。ヤママユガとよくにているが,

上部が直線状なので見分けがつく。これも,きれいなうす緑色のまゆをつくる。
続いてイラガやチビアメバチが登場する。チビアメバチはまるでチョコボール
のような光沢のあるまゆをつくる。まゆの中にいる幼虫は,やがてさなぎに変
身する。まさに〈いのちのカプセル〉である。ときには生き物の定め,ウスタビ
ガのまゆをあけるとヒメバチのさなぎでいっぱいになっていることもある。イラガ
のまゆからハチが頭を出している写真はなんともいえない自然界のきびしさを
印象づける。ときには命を奪われることもあるが,夏になると,まゆから大型の
成虫が生まれる。最後はウスタビガの誕生から次世代に命をつないでいく美
しい写真で綴られている。         
20086月 1,200


              
                
  
『里山いきもの図鑑』    
                       
今森光彦  童心社

 帯に「子どもむけ里山ガイド」とある。長年,里山のすばらしさを発信し続けてい
る著者が,子どもたちに向けてまとめた〈里山生きものガイドブック〉である。子
どもたちだけでなく,里山に一歩を踏み入れたい大人にも手頃な図鑑となっている。
まず,季節ごとの区分がいい。春と早春が区別されている。刻々と変わる里山の早
春から春の生きものの姿を多くとらえている。さらに,各季節の中がエリア別に分
けられているのも初心者には便利がいい。同じ季節でも,雑木林と奥山,田んぼ
は棲息する生き物も違ってくる。
図鑑とはいえ,各タイトルなどには生き物に親しめる言葉が添えられている。「早
春のほんの十日間だけすがたを見かける、春の妖精たちです」「林の中をかけまわ
っていると汗ばむような陽気です。里山に本格的な春がやってきました」などなど。
さらに,「オトシブミの巣作り」「ダンゴムシのくらし」など,親しみやすい生き物につ
いては,生態がわかるような連続写真も配置されている。

ほっと気が休まるのは,所々に配置されている見開きの里山風景である。棚田や雑
木林など季節ごとの風景が写し出されている。さらに「昆虫採集」「しいたけ栽培」
ど,知りたい知識もそえられている。各所に出てくる子どもの写真もいい。なか
なか
手のこんだ編集である。ページをめくっていると思わず里山に出かけたくなる。

                                  2008,6  2,200 
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